陣内秀信著『イタリア都市の空間人類学』

(評者:布野修司)

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建築討論
3 min readJan 25, 2016

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図1

「空間人類学」の提唱と実践で知られる著者の、その原点となるイタリア都市に関する論集である。Ⅰ.空間人類学から読むイタリア都市、Ⅱ.イタリア都市論の2部から構成され、イタリア都市全体を対象とする論考と個別の都市に関する論考が分けられているが、Ⅱの末尾には、「地中海都市」として、地中海沿岸のイスラーム諸都市(チュニス、マラケシュ、アンダルシア、トルコ)に関する論考も収められている。

「空間人類学」という学の構想と方法が具体的に示されたのは『東京の空間人類学』(1985/ちくま学芸文庫1992:“Tokyo, A Spatial Anthropology、translated by Kimiko Nishimura”University of California Press、1995)においてである。その学の実践は、イタリア都市、地中海都市のみならず東京、さらに北京などアジアの諸都市にまで拡大されてきた。そうした意味で興味深いのは、「「空間人類学」から都市の深層を読む―「はじめに」にかえて」である。「イタリア都市との出会い」から「東京研究から生まれた「空間人類学」の方法」、「再びヴェネツィアを新鮮な視点で見直す」…と自らの研究史が振り返られているのである。(S.F.)

著書紹介:
陣内秀信(1947北九州市~)法政大学デザイン工学部教授。イタリア建築・都市史。工学博士。1971年東京大学工学部建築学科卒業。1973–1975年ヴェネツィア建築大学留学。1980東京大学大学院工学研究科博士課程単位取得退学。1980年東京大学工学部助手、1982年法政大学工学部建築学科助教授、1990年法政大学デザイン工学部建築学科教授。著書に、『都市のルネサンス――イタリア建築の現在』(1978)、『ヴェネツィア――都市のコンテクストを読む』(1986)、『都市を読む・イタリア』(1988)、『北京――都市空間を読む』(共編著)(1998)『イタリア都市と建築を読む』(2001年)、『イスラーム世界の都市空間』(共編著)(2002)『迷宮都市ヴェネツィアを歩く』(2004)、『南イタリア都市の居住空間――アマルフィ、レッチェ、シャッカ、サルデーニャ』(編著)(2005)『地中海世界の都市と住居』(2007)、『興亡の世界史(8)イタリア海洋都市の精神』(2008)他

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建築討論委員会(けんちくとうろん・いいんかい)/『建築討論』誌の編者・著者として時々登場します。また本サイトにインポートされた過去記事(no.007〜014, 2016-2017)は便宜上本委員会が投稿した形をとり、実際の著者名は各記事のサブタイトル欄等に明記しました。