Spring has come?

Koshi
JISS blog
Published in
11 min readMar 3, 2016

イリノイからこんにちは。「1月は行く、2月は逃げる…」とは言ったものであっという間に3月になってしまいました。最近の気温はというと冬の峠は超えたようで、一週間に一回くらい強烈な雪の日がありますがその雪も数日経てば解けてなくなり、摂氏1桁台の日もしばしば。華氏から摂氏に換算するのも慣れてしまいました(ちなみに摂氏温度=(華氏温度-32)÷1.8です笑)。

どうやら肌感覚も狂ってきたようで、気温が摂氏1桁になった日には
「ヒートテック?いや暑い暑い」→肌着はTシャツに
「厚手のコート?いらんいらん」→薄めのジャケットに
「手袋?ポケットに手突っ込んどけば大丈夫やろ」→手袋なし
「マフラー?まぁ一応していくか」→とりあえずマフラーだけ巻く
といった服装になってしまいます。部屋の中が暖房効いていて暑いのでこの思考を助長させるんですよね。ちなみに今日は最低気温が−10℃位でした。風邪ひきませんように…。

こんな感じで気分だけ春に片足突っ込んでいるのですが、実際に気温がそれに追いついてくるのはもう少し先のようです。

さて今回は何を書こうかなと考えていたのですが、いま留学先で勉強していることから派生してアメリカに半年間住んでみて思うことをつらつらと書いていこうと思います。政治関係の話が多くなりますのであしからず。

去る3月1日はSuper Tuesdayでした。
2016年は2期8年続いたObama政権の最終盤、そして大統領選挙が行われる年です。民主党と共和党の二大政党制を敷くアメリカで目下行われているのは各党の大統領候補を決める予備選挙及び党員集会。2月1日のアイオワ州党員集会から始まりまずは各党の中で大統領候補に選ばれる戦いが行われている訳です。
これは州単位の争いになるのですが、選挙戦の中で同日に多くの州で選挙が行われるのが3月最初の火曜日となっており、これがSuper Tuesdayと呼ばれ選挙戦の行方に大きな影響を与えると言われています。今回は11州同日に行われました。

Obamaが所属する民主党はHillary Clinton(元国務長官・Bill Clinton時代のファーストレディ)v. Bernie Sandersの一騎打ちで勝敗も見えてきているのですが、いま国内(国外も?)で注目の的となっているのは共和党の方。
Donald Trump v. Ted Cruz v. Marco Rubioという構図(既に撤退したBush弟など他にも候補者はいるのですが)において、このTrumpの勢いが止まらないのです。

シカゴのど真ん中にそびえ立つTrump Tower(8月撮影)。このときはまだ”あの”Trumpを意味するとは知らなかった…。

Trumpは不動産王としての豊富な資金力をバックに選挙戦を展開しているのですが問題はその発言にあります。メキシコ移民・イスラム教徒を排斥する暴言は政界だけでなくメディア・アーティストなど多方面から批判されています。時代錯誤も甚だしいのではないかと思われるかもしれませんが、そのTrumpが共和党の候補者選びにおいて圧倒的優位に立っているのです。何故か。

Trumpはスピーチや討論において「アメリカの再生」というキーワードを強く打ち出すのですが、これは「白人優位のアメリカの再生」だと僕は捉えています。経済危機から復活したとは言えず、オバマケアは失敗し、増え続ける移民に仕事を奪われ、ISISという新たな”外敵”に勝てない。そんな鬱々としたアメリカの現状を歯に衣着せぬ物言いでぶった切る、それがTrumpなのです。

CruzとRubioが対Trumpの票を一本化できていないがためにTrump優位の状況が変わらないという面もありますが、「白人アメリカ人が表立って言えないようなことをズバッと言ってくれる、それによるスッキリした気持ち」がTrump支持の根底を支えているのではと思うのです。完全に第三者である僕の目から見ても、発言は本当に無茶苦茶なのに討論でも常にマイペースを貫く姿勢は、共感を集めて熱狂的な支持へと拡大していくのがなんとなく理解できてしまいます。Super Tuesdayの結果としては獲得代議員数の多いTexasはその出身州でもあるCruzが死守しましたが、11州中7州でTrumpの勝利に終わりました。

