Uncanny Valley -不気味の谷を探る-

本作品はStyleGANや顔検知など、機械学習を用いたメディアアート作品です。慶應義塾大学SFC 2021年度秋学期開講の「メディア・アート実践」の最終課題として制作しました。(松岡 佑馬・山田 真之介の共同制作)

作品概要

この作品は「不気味の谷を探る」というコンセプトで制作しました。
GANで生成した「ロボット人間」の画像に顔検知をかけることで、AIにとっての「不気味の谷」を探り、それが人間の認識とどれほどの差があるのかを探っていきます。

制作環境はp5.js/ml5.js/RunwayMLです。

不気味の谷現象とは?

ロボットを人間の容姿に近づければ近づけていくほど親近感が増していくのだが、ある一定の度合いに到達すると突然「強い嫌悪感」を感じる奇妙な現象がある。不気味の谷と呼ばれる現象である。しかし、その後ロボットの外観が人間と見分けがつかなくなると、彼らに対する共感は再び高まっていくという。

https://www.researchgate.net/publication/351700138_Parental_Acceptance_of_Children's_Storytelling_Robots_A_Projection_of_the_Uncanny_Valley_of_AI
『Parental Acceptance of Children’s Storytelling Robots: A Projection of the Uncanny Valley of AI』より引用

画像生成

この作品ではまず、RunwayMLで人間とロボットが入り混ざったデータセットを学習し、StyleGANで画像を生成しています。

人間の例
ロボットの例

顔検知

次に、JavaScriptの機械学習ライブラリml5.jsのFace APIを用いて、生成した画像に人間の顔があるかどうかを検知していきます。人間の顔(らしきもの)が検知されると、目・鼻・口など顔のパーツに沿ってビジュアルが表示されるようになっています。

AIの不気味の谷と人間の不気味の谷

生成したGAN画像に顔検知をかけることで、AIが顔(人間)として認識する画像とそうでない画像を探ることができました。では、人間のそれと比べてみるとどうでしょうか。ぜひ鑑賞者のみなさんも一緒に考えてみてください。

おそらく多くの方は、気持ちが悪く、嫌悪感を感じたと思います。AIにとっては人間(不気味の谷を超えている)だったとしても、人間の感性では、まだ不気味の谷を越えられていなかったのでしょう。

最後に

「AIの不気味の谷」は、あるアルゴリズムのもとで機械的に判定されていますが、「人間の不気味の谷」はどのように定められているのでしょうか。その基準は誰にもわかりませんが、不思議なことに、全ての人々がほぼ同じ感覚を持っているはずです。

実験的な作品でしたが、「人間だけが持つ、基準が曖昧な感性」について考える機会をつくれたのではないかと思っています。今後もGANの精度を挙げるなどのアップデートを通して、さらに「機械と人間の関係」を考えていける作品にしていければと思っています。

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