デジタル化時代に競争力を保つ方法
注:この記事はcoinpost.jpに掲載されたものです。
概要:競争力を高めるためには、データやプロセスをデジタル化するだけでは不十分だ。企業はデジタルソリューションを活用し、考え得る脅威と機会を注視し、デジタル化がユーザーに利益をもたらすことを確認し、真のデジタルオペレーターへと進化しなければならない。
デジタル化には、コンピュータ、デジタル化されたデータやプロセス、インターネット、ソーシャルメディア、ウェブ対応デバイス、その他すべての”アナログではないもの”の使用が含まれる。しかし、真のデジタルトランスフォーメーションとは、これらすべてを超越したものである。競争力を高めるためには、単にデジタルツールやソリューションを使うだけでは不十分なのだ。
マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によると、複雑で大規模なデジタル変革プログラムの70%が目標達成に失敗している。この失敗は一般的に、経営陣のサポートが不十分であること、従業員のエンゲージメントがないこと、アカウンタビリティがないこと、部門横断的なコラボレーションが不十分であることなどが原因とされている。また、一部の組織は文化的に変化にそこまで柔軟ではないため、デジタルトランスフォーメーションを持続させることができない。「変革の効果を持続させるためには、通常、マインドセットと行動を大きくリセットする必要がある」と同調査は指摘する。
このような落とし穴への対処とは別に、デジタル化が、その目的の一つである競争力の確立を達成しているかどうかを確認する必要がある。そのためには、以下のようなことを行っていく必要がある。
脅威と機会を注視する
マッキンゼー・クォータリー誌の調査報告書の中で、マーティン・ハートとポール・ウィルモットは、デジタルトランスフォーメーションの利点をいくつか挙げている。その中には、参入障壁の緩和、セクターの融合、デジタルシステムやプロパティが持つ「プラグアンドプレイ」の性質によるバリューチェーンの解体などが含まれている。「デジタル化をどううまく活用できるによって、どの企業が価値を創造するか、あるいは失うかがますます決定されるようになるだろう。このような変化は複雑ではあるが、よく知られたパターンの”産業の進化”という文脈の中で起こる」とハートとウィルモットは述べている。
デジタル化にはそれのみでも利点を有するが、それだけでは競争力は保証されない。企業は、脅威と機会に目を光らせながら、デジタル化を最大限に活用する必要がある。ビッグデータ、リアルタイムな情報、機械学習、自動化、その他の技術を有効に活用して、起こりうる問題を監視し、より収益性の高い事業に取り組むためのチャンスを見出す必要がある。
さらに、Jubilee Aceによる裁定取引に関する調査では、デジタルエコシステムがいかに大きなメリットと機会を生み出すかが示されているものの、投資家は、戦略的かつ断固とした行動をとる必要もある。「一部のトレーダーにとっては、このような機会を見極めることが困難な場合もあるが、自動化されたシステムを利用して、裁定取引の機会を簡単に見極めることもできる。トレーダーはまた、他の取引戦略と同様に、裁定取引に伴うリスクに備えて必要な予防措置を取らなければならない」。
テクノロジーではなく、人に焦点を当てる
「一般的に信じられていることとは逆に、デジタルトランスフォーメーションはテクノロジーというよりも人間の問題である」とベッキー・フランキーウィックとトマス・カモーロ-プレムジク氏はハーバード・ビジネス・レビューのケーススタディで指摘している。テクノロジーは重要な要素だが、デジタルトランスフォーメーションのすべてではない。デジタル化のパズルを解く上で最も重要なのは常に人であり、組織のメンバーがデジタルツール、プロセス、メディアをどのように受け入れ、採用するかにかかっている。
デジタル技術は、学習曲線が低かったり、システムに影響を与えるエラーの頻度が高かったりするために、使用者がそれを十分に活用できなければ意味がない。デジタルシステムがどれだけ高度で安全で将来性のあるものであっても、その成功を左右するのは人である。一部の従業員は、プロセスがより複雑で味気ないものになってしまう場合、使用するように求められている新しいデジタルシステムについて不満を感じてしまうかもしれない。また、技術的な問題、バグ、および理解が困難な手順等が、彼らにデジタルシステムを使わない理由を提供することにもなるだろう。
一方で、顧客の事情を考慮に入れることも重要である。デジタルソリューションへの需要の高まりに合わせて製品やサービスをデジタル化することは、思ったほど簡単なことではない。P&G、Ford、GEなどは、主に需要を過大評価し、競合他社が何を提供しているのかを吟味せず、拙速に膨大な量のデジタル化された商品・サービスを投入してしまったがために、デジタルトランスフォーメーションに失敗してしまったという話は有名だ。
デジタルソリューションの需要があることは間違いないが、競合他社がより優れた実用的なものを提供していたとしても、それが自社の商品・サービスのヒットを保証するものではない。最終的にテクノロジーを使うのは人である。デジタルプラットフォーム、システム、コンセプト、戦略を選択する前に、人々がそれらを使うことに慣れているだけでなく、それら新しいデジタルオプションへの切り替えを熱望しているかどうかを確認する必要があるのだ。
進化してダイナミックになる
さらに、デジタル化は組織の文化、考え方、態度の変化に対応したものでなければならない。「変革を成功させるためには、トップが適切なトーンでそれを推進していくことが必要だ。また、組織の他のレベルの人々のサポートと同意も必要だ」と、デロイト リスク&ファイナンシャルアドバイザリーのパートナーであるキャリー・オーヴンは指摘している。
デジタル変革は、人と組織自体が進化しなければ、非生産的で競争力のないものにおわる可能性が高い。つまり従業員は、より効率的なシステムが利用できるようになったならば、アナログで時代遅れの方法に戻るのをやめる必要があるということだ。同じように、企業のブランディングもデジタル化を念頭に置いたものになっていなければならない。企業が専門的なウェブサイト、eコマースショップ、AIカスタマーサービスボットに投資した後、オンラインとソーシャルメディアでのマーケティングや販売を控えたとしたら、何の意味もないのだ。
デジタル化は、脅威と機会への対応をより俊敏なものにする可能性がある。アナログなバックアッププラン、物理的な出席を必要とする会議やブレーンストーミング、古臭い署名や承認の手続きを使用することに固執しているような企業は、デジタル化の利点を真に享受することはできない。
デジタル化は、新しいトレンドと破壊的な新しいプレーヤーを生み出しもする。これらのトレンドや新規市場参入を予測できなかった企業は、他社の後塵を拝することになるだろう。デジタル化によって得られる多くのタイムリーな情報を最大限に活用し、それがもたらすスケーラビリティと俊敏性を活用することが重要なのだ。
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