新型コロナウイルスの算数(13)
検査で陰性は完治の証拠ではない
ふたたび陽性は14%は計算通り
東京新聞のこのニュース の見出しは
新型肺炎
広東省退院患者
再び陽性は14%
暫定調査 警戒呼びかけ
でした
これだけ読むと、検査結果が陰性になって退院した人のうち、14%もの方々が陽性になったのは、予想外に怖ろしいことだと思いませんか?
ところが、実際に計算してみると
それくらいは出るだろう
という結果になりました。
検査の正しさを示す感度と特異度
聖路加国際病院QIセンター感染管理室マネジャーの坂本史衣さんによる と
感度とは、その検査が、陽性の人を正しく陽性と判定できる確率です。新型コロナウイルスによる感染症 (COVID-19)を引き起こすウイルスである「SARS-CoV-2」のPCR検査の感度は、30~50%や70%だという報告がありますが、いずれにしても100%ではありません。
とのことです。
検査の結果について大事なのは、この感度と特異度です。
特異度というのは、感度と対になる
陰性の人を正しく陰性と判定できる確率
のことです。
こちらも100%にはならず、良くても95%位のようです。
仮に今の新型コロナウイルスの検査で、感度が70%、特異度が95% だとして計算してみました。
退院した時に感染している人がいる
現在中国で退院された方は、2万人を超えています。
退院する前には、症状も無くなっていて
この人は退院できるだろう
と思われている方でしょう。
そこで仮に、退院前の検査した人の中で、ウイルスが残っていない人(以下、非感染者)が20,000人いて、ウイルスが残っている人(以下、感染者)が10,000人 だったとします。
非感染者20,000人の内、検査の結果が陰性になるのは、特異度 = 95% ですから
20,000 × 0.95 = 19,000 (人) ……(1)
残りの非感染者は、陽性になるのでその数は
20,000–19,000 = 1,000 (人) ……(2)
つまり1,000人の方はもう治っているのですが、まだ入院することになるのです。
一方感染者は感度 = 70% で陽性になりますから
10,000 × 0.7 = 7,000 (人) ……(3)
感染者なのに陰性になった人は
10,000–7,000 = 3,000 (人) ……(4)
です。この人達は「良かった」と思って退院するわけです。
こうして、(1) + (4) の
19,000 + 3,000 = 22,000 (人) …… (5)
が退院します。しかし、この時点で
3000 ÷ 22,000 ≒ 0.136
つまり退院した時点で、 14% くらいの人がまだ感染しているわけです。
退院後にすぐ検査すると
退院したあと、すぐにもう一度検査したとして、どれくらいの人が陽性になるかを計算してみます。
まずは(1)の非感染者が、間違って陽性になる場合です。非感染者を正しく非感染者と判定する確率は、特異度 = 95% ですから
19,000 × 0.95 = 18,050 (人)
がふたたび陰性になります。
ですから
19,000–18,050 = 950 (人) ……(6)
の非感染者が陽性になります。
この人たちは本当は治っているのに、もう一度入院することになります。
一方 (4) の方々は感染していますから、感度 70% で陽性になリます。したがって
3,000 × 0.7 = 2,100 (人) ……(7)
が陽性になります。
というわけで、退院後の検査で陽性になる人は、(6) + (7) ですから
950 + 2,100 = 3050 (人) ……(8)
したがって、退院後にふたたび陽性になるのは (8) ÷ (5) で計算すると
3,050 ÷ 22,000 ≒ 0.139
つまり 13.9% 。退院した方々のおよそ 14%は、再び陽性になると予測できたのです。
おもしろいことに、退院したときの感染した人の割合とほとんど変わりません。もちろん、治っている人がもう一度入院したり、感染した人が退院したままだったりはするのですが。
仮定を少し変えると変化はするが
もちろんこの計算には、いくつもの仮定があるので、絶対に正しいはずはありません。
例えば感度を、公表されている予測の中でも一番低い 30% にすると、再び陽性になる確率は 11.7% となって、なぜか下がります。
さらに特異度を 99% にすると 8.6% 、感度 50% 特異度 0.95% では 14.38%、といった具合です。
また、感度 70%、特異度 95% でも、感染者と非感染者の割合を1対1にすると 20.6% になります。
いずれにしても、退院した人の1割程度は、再び陽性になるのです。
ちなみに、上の計算をした表計算シートをコチラ で公開しました。気が向いたら色々値を変えてみてください。
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