建築家の自邸訪問/Bokko Dekko Kenchikutai goes to ‘Ushitani-tei’./岡 文右衛門

連載第8回/2016年12月10日/設計:西澤文隆

昔から名前に「文」って文字が入ってると少しの親近感が沸いたりしたんだけど、「西澤文隆」には流石にそれはない。

まさに名建築と言われる牛谷邸、榛原にお邪魔しました。

ぼっこでっこ建築隊とは白い手袋をしてさらっと眺める見学会ではなく、食事をして、お酒を呑んで、唄ってその建築を深く体感してみようと言う集まり。

ピリっとした寒い冬の午前中、駅からゆっくり上り坂になってる国道沿いの歩道を一列になって歩く。
ヤベ隊長、オクワダ隊員、オオタ隊員、ブン隊員とリョーヘイ顧問の総勢5人の編成。

道幅いっぱいの大きなダンプカーが対向する時のクラクションが鳴るたび、ビックリして2歩くらい後退する。(イメージ)

国道から一本道を入ると辺りは里山でその一番高いところに建ってる牛谷邸が木々の間から見えてきた。

1968年竣工

「古くて新しい」ってどこにでも見かける表現だけどまさにそんな感じ。少しムクリのついた屋根はアスファルトシングル葺きで優しくて、シルエットはイギリスあたりの茅葺屋根に近い印象がする。
大屋根に開けられた小窓とそれを包み込むような屋根がそんな印象を作るんだろうと思う。

実はこの印象的な屋根のムクリは現場で突発的な変更によって生み出されたと聞いた。
実際のところはどうなんだろうと思った。

中からの見上げは扇垂木になっていて本で見た通りだった。みんなで口を開けて眺めて一瞬静かになった。
中心に向かって伸びた垂木同士が重なるギリギリのところで金物にジョイントされる構造になっていて、ぐるっとボルトを取り付けて最後、手ぇ入るんかな? とか垂木は一本づつひし形じゃないと野地板貼れないよね? とか本を見て口にした事をまた言っている。

地形に沿った床の高さはやっぱり気持ちも軽快になるように思う。
玄関からホール、和室、台所、居間それぞれに床の高さが変化していて、各自気持ちのいい場所で腰を掛けグルグルと眺めた。

持参したお弁当を居間の囲炉裏に置いて、台所で宴会の準備を始める。

普段、台所に立たないので何をしていいのかわからなくて、居間と台所の段差によって得られたええ感じの距離感の事を一人考える…フリ? (スミマセン)

GL+10ミリくらい(イメージ)の居間。囲炉裏を囲んで宴会が始まる。
虫瞰図を見ている感じ。丘の上に建てるってことはこう言うことなんだ。ウォールナットで出来た三段重のお弁当を開けるとヤベ隊長のオムレツが見えた。(このお重は隊長の私物)
そして、牛谷さんが用意してくれていた土鍋のおでんが半分くらいになった頃、オオタ隊員のギターが聴こえてきた。(このタイミングが秀逸)
弦を張っていないギターを叩くのが僕の担当で、隊長が携帯の歌詞を見ながら唄い出した。

牛谷さんも唄い、リョーヘイ顧問も今日は唄った。

すっかり暗くなって厚手でオレンジ色の縁取りがされた御簾を垂らすとちょっと神秘的な感じがした。
竣工当時にはなかったものらしい。音の響き方も少し変わった。

そして上等なお肉を牛谷さんが焼いてくれた。
いい匂いと一緒に大きな炎が上がって「キャンプファイヤーやぁー!!」って大きな声で牛谷さんが笑う。

名建築を燃やしてしまいそうになって少し焦った。火事にならないかを確認をしてから一緒に笑った。

今から約50年前に建てられた牛谷邸。
外観のイメージと同じようにその内部も大らかで温かい……ここで少年時代を暮らした牛谷さん、子供部屋といっても家中が全部吹き抜けているので個室ではないし、唯一襖で仕切ることが出来る和室も、欄間部分はガラス、たれ壁と言われる部分は全て抜けていて家中が見通せた。

そろそろ……リョーヘイ顧問の良識的な号令が掛かる。
居間と台所を行き来しながらみんなで後片付けをした(これならデキマス)、誰かが忘れ物を思い出したみたいに2階に上がって夜の写真を撮ったり、床の段差に腰掛けて電車の時間をチェックしたりしていた。距離とか寸法じゃなくてそれぞれが近かった。

お腹と胸がいっぱいの帰り道、忘れないように携帯電話に書き留めた。「キャンプファイヤーやぁー」牛谷さんの大らかな声。

帰りの近鉄特急。囲炉裏で火照った顔がヒリヒリとした。


ぼっこでっこ建築隊とは、建築家が設計した住宅に酒と料理を持参し、食事のひとときを通じて住空間をも味わおうと目論むパーティである。
隊員:矢部達也(隊長)、岡文右衛門、奥和田健、太田康仁、石井良平(顧問)


岡 文右衛門
建築家。1969年生まれ。2002年 岡文右衛門一級建築士事務所 設立。

建築討論

建築をめぐる幅広い批評的議論のプラットフォームを提供する日本建築学会のウェブマガジンです。

ぼっこでっこ建築隊

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ぼっこでっこ建築隊とは、建築家が設計した住宅に酒と料理を持参し、食事のひとときを通じて住空間をも味わおうと目論むパーティである。 隊員:矢部達也(隊長)、岡文右衛門、奥和田健、太田康仁、石井良平(顧問)

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