Yasuka
JISS blog
Published in
7 min readNov 21, 2015

--

11月13日とそれから一週間

パリ襲撃事件から1週間が経ちました。

日本でどういう風に報道されているのか、日本の友人がどのように感じているのか分からないけれど、事件当日のこととそれからのことを少し綴ってみようと思います。

政治的意見だとか、Facebookのプロフィールの話だとか、パリばかり騒がれているとか、そういうものを抜きにして1人の日本人留学生の感じたこととして読んでいただければ幸いです。私の通っている大学はフランスの中でも指折りのエリート校で、住んでいる地域も高所得者が多いような治安の良い地域なので例外的な一面かもしれませんが…

事件現場付近の共和国広場(Place de la République)

11月13日(金)

授業はなかったのですが図書館で勉強。Facebookでこれから試合を観るという友人たちの投稿にいいなあと思いつつ。21時ころに帰宅。自宅のテレビでサッカーの試合を観ながら常備菜を作っておこうと料理していました。

21:50頃 テレビがニュースに切り替わっていて、ロスタイムが随分短いなと思い、さらに普段その時間にニュースを流す局ではなかったので気になって見てみると、スタジアム近くのSaint-Denisで爆発との報。さらに襲撃があったとか人質を取っているとか、フランス語を完全に聞き取れなくても大変な事態だということが分かりました。

SNSを確認。安否を確認する声、爆発音を聞いたという人、Facebookでスタジアムにいるけど無事だという友人。

事件が起きた10区、11区は普段から治安が良いわけではなく、とはいえ行くのを避けるほど悪いわけではないという地域。家賃が安いためその周辺に住んでいる友人も何人かいて、誰が事件に遭遇していてもおかしくないと恐ろしくなりました。

実際、私の友人の1人はコンサートホールから数十メートルのバーにいたらしく、道が封鎖され明かりが消された中でしばらく身動きが取れなくなっていたそうです。

情報が錯綜する中で報告される死者の数が次々と増えていき、とにかく怖かったです。正確に情報を手に入れるため、いつもリスニングのために観ているフランス語のチャンネルではなく英語のチャンネルに切り替え。

何よりも自分の住む街パリで、メトロで15分ほどの場所で襲撃事件が起きたこと。友人が危険と隣り合わせだったこと。テロリストの状況も分からなかったこと。私の行動範囲とは離れているけど、それでも不安を掻き立てるには十分でした。

その日の夜は大学の近くにいてメトロもタクシーも使えなかった友人を家に泊めて、怖い怖いと語り合いながら眠れない夜を過ごしました。

次の日

非常事態宣言が出され、大使館から外出を避けるようにというメールが来ていたため外に出るつもりはあまりなかったのですが、トイレットペーパーが切れたためやむなく外出。

ドアを開けたら日常が広がっていて拍子抜けしました。

さすがにのんびりしすぎじゃないか?とも思った笑

市の建物、美術館、学校は全て休みにも関わらず他のお店は通常営業。人通りもあって驚き。(実際これは私の住んでいる場所だけだったのかもしれません)

外出もままならないパリ市民という言い方は少し違って、普通の生活を送って、少なくとも送ろうとしているように思いました。

けれども家に泊まった友人を送りとどけるため少し歩いていたら半旗が目に入る。国会議事堂の前には軍の制服を来た人がたくさん銃を持っていて非日常を感じます。

普段は滅多に見ることのない軍の制服と車

月曜日

学校が再開。授業も通常通りです。

通学路に政府系の建物が多いのですがどれも半旗だったり黒いリボンで結ばれていたりして。

12時に1分間黙祷をささげることになっていたのでメインビルディングで黙祷。そのあと聞こえてきたLa Marseillaiseはとても美しかったです。

https://vimeo.com/145851196 (その時の動画)

お昼過ぎ、突然サイレンが鳴り、早く大通りに逃げろというアナウンス。慌てて走って逃げて、学校に通じる道が封鎖され、1時間ほど待たされました。結局置きっぱなしの荷物が不審物扱いされただけだったのですが、自分が非常事態のパリにいるということを思い知らされました。

それから

ニュースに流れるのは事件現場の様子ばかりだと思いますが、この一週間のパリのは普段通りです。普段通りだけどピリピリ、というのが正しいかもしれません。

サイレンの音が聞こえる頻度は圧倒的に増えました。

街中で小銃を抱えた兵士を見ることも増えました。

1日に何度もセキュリティーチェックを受けなければならず疲れます。

いつ何が起きてもいいようにスニーカーを履いています。

フランスで楽しみにしていたイベントがキャンセルされていきます。

テレビをつければ襲撃事件に関するニュースばかり。図書館も早くしまってしまい学校に残れないので、家で1人ニュースを見ているとすごく精神的に参ってしまいます。

今週は大学の授業でも事件に関するディスカッションに多くの時間が割かれました。もちろん冷静にフランスの外交方針を分析するディスカッションもしましたが、同じ大学でも怪我を負った人が5人、近隣の大学では死者が出たと言う話、友達の友達の友達が亡くなったという話を聞いて改めて事件が身近で起こったことを思い知らされました。

一番悲しかったのは、友人が何人か志半ばにして帰国を決意したこと。香港人の友達が両親に帰ってこいといわれてこの週末に試験も受けず帰国することになりました。アメリカとカナダの一部の学校ではパリへの留学生に帰国要請を出したそうです。

友人と話していても、集中できないとか、悪夢を見るとかいう話になり、皆この張りつめた空気に疲れているんだなと感じます。

“It is sometimes difficult to be as usual”

月曜日に先生がそう言ったときあまり実感が湧かなかったけれども、今それを痛切に感じています。

たくさんの人が献花に、蝋燭に火を灯しに訪れていました。
事件現場の近くの駅はまだ閉鎖されたままでした(火曜日)

もちろん、いつもこんなに疲れてしまっているわけではなく、和気あいあいと友達と喋ったりするのは変わりません。そういえば国境封鎖(実際はコントロール)と言われていましたがベルギーからバスで帰ってきた子がちらっとパスポート見られただけで厳しくなかったと言っていました。

とはいえ、非常事態宣言が3ヶ月間と言われていることもあり、まだまだ先行きが読めないのも事実。事件現場の近くで爆竹を鳴らした人がいてパニックになったとか、私服警察が懐に銃を持っているのを見てテロリストと勘違いした人が騒いだという話も聞き、まだまだピリピリした空気も強いなあという感じです。

普段通りに振る舞わなければいけないのではなく、早く普段通りになってほしいと思うばかりです。

--

--