土地予想マシン

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メディアアート実践の授業において、我々(那須亮介・吉田翔太郎)は土地の価格を予想する作品を作り上げた。

あなたは誰も人が写っていない土地の写真を用意する。そして、我々が作ったシステムに画像を放り込むだけでその土地が潜在的に「都市」であるか「郊外」であるかを判別することができる。「都市」であると判定された場合、その土地は将来、値上がりする確率が高いと予測できる。

それでは、どのようにシステムはその土地の潜在的な価値を判断しているのか。我々がまず用意したのは「人混みの多い都会の画像」と「人がまるでいない寂れた郊外の画像」である。そして前者の都会の画像からRunwayMLを使用して、人間を消すことにする。これによって、都会の画像と郊外の画像は人のいない風景という点で同一のものとなり、その土地本来の潜在的な魅力がむき出しになる。

都市から人間を消した写真
郊外の画像

この二つの画像をTeachable Machineに寄って機械学習にかける。それより、都市としての性質、郊外としての性質を抽出することができて、それを学習したシステムにまだ将来的な価格がわからない未知の土地の画像を放り込むことによって、価格が上がるか、下がるかを判別することができる。

さて、このようなシステムは本当に信頼に足りうるものなのだろうか。人間を消したからと言ってその土地の条件が全く同じになるのだろうか。そのシステムが高値をつけたからと言って我々は将来、儲かるからとその土地を信じて購入するべきなのだろうか。このペテンじみたロジックを信じて。しかし、実際世界はペテンじみていて、その上で成立している。

2015/09/18 山本太郎議員は「牛歩戦術」とよばれるゆっくり歩いて投票を遅らせるという戦術を使い、国会の判定に抗議するデモ活動を行った。この行為はTwitterで話題となり、トレンドワードとして「牛歩」が急上昇した。するとこのワードに反応した株取引のアルゴリズムが「牛」の部分に反応して松屋フーズの株を買い急激な株価の高騰が起こった。

もちろん、山本太郎議員の行動と松屋フーズの行動にはなんの関連性もない。山本太郎が松屋を応援しているわけでも、松屋が何かしらの企業努力をしていると発表したわけでもない。ただ「牛歩」の「牛」の字に反応してアルゴリズムが働いただけだ。悪いジョークのようだ。

しかし実際それで株価は動き、儲かる人は儲かり、今日も(一応問題なく)経済は回っている。我々はこんなペテンのようなロジックのような経済システムの上で、生活をしているのだ。

世界はますます発展していく。それは間違いなくコンピュータやインターネット、AIに代表されるテクノロジーのおかげであり、それらはこれから信仰の対象となっていくだろう。それらの作り出すシステムがどのようなロジックで数値を弾き出しているかはわからないがパソコン様がそうだと言っているのなら正しいという世界が来ている(本来はある種のロジックやアルゴリズムを人間が把握して、それを正確にこなしてくれるのがパソコンの役割だったはずだ)その中身のロジックを知る人間だけが得をしてそうでない人間はただパソコンに従っていれば良い。

我々の今回作り出した、作品はまあ間違いなくペテンと呼べる。悪いジョークとして流してもらって構わない。ここにどんなエビデンスもなければ、信頼できるロジックもない。しかしパソコンがこの判定をしていることは間違いがない。その一点だけでこの装置が本当にいつか信頼されてしまう未来が来るかもしれない。そうならないことを祈りながら、この作品をここに設置します。

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