Hashimoto Lab., Dept. of Design, Facuity of Creative Eng., Chiba Institute of Technology/橋本都子[研究室レポート]

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Feb 2, 2017 · 8 min read

1.研究室のあゆみ

千葉工業大学・橋本研究室は2000年に始まり、延べ160名の卒業生が巣立ちました。本学のデザイン科学科では、インテリアや建築のデザインに加えて、情報デザインやプロダクトデザインを志望する学生もおり、各分野の境界領域を学べることが一つの特徴となりますが、その中でもインテリアや空間デザインに関わる研究を志望する学生が、橋本研究室には多く所属しています。

研究室が決まる時期は概ね3年生の夏休み前であり、3年生後期から研究室単位での授業(デザインセミナー)が始まり、これは卒業研究の準備段階にあたります。そこで学生たちは初めて小規模(十数名)で教員と向き合う授業を体験します。

2.プレ卒業研究として

橋本研究室ではここ数年、卒業研究に向けた3年生の授業でコンペに挑戦しています。昨年は「賃貸住宅の公」、今年は「都市のパブリックススペースデザイン」に3年生全員が応募しました。両方に通じるキーワードはパブリック(公)でしょうか。というのも、私自身パブリックスペースのデザインに興味があること、そして誰もが利用するパブリック(公)のデザインを考える事は、色々な立場の人の気持ちになって考えるというトレーニングの場になります。そして何よりも、3年生でコンペを経験することは、締め切りに向けた自身の時間管理の練習になり、それはデザインを学ぶ上で最も大事なスキルの一つでもあります。授業では緩くなりがちな締め切りも、コンペではそうはいきません。限られた時間でいかにいい結果を残すのか、正解がないデザイン教育でその方法とプロセスを指導することはいつも難しい課題であります。

指導の中で心がけていることは、なるべく学生のアイデアを「社会」に向けて発表する(そしてコメントを受ける)機会を設けることです。賃貸住宅のコンペでは、まず神楽坂にあるシェアハウスを研究室で見学にいきました。そして、都心を中心に新しいタイプの賃貸住宅の企画・開発に携わる市川夏子さん(タカギプランニングオフィス)に中間発表会や講評会に参加頂き、学生の案に対してコメントをもらいました。都市のパブリックスペースでは、横浜みなとみらい地区のパブリックスペースを見学して、行政担当者(習志野市)のスタッフよりパブリックスペースに関する説明を受けました。こうした大学の中だけに留まらず街に出かけて色々なものを見て歩くこと、また学外にそして社会に向けて自分たちの発想やアイデアを発信していくこと、そうした経験がその後ゆっくりと学生自身のエネルギーに変わっていくのだと感じています。

行政担当者よりコンペ敷地の説明を受ける
行政担当者よりコンペ敷地の説明を受ける
行政担当者よりコンペ敷地の説明を受ける
互いのコンペ案に意見を出し合う学生の様子
互いのコンペ案に意見を出し合う学生の様子
互いのコンペ案に意見を出し合う学生の様子

3.学習環境づくりプロジェクト

オープンプラン小学校の学習環境づくり/オープンスクール研究会

ここ数年続けている研究室の活動として「学びの場のデザイン」について考えること、があります。具体的には、小学校のオープンスペースなどに学習や季節に関わるデザインを施して、校舎を学びあふれる魅力的な空間にする、という活動です。その成果の一部は、学習環境づくりガイドブックとして、冊子にまとめて様々な学校関係者に配布しています。

差し替え
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白の世界
白の世界

最近の活動として、2016年度は千葉市立美浜打瀬小学校の先生たちとコラボして、1〜6年生全学年の“学習環境づくり”を行ないました。参加学生は、橋本研究室に加えて、千葉工大の倉斗研究室と明治大の上野研究室の学生有志、総勢15名です。きっかけは校長先生より、大学生のアイデアでオープンプラン型の小学校を校舎の特性を活かした魅力的な空間にしていきたい。という依頼を4月に受けたことであり、6月の学習参観日を目標に、学生たちは担当学年(1学年2〜3名)の教室まわりを見学して、アイデアをだし、小学校の先生らと相談をしながら空間づくりを進めました。

1年生は季節を表す装飾、2年生は幕張ベイタウンの立体地図、3年生は千葉市を発見するパノラマ写真など、4年生は吹抜けで深海の世界を表現、5年生は米づくり学習空間、6年生はすごろく方式の歴史クイズを作成して展示しました。授業参観日に完成した展示を見学した学生は、さっそく壊れた展示物を修理したり、子どもたちから話しかけられたり、小学校の先生から感想を伝えられたり、大学や学年の枠を超えた協働作業が学生にとって勉強になったようでした。