話は少しそれますが、2月最終週にCNNが実施したSuper Tuesday前最後の共和党候補者公開討論を観ていたのですが、これがかなり面白かった。

まず候補者のPublic Speaking能力が高い。的確に効果的な表現で自論を展開していきます。ジョークも飛ばすし司会者の制止も聞かずに丁々発止の議論になることも普通。日本で選挙前に党首討論番組をやってもあまり盛り上がらないのとは大違いです。エンタメ要素さえ感じます。
そしてApple対FBIから巻き起こった個人情報保護についての議論や最高裁判事死去に伴う次の判事候補についてなど、直近の話題についてもよどむところなく述べられる。憲法をスラスラと紐解けるところを見るとアメリカの政治家にロースクール出身者が多いのもうなずけます。

この国には根深い問題が溜まっています。facebookでThe New York TimesとEconomistをLikeするだけでうんざりするほどの国内問題がタイムラインを埋め尽くします(興味ある人はやってみてください)。
オスカー授賞式では開幕のスピーチから白人が賞を席巻していると人種問題に切り込み、最高裁にはTexas州の人工中絶のケースが持ち込まれ(現状判事が8人となり4対4なのではと囁かれていますが)DCの最高裁前には人だかりができています。

ただこの国では誰もがその権利を主張します。African-Americanの権利、女性の権利、移民の権利…。やはりそれは歴史に基づく”国民性”なのだと憲法の授業を受けていて実感します。13州の連合規約から始まり合衆国憲法制定、三権分立。修正項で奴隷性を廃止し平等権を認め、選挙権を獲得する…。United Statesという名前の通り如何に各州と連邦政府が権利を分け合うか、個人の権利をどこまで認めるかがこの国の歴史であり、今日の二大政党の違いにもつながっています。この土壌が失われないかぎりアメリカはアメリカ足るのだろうと考えています。

2月あたまにNYに遊びに行った際、幸運にも当日券をくじで当てて”The Book of Mormone”というブロードウェイミュージカルを観ました。青年宣教師がウガンダでモルモン教を布教するというコメディなのですがとにかく宗教ネタや下ネタがすごい。観客は年齢性別宗教人種国籍関係なく大爆笑。アメリカはこうであってほしいと思わずにはいられませんでした。

憲法を勉強するとその前より国のかたちが見えてくる気がして面白いです。かといって日本の憲法はちゃんと勉強したのかと問われると言葉に詰まってしまうのでそれは帰国後の宿題ということにします…。

選挙の話から憲法の話に移ってきたのでこのまま授業の方に話を移していきたいと思います(強引)!

前回の記事で「法律の授業たのしいいい!!」みたいなことを書いた記憶があるのですが、否定します。辛いです。厳密に言うと上で書いたようなことが見えてくる所に楽しさを見いだせるのですがその他の9割方はただただ辛いです。なぜなら、英語ができなかったから。

海外長期滞在が初めてとはいえ半年ほど住み、特にlisteningの点では支障をきたすことも少なくなってきました。秋学期の成績も良かったし自信を持って今学期に臨んだのですがその自信は法律を英語で学ぶということの前に見事に打ち砕かれていきました…。

