ごはんと生活

料理が趣味だと思う。ただ、人には滅多に話さない。「変な横文字の調味料とか取り揃えてそう」「何時間もかけて1品作ったあげく洗い物はしなそう」と思われたくないからだ。むしろぼくは「男の料理」みたいなのは本格的すぎて嫌いである。できるだけ毎日やること、できるだけ短い時間で、できるだけ品数を多くすること、余っている材料を使いきること。そういう組み立てとかライブ感みたいなものが好きだ。

料理には偶然性を求めたい。今日はビーフシチューを作ろう!みたいなお祭りもたまにはいい。でもそれは長くは続かない。ただでさえ「目標を立てましょう」と煩く言われる現代社会で、料理までそんなことをしていたら疲れてしまう。後日余ったじゃがいもから芽が出まくって、台所に近づかなくなること必至である。むしろ、「いま根菜が余ってるし、さっきスーパーに行ったらたまたま牛肉が安かったからビーフシチュー」というのがいい。それは10円20円をケチっているからではない。偶然性を活かすことこそ、日常のスパイスと考えるからである。

意識の高い人は一握りだが、どんな人間にも生活はある。 それを体感できるのがクックパッドだ。クックパッドはすごい。まずSNSとして、アクセス数がケタ違いに多い。素人レシピばかりのアカウントでも、あっという間に数千数万を超える。見ず知らずの男のアカウントに、実際に作ったよと写真を添えて報告してくれる主婦もいる。アップル製品の使いやすさや効果的なチームマネジメントの方法や次に読むべき啓発書は簡単に忘れてしまうけれど、今晩何を食べるかという問題は誰にも毎日やってくるのだ。映画「この世界の片隅に」が示したように、世界のゆくえがどうであれ、私たちは生きている限り生活している。そして誰だって何か食べなくてはいけない。