1年生 昇降口前につくられた季節を表す装飾
1年生 昇降口前につくられた季節を表す装飾
1年生 昇降口前につくられた季節を表す装飾
2年生 幕張ベイタウンの立体地図
2年生 幕張ベイタウンの立体地図
2年生 幕張ベイタウンの立体地図
3年生 パノラマ写真で千葉市を発見
3年生 パノラマ写真で千葉市を発見
3年生 パノラマ写真で千葉市を発見
4年生 深海の世界を表現
4年生 深海の世界を表現
4年生 深海の世界を表現
5年生 米づくり学習空間
5年生 米づくり学習空間
5年生 米づくり学習空間
6年生 すごろくで歴史の勉強
6年生 すごろくで歴史の勉強
6年生 すごろくで歴史の勉強

4.海外の学校施設の視察

私自身の研究テーマとして、主として小学校を主軸とした「学習空間の環境づくり」があります。その一環として、国外の学校教育施設の視察に出かけています。ここ数年で特に印象的だった場所は、イタリア(レッジョエミリア市)の幼稚園、そしてミュンヘンのシュタイナー学校でした。
イタリアの幼稚園では自発的な行動を促す教育プログラムを実践しており、そのための空間デザインがとてもよく工夫されています。例えば、幼稚園中央にある大ホールではいつでもすぐに作業が出来るように複数のコーナーに紙やペンなどの道具一式がいつも整然と並べられていて、過去に行なった教育プログラムは必ず記録(録画)されており、何度も繰り返し記録を見ながら先生と子どもたちとが一緒に考える場所がつくられていました。

イタリア(レッジョエミリア市)の幼稚園の様子
イタリア(レッジョエミリア市)の幼稚園の様子
イタリア(レッジョエミリア市)の幼稚園の様子
12
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教育プログラムのビデオを見ながら教師と話す子どもたち

昨年11月に訪問した、ミュンヘンのシュタイナー学校も大変印象的な空間でした。コストを押さえるため手づくりの校舎は、学年毎に教室の色や形そして家具が異なり、学齢にあったものがよく考えられていました。直角に曲がる廊下や長方形の部屋、水平の天井はなく、人の動きに合わせて作られていました。考えてみれば、ひとは決して直角に曲がることはありませんし、自然界に長方形のモノも存在しません。シュタイナー学校の空間に入ると、何かに優しく包まれるような温かな印象を受けました。そして、両学校ともに建物入口に「ようこそ!」というような訪問者を受け入れる温かな空間づくりがされていることが印象に残りました。

ドイツ(ミュンヘン)のシュタイナー学校
ドイツ(ミュンヘン)のシュタイナー学校
ドイツ(ミュンヘン)のシュタイナー学校
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シュタイナー学校 教室内の様子

5.さいごに

学生にとっての研究室とは、おそらく社会へ旅立つ最後の時間をすごす大事な人格形成の場でもあると思います。研究はもとより人としても成長できる場になるよう、研究室の運営責任者として心がけて行きたいと思っています。年一度のゼミ合宿をきっかけに、毎年研究室の学生同士の距離がぐっと近くなるように感じています。そして、昨年は、全学年の卒業生に声を掛けた研究室15周年同窓会を行ないました。しっかりと成長して社会人として頑張っている卒業生に会えた時、本当に嬉しく感じます。

ゼミ合宿で厳島神社へ
ゼミ合宿で厳島神社へ
ゼミ合宿で厳島神社へ
研究室15周年の同窓会(右から3番目が筆者)
研究室15周年の同窓会(右から3番目が筆者)
研究室15周年の同窓会(右から3番目が筆者)

橋本都子
千葉工業大学創造工学部デザイン科学科教授。建築計画・空間デザイン。1990年東京都立大学卒業、2000年日本女子大学博士後期課程修了。博士(学術)。日本女子大学家政学部住居学科助手、2000年より現職。共著に『環境と空間』、『建築都市計画のための空間計画学』『環境行動のデータファイル』ほか。

建築討論

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建築討論委員会(けんちくとうろん・いいんかい)/『建築討論』誌の編者・著者として時々登場します。また本サイトにインポートされた過去記事(no.007〜014, 2016-2017)は便宜上本委員会が投稿した形をとり、実際の著者名は各記事のサブタイトル欄等に明記しました。

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