  1. Reading: 専門用語のオンパレード・文献の多さ
    そもそも理解しないと何も始まりません。ここで立ちはだかるのが専門用語。辞書を引いては忘れの繰り返し。今ではPCのデスクトップに辞書機能を常駐させています笑
    そしてReadingの多さ。週2の授業が3つ、それぞれ毎回平均50ページくらいの宿題を課されるので丁寧に理解しようとするとそもそも全部読み終わりません。アメリカ人学生が持っているであろう前提知識も自分にはありません。ここでの中途半端な理解が試験になって仇となります。
  2. Listening&Speaking: Discussionについていけない
    自信がついたlisteningもハイスピードかつ専門用語を散りばめたdiscussionの前では為す術なし。Readingで手一杯で要約しようとしても上手くまとめられないし表現もたどたどしくなるという悪循環に陥りました。
  3. Writing: Input量/質が不十分だとOutputも然り
    国際法の判例を選んで決められた型に要約する”Case Briefing”という課題が課されたのですが、先学期の統計学の授業が同じで仲良くなり偶々今学期も同じ授業を履修している救世主のような友達に助けられながら悶絶しつつやり遂げました。4月にもう1回同様の課題があるのが恐怖です。ちなみにこのBriefingという手法自体はアメリカのロースクールで全国的に確立されているもので、その判例が持つ意味について背景からじっくり学ぶ過程を経て理解が確固たるものになるのは実感できます。日本で箇条書き的に学んで忘れ去ったのとはひと味違いました。

このように劣等生感を満喫しながら(?)、先学期同様TAと仲良くなる作戦を着々と進めています。先週midtermの集中砲火が終わり(2週間後にも2つあるのですが)今学期も折り返しに差し掛かっていると思えばもうひと踏ん張りできそうです。とりあえず東大法学部で勉強している留学生の人には頭が上がりません笑

最後にもう一つ。Champaign-Urbana地域で活動しているImmigration関係のNPOでインターンを始めました。今学期前半若干精神的に参っていた自分を救ってくれた一つでもあります。ラテン系・アジア系など移民第二世代・第三世代の人たちに対してコミュニティ形成支援であったり法律相談を行っているNPOです。

正式にインターンが決まって3日後、代表であるメキシコ系移民のおじさんがホストを務めるローカルラジオ番組にゲスト出演することになりました。ローカルとはいえ丸1時間自分の英語を公共の電波で流すなどと緊張していましたが始まってみれば楽しいものであっという間に1時間経ってしまいました。

その中で新しく別の土地から移ってきた人は常に「こうあるべきだ」という無言のコンテクストの中に位置づけられるという話になった場面がありました。”What is supposed to be”、日本語で言えば「郷に入っては郷に従え」が一番しっくり来る表現だと思うのですが、ここで自分の中で胸にストンとくるものがありました。自分は無意識のうちにアメリカ人学生になろうとしているのではないかと。
そりゃネイティブのように不自由なく言語が使えたら楽に決まってます。自分が日本語でできることをすべて別の言語に置き換えてもできるとしたら百人力の気分でしょう。この文量を英語で書けと言われたら日本語の何倍かかるか分かりません。ニュアンスも表現しきれないでしょう。自分はアメリカ人ではない、20年以上日本で育ってきた自分には確立された芯のようなものがありそれを反射板のようにしてものごとを見ている。その当たり前の事実を忘れなければ、普段の勉強の際にもっと様々な知見を得られるし更に充実した日々を送れるのではないかと考えさせられました。できないという事実に対する防衛機制にも聞こえますがニュアンスを汲みとっていただければ幸いです。

まぁそもそもこんなに根を詰めるのも考えが回りまわって当たり前の所に戻ってくるのもひとえに自分の性格のせいなのですが笑、そんなこんなで良い意味でも悪い意味でもアメリカにどっぷり浸かっている最近の日々の紹介でした!

p.s.
読み返してみたら自分でもびっくりするほど真面目かつ結構重い記事だったので付け足しを笑
今週金曜日はUIUC名物Unofficial!英語版Wikipediaにも載っています笑 これはSt. Patrick’s Dayにちなんで朝から丸一日お酒を飲み続けるイベントで、その日はキャンパスが緑に染まるそうです。もちろん授業にも試験にもそのまま行くと。大学当局から「この週末は家族を含む外部からのいかなる大学関係者以外の人も寮に泊めてはいけない」と一斉送信メールがくるほど。さてさてどんな感じになるのか。全米No.1 Party Schoolが本領発揮しそうです。

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