建築家の自邸訪問/Bokko Dekko Kenchikutai goes to ‘Re:Toyosaki’./岡 文右衛門

AT editorial board
Aug 5, 2017 · 7 min read

連載第3回/2015年6月27日/設計: 松村一輝

小学校が半ドンで終わる土曜日のお昼はいっつも、うどん。

そんなこと思い出しながら歩く大阪・豊崎の路地。道路の筈なんだけど植木鉢が並んでいたり、玄関出てすぐ道路とか。僕らが子供のころはそこでゴザを敷いて人生ゲームをしたり将棋をしたりした。そんな昭和チックな街だけど見上げると高層マンションが建っているし、子供たちは居ない(時間的にもまだ下校時間になってないのかな)。
あ、都会なんや。
列をなして、ぼっこでっこ建築隊が行く。おっさんの怪しいピクニック感を醸しながら、今回お邪魔するのはRe:Toyosaki、建築家・松村一輝さんの自宅。

オープンハウスで白い手袋してただ行儀よく見るだけじゃ住宅の良さなんてわからんから、みんなでご飯食べて呑んで唄って、たまにお風呂もよばれて、また呑んで。
そんな住宅をキチンと?味わおうと言うパーティー。
メンバーは、ヤベ隊長、オクワダ隊員、オオタ隊員、そして僕ブン隊員の4人。

撮影:増田好郎
撮影:増田好郎
撮影:増田好郎

あ、あれやな。

造りの良さそうな木製の引き戸。引き込み部分はガラスがはめ込んであって中の様子がわかるようになっている。 ピカピカ釉薬のタイルも、唐草デザインのサビサビ面格子も、ツヤ消しホワイトでペイントしただけの仕上げ。
全く作り変えてしまうより、前の形がちょっと出しゃばってくる位のファサードが上品に思う。
こう言うコスト配分なんや。って計画全体を外から想像したりした頃、松村さんが出迎えてくれた。

玄関は土間になっていてそこそこ広い。靴棚? 鉄の緑色の棚受け金物がここでも懐かしい感じがした。棚板は古い畳下地の杉板。(うちの実家の酒屋の陳列棚はこの金物とラワンやったな) 靴やブーツがキチンと並んでる。 にわかに片付けたのかな?とか意地悪なことも考えたけれど、違うと思う。玄関入ってすぐの開けっぴろげ収納群はご夫婦の意識の高さが現れていると思う。
松村さんとキチンとした挨拶をしながら、こんな事まで考えることが出来る、そんな丁度いい「広さ」の玄関。

撮影:増田好郎
撮影:増田好郎

1階は水廻りと寝室で白い布で仕切られていて窮屈な感じがしない。 行き来する横でふわっとカーテンが揺れる。ポップな色に塗られた建具も自然。
コンクリートで出来た土間に工事中のサポート(支柱)の跡が残っていて 、元々の梁の組み方を想像したりした。
階段の位置は既存のままかな? でも、もう少しキツかった(急勾配)やろなとか。
そんなストーリーを引っ張り出したりするためのスイッチみたいなサポートの跡。

撮影:増田好郎

ぞろぞろと2階へ
階段室からの冷気止めに白いカーテンがぶら下がってる。レールは杉の鴨居にキチンとしゃくり込んであって丁寧。落下防止の手すりは古い木製建具をそのまま利用。それはトリッキーな感じなのかも知れないけれど、馴染み過ぎてて見落としそうになった(笑)。 上がり下りするのを古いデザインガラス越しにぼんやり見えるのが面白い。

建物の間口は2間。
キッチンとワークデスクが同じ高さで繋がってる。デスク高くないのかな?
「狭いから低く……」ってセオリーも、これを見てるとそんな事でもないらしい。
奥行きは深過ぎないから散らからない。いや散らかさないのかも知れないけど。

ダイニングスペースからリビングスペースを見通す。
床材の上品なツヤが優しい光を奥まで運んでいて、全部えんがわみたい。
風になった気分で深呼吸をした。 (お腹が鳴る)

ご馳走を広げよう。いつもよりちょっとだけ上等な百貨店のお惣菜。
プライベートでは奥さんに「また今度ね」とか言って諭されるレベルのちょっと上等なお惣菜。
ヤベ隊長お手製のオムレツがウォールナットのお重に入ってテーブルが華やかになる。
それでは隊長の挨拶から…とかは無し。

今回の趣旨(ってほどでもないんだけど)とか、屋根の勾配よりも少しゆるく設計された天井が優しいなとか、古い梁に寄り添うみたいな新しい火打ち梁が頼もしいねとか。
そんな、それっぽい気の利いた話もあれば、ヤベ隊長のただカッコいいだけの話?とか、オクワダ隊員の「交渉」の話とか僕の「鉛筆削り」の話とか定番持ちネタ?も含めてひと廻しした頃、オオタ隊員のギターが聞こえてきた。(定番持ちネタが気になる人はぜひ呼んでください)

答え合わせみたいな時間。
お互いの答えの差分はワイワイ、グダグダ言ってる間に溶けていく。混じらん部分もセッションしながら認め合えて、ぼっこでっこ建築隊。

ええ感じや。唄うヤベ隊長、ボイス オクワダ隊員、リズムは僕。
暗くなるまでずっとそんな感じ……

松村さんは陶芸をする。(本気のやつ)作品はシュッとしてる。
ここでちゃんとした作品の評価をできるだけの知識がないのが申し訳ないんだけど、とにかくシュッとしている。カッコいい。
「どっぷり陶芸畑からは出てこないようなアプローチをしてるのかも?」って松村さんが話していたのが印象に残る。 建築も一緒ですよね。(これは心の中で呟いた)

「都会」「中古」「長屋」「改装」の選択肢を選んで実践して住んでみる。そこで仕事もしてみる。
古いものはなんでもかんでも良いって訳じゃないのを理解して、敬意を払いながら古いのを捨てること、新しいものを上品に添えることをひとつづつ丁寧にしたんやと思う。
古いものと新しいもの 、変わったらあかん事と変わらんとあかん事はそれぞれ背中合わせの関係だと思ってたんだけど、どうやらそうじゃないらしい。どっちもが寄り添って同じ方向を見て今を住まう。

そんな、Re:Toyosaki

資料提供:coil 松村一輝建築設計事務所

こんな長屋が増えたらいいなぁって思う。
広い玄関で井戸端会議が毎日続いて欲しいと思し、「長屋根性」と言われる繋がりも懐かしいものじゃなくて進行形であって欲しいと思う。
Re:が何度も何度も廻って元どおりになればいい。

路地が子供達の声でうるさくなって、たまに爺さんになった誰かが「じゃかましわっ!」って怒鳴ればいいと思う。

半ドンはうどん、新喜劇がはじまるな。

ぼっこでっこ建築隊とは、建築家が設計した住宅に酒と料理を持参し、食事のひとときを通じて住空間をも味わおうと目論むパーティである。
隊員:矢部達也(隊長)、岡文右衛門、奥和田健、太田康仁、石井良平(顧問)

建築討論

建築をめぐる幅広い批評的議論のプラットフォームを提供する日本建築学会のウェブマガジンです。

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建築討論委員会(けんちくとうろん・いいんかい)/『建築討論』誌の編者・著者として時々登場します。また本サイトにインポートされた過去記事(no.007〜014, 2016-2017)は便宜上本委員会が投稿した形をとり、実際の著者名は各記事のサブタイトル欄等に明記しました。

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