ゆで玉子を上手に茹でるのは難しい。

難しくないですか? ワタシにとってはけっこう困難なミッションである。インポッシブルとまではいわないが。とにかく「つるっ」とむけない。少し古めの卵を使うと上手にできると聞くが、最適な「古め」具合がよくわからない。時間が経つとカラの表面に浮き上がってきてくれればよいのに。インポッシブルなミッションの指令が10秒後に消滅してしまうみたいに。

少し前にテレビで観たのは、あらかじめカラの底を少しだけ割ってから茹でるという方法。カラの底には空気が溜まっている部分がある。そこに少しだけ穴を開けてから茹でると、カラと中身のあいだにうまい具合にお湯だか空気だか(どちらだか忘れた)が入り込んで、スキマを作ってくれるらしい。その状態でむくと「つるっ」といけるらしい。

ところがこれも意外に難しい。開け具合を間違うと、茹でている最中に中身が飛び出してくる。というか、けっこう飛び出してくる。尻尾が生えたみたいになる。かといって、遠慮がちに開けてしまうと「つるっ」といかない。力加減がなかなかに難しい。

ついでにいえば、カラのむき方にもこだわり(というのも大袈裟だけれど)がある。ワタシの場合、カラをむくときは、まず玉子の側面を「コンコン」と小突いて少しひびをいれる。そのあと、手のひら全体で玉子を包み込むように持ち、キッチン台の上でおもむろに「ごろごろ」っと転がす。けっこう勢いよく、転がす。そうすると側面はもちろん、ぜんたいにわたっていい塩梅にひびが入る。

ワタシがこのむき方を初めて見たのは映画館であった。ミッキー・ローク主演の『エンゼルハート』という映画の中で、共演者のロバート・デ・ニーロが、このようなむき方を披露していたのである。とても不吉なシーンで、とても不吉な(ように見える)むき方なのだけれども、それがとてもかっこよかった。以来、ワタシはこのような玉子のむき方を「デ・ニーロ・アプローチ」と呼んでいる。嘘である。でも、わりときれいにむくことができるので(あくまで個人の感想です)、よろしければお試しください。