田舎町のガールズバー

ときどき行く出張先の田舎町で、本社から来た人たちと地元のうまいものを食べた後、今回もお偉いさんにガールズバーに連れて行かれた。駅前ですら誰も歩いていないような街なのに、寒さに震えながらしばらく真っ暗な道を歩いていくと、突如スナック街が現れる。そこら中にスナックやガールズバーの、昭和感あふれる看板の光がぼんやりと浮かび上がって、お化けでも出そうな雰囲気だ。

通行人は相変わらずいないのに、客引きだけが暇そうに突っ立っていて、こちらに気づくや否や必死で声をかけてくる。その中の一人に自ら客引きしている若い女の子がいて、お偉いさんは気に入ったようで彼女と値段の交渉を始める。女の子の飲み物代とか酒の種類とか色々交渉しているが、すでにお偉いさんはその店に行く気満々であることは過去の経験でわかる。どうせ行くならさっさと入ってしまえばいいのに、交渉自体が楽しいのだろう。結局向こうが最初に出してきた条件からほとんど変わらないくせに、さも交渉成立と勝ち誇ったように店に入るお偉いさんと若手たち。おっさんというのは、いつでもどこでも自分が上に立たないと気が済まない生き物のようだ。

ぼくがこの手の場所が苦手なのは、彼女たちに喋りたいことがないから、そしてそこで饒舌になるおっさんたちの自慢や人生論が自信に満ち溢れていて息苦しいからだ。まず、彼女たちは基本的に話を聴く側である。もちろんおっさんの話に心から感動しているわけではないが、手慣れた感じで上手に相槌を入れる。しかし一方、ぼくのように話したいことがないと、向こうも黙ってしまい、気まずい雰囲気になる。話もしないのになんできたの?と言われているような気になってくる。

おっさんはおっさんで、聞き流されているのも平気で、持論を説き続ける。それだけならまだしも、ヒートアップしてくると自慢や人生論にとどまらず、彼女たちへの説教が始まる。いつまでもこんなことしてちゃだめだとか、これで稼いだ金でどんな未来を描くんだとか、そんなことを言い始める。しかしそんな説教が響くはずがない。響かないのでおっさんの説教はますます熱っぽくなるが、やはりもちろん響かない。ただぼくのメンタルだけがゴリゴリゴリゴリ削られていく。

就職して数年、あれだけイヤだった仕事やサラリーマン生活もだんだん上手にやり過ごすようになったけれど、時々こうやって初心に帰ってくることがある。やはりぼくは「働きたくない」側の人間なんだなあと。