2018-2022のリサーチ、アートプロジェクトプラン

2019–2022の研究計画書を書く機会があったので、何をやろうとしているのかを伝えるために、プランをシェアします。おおよそ以下に書いてあることが、メインの個人プロジェクトとしてやろうとしていることになります。

目的

規範として認識されるようになるものと、そうでないものとの間にある違いは何なのか」という問いを、アート活動や作品として提示し、規範を巡る対話の発生に貢献したいと思っています。ポリアモリーを研究の出発点とし、特定の規範によって結びついている集団と、対象集団とは別の集団(外集団)における価値観や振る舞いのリサーチを行います。同時に、対象内集団と外集団における思想および態度が、対抗や強化などを含め、どう影響し合うのかを探っていきます。

計画

私はもともと、感覚的なサウンドアートや音楽制作を活動の中心としていましたが、博士課程での研究を通して、より強い必然性や思考を要するリサーチ・ベースの作品制作に関心を持つようになりました。

2018年6月から2019年5月末にかけては、ポーラ美術振興財団の助成のもと、ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジのEAVI(視聴覚における身体的インタラクションについて取り組む研究機関、受け入れおよび指導はAtau Tanaka教授)と、ロンドン芸術大学のCRiSAP(サウンドアートの研究機関、受け入れおよび指導はDavid Toop教授)に所属しながら、本研修計画の実現のための方法論のリサーチを進めています。EAVIでは人類学的アート制作におけるVR、ARなどを含む視聴覚テクノロジーの使用、CRiSAPでは人類学的アート制作とサウンドアートの接続がリサーチ領域です。関係する諸分野における現在の実践と歴史的な文脈の理解を試みます。この期間のアウトプットとしては、リサーチ・レポートあるいは論文と、ブログ記事郡を想定しています。その他の選択肢としては、プレゼンテーションやプロトタイプ制作などが考えられます。

ここ最近は、5つの分野の学習を進めています。

  1. 人類学の基礎
  2. 人類学的アート実践
  3. 美学
  4. ポリアモリー、ソロ・ポリアモリー、リレーションシップ・アナーキー、単数愛規範(mononormativity)
  5. 人類史と未来史(フィクション及びノンフィクション)

リサーチと並行して、いくつかのリサーチ・ベースの作品を制作しています。2018年の7月にはロンドンのLeadenhall Marketのために作られたサイトスペシフィック音響作品、『£4.80 salmon-roll (bap), £2.50 cup of coffee, £5.50 cheese-cake』を作りました。制作におけるリサーチは、地域の古地図から、対象に関連する歴史文献、マーケットの過去を複数の異なる時代から描き出す文学作品と広告物、イングランドにおける肉と魚にまつわる食文化史に渡りました。作品はMusicityによって、マーケットに恒久的に設置されています。同年6月には歴史を学ぶという行為についてのパフォーマンス、
Act: Study
Subject: History
Topic: _

を制作、上演しました。歴史を学ぶという行為とその行為を録音したものを即興演奏することによって、歴史、デジタルマテリアル、記録および録音という行為における固定性と流動性を探求します。読む音、書く音、なぐり書く音、飲む音、食べる音、あるいはひょっとするとぶつぶつ言う音などが、パフォーマーの肉体的な介入によって流動化されます。このパフォーマンスにおいては、イギリスとポルト間の貿易史を、ワインとタラを通して学びました。

現在川久保ジョイさんの新作のための映画音楽制作を進めており、ここでもリサーチ・ベースの考え方を良い形で応用できないかなと考えています。

2019年9月からは、現代美術の実践と人類学の両領域に専門家として精通しており、それら分野の接続に国際的な貢献をしているクリス・ライト氏を主たる指導者に、彼の所属するロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ視覚人類学センターと協働しながらプロジェクトを行います。研修中には、英国の各研究者、研究グループを訪問し、知識と見解の交流を図ります。

一年目の前半では、ケーススタディの出発点として扱うロンドンのポリアモリー実践者とそのコミュニティに加え、タブー文化を含む各種文献を参照し、特定の規範によって結びついている集団のケーススタディとして適しているもののリサーチと選定を行います。本研修における「規範」は、社会一般に共通する概念のようなものを指してはおらず、ある特定の集団および集団間における規範やその摩擦を、「目的」冒頭の問いを考察していくためのケーススタディとして扱います。

後半では、それら集団の背景と歴史のリサーチ、関連理論(ポリアモリーであればジェンダー研究、クィア理論など)のリサーチ、各集団に対する外集団として作用する集団(各集団に近しい集団のみならず、例えばあるパブに飲みに来る地元民友人グループ、ある教会に集まるコミュニティ、ある労働者クラブなども含む)の選定、リサーチ対象集団および外集団への接触と交渉を行います。各集団の背景、歴史、関連理論のリサーチにおいては、各研究者、研究グループを訪問し、専門的な知識を学び、議論を交わします。

二年目は、リサーチ対象集団及び外集団の取材と録音、撮影、参与観察を長期的に行います。プロジェクトの目的を達成するための助けとなる限りにおいて、この期間にリサーチ対象集団を柔軟に追加、変更することも可能とします。場合によっては、食に関するものも含めるかもしれません。

三年目では、リサーチ内容を提示する効果的な手段を選定し、作品としてまとめます。映像、写真、音、テキスト、パフォーマンス、ワークショップ、書籍、VR、インスタレーションなどを選択肢として含めます。私自身の技術的な能力において手法を決定することはせず、作品に適した形を優先し、必要に応じて各専門家、研究者と協働して制作します。リサーチのアウトプットを学術的な論文ではなくアート作品とすることで、問いに対する回答ではなく、鑑賞者自身でそれぞれの問いを能動的に探るためのきっかけを提供し、規範を巡る議論の場を生み出すことを試みます。

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Masa Kakinoki, PhD
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Solving business issues. New business dev. Marketing & community strategies. Formerly startup founder, research-based artist. PhD/MA in Music (UK), BA in Law