官民連携、民から見る疲労の「現象」「原因」「解消」

018 | 201804 | 特集:プロジェクトと「疲労」

われわれは民間主体の立場として、または官民の中間支援組織の立場として、北浜テラス、水都大阪、なんば駅前の空間再編、西梅田地区の地下道活用、豊田や岡崎のまちなか再編、長門湯元温泉の再生などに関わっている。10年前には考えられなかったスピードで、官民の役割分担の考え方や公物管理の制度が変化し、新たな価値観が官民で共有されないまま理念やフレーズ先行で進んでしまっている感は否めない。

関わっているプロジェクトはすべて官民が強力に連携することが必須となるものであり、理念と実践を行ったり来たりしながら現場で感じているプロジェクトの「疲労」とそれを超えるチャレンジやアイディアについて考えてみたい。

地域課題解決だけでは共有しにくい将来ビジョン

現象:
地域に様々な課題があり、その課題解決のためのプロジェクトを想定し、それを実施する事業主体を呼び込んでいくというのが通常の進め方であるが、人口減少、高齢化の加速、空き物件の増加、コミュニティの衰退、子育て環境の不安、雇用の減少などの地域課題から出発しても向かうべきビジョンが共有しにくいという現象がある。それらが解決された後にどのようなことが起こるのか、それが自分たちの暮らしとつながっていて具体的にイメージできるかどうか、それがワクワク感のあるものなのか。

また、地域経営が重要という視点のもと、エリアマネジメントやデスティネーションマネジメントなどの組織の枠組みやマネジメント主義の議論がなされがちであるが、将来ビジョンを共有できていない状況においては、既存組織との対立を生んだり、自立しない主体が連携を求め持たれあいの状況になったりしがちである。

原因
・未来のワクワク感より地域課題解決が先行
・ユニークなコンテンツよりマネジメントや組織の話が先行
解消
・課題解決→面白い暮らし創造、ワクワク感の共有から
・マネジメントの前にコンテンツ、カオスの寛容性が大切

本来、課題はこうなってほしい将来と現実とのギャップにより生まれる。今見えている問題は、本質的な課題でないかもしれないし、その先にあるワクワクする暮らし方を追求してはじめて課題が見えてくる、共有できると考える。

また、個々の活動がたくさんあり収集がつかなくなる状況ではじめて、調整のためのマネジメントが必要になってくる。最初にマネジメントや組織ありきではなく、 特に地方都市では、まずは個々のコンテンツ・活動を作っていくことからスタートする。公共空間やエリアについても、自由と責任をベースとしたカオスや寛容性を大切にし、なるべく規制やルールを作らない運用を心掛け、意志を持った主体がいいアイクティビティを呼び込み、常に見守りつつ動かしていくのがうまく進む秘訣だと考えている。

参考事例:あそべるとよたプロジェクト

あそべるとよたプロジェクトは、豊田市で都心のにぎわいや回遊性を向上させるため進めている「都心環境計画(平成27年度策定)」の一環として、豊田市駅周辺にある開けた空間“まちなかの広場”を、“人”の活動やくつろぎの場として開放し、さらにはとよたの魅力を伝え、とよたに愛着を持てる場所として、使いこなしていく取組である。日常的なにぎわいが少なく、発表の場として使うことも難しかった、まちなかの広場。そんな場所で、市民・企業・行政が一体となってアイデアを出し合い、みんなの“やってみたい”ことを実現しながら、より使いやすい広場に生まれ変わるための継続的なしくみを創っていくことを目的としている。

公共空間のマネジメントの仕組みを大上段に考える前に、計画づくりと並行し、平成27年度からハード整備担当の市の都市整備課に運営事務局を置きつつ、広場的空間の官民の管理者が一丸となり自らの空間を開放し、コンテンツの担い手や活用を呼び込んでいる。並行して、「つかう」と「つくる」を連携し、活用から得られた知見をハードデザインにフィードバックしている。

自由と責任で自ら公共空間を使う理念に一定の賛同を広場使用者・広場管理者より得ることができ、積極的な活用の仕掛けや利用ルールの改善などの取り組みによって、まちなかの広場での滞留行為が増加しただけなく、より多様な行為が複数の広場で行われることとなっている。特に、豊田市駅前のペデストリアンデッキでは、プロポーザルで選定された事業者が、飲食等事業で収益を確保しつつ、くつろぎ休憩できる空間を維持したり、広場利用者の利用調整をしたり、通年での広場のマネジメントを実践することにつながっている。

あそべるとよたプロジェクト
あそべるとよたプロジェクト
あそべるとよたプロジェクト

ブツ切り&内輪のビジョンのつくり方と主体

現象:
従来のまちづくりや開発のプロセスは、ビジョン、マスタープラン、それに基づく事業が実施され、モノができた後に運営者に引き継ぐ。例えば設計・ハードの時点では基本設計、実施設計、工事施工、工事監理などに切り離され別々な主体が担当し、当初のビジョンや人材が運営の時点では継承されない。本来一番大切な、モノが完成した後の「運営」は、単なる仕様書が決まった「管理」業務になりがちで、創造的な運営のためのビジョンやハードにさかのぼる仕組みがない。拡大が前提の時代では、つくればつかう人が存在したということもあり、つくる目線での計画が多く、現在となっては使われない、使いにくい施設や場所が出現することにもつながっている。

また、まちづくりは、地域社会の構成員をターゲットに、そのエリアの生活環境の維持・向上を図る動きとして展開されてきたが、昨今は地域を存続させるための雇用や来街者を獲得すべく、エリアの資源を活用し経済活動を発展させる動きが求められるようになってきたが、客観的な外からの目線が十分でなく、地域外とのつながりをデザインすることに不慣れなのが実情である。

原因:
・各工程で分断された発注プロセス、運営のイメージのない無責任なプラン
・地域外とのつながりや事業性を意識した地域経営の発想の欠如
解消:
・将来の運営主体候補がビジョン、プランづくりから一気通貫で関わる
・地域外とつながる観光まちづくりの視点でプランニング

従来のプロセスから逆転の発想で、最初に運営を担う予定の主体候補がビジョンづくりから関わり、官民でビジョンを共有したうえで、社会実験などを経て事業性を検証し、事業性があるものについてマスタープランに落とし込み設計、ハード整備に移行していくというプロセスが有効である。そうすることで事業的に持続可能で使われるものをつくることが可能となる。その際、多様な民の属性に応じて関わりやプロセスをデザインすることが重要となり、地域全体としてゆるやかにビジョンを合意する主体の生活者と、今後リスクをとって事業主体として関わり行政のパートナーとなる民間事業者と、うまくベクトルを合わせつつ異なるレベルでビジョンへ反映していく。

地域内のみでなく地域外とつながるマーケティングやコミュニケーションはさらに重要性を増している。中長期・地域社会・マスタープラン型のまちづくり、短期・事業者・事業性先行型の観光、この両者は性格が異なるからこそ自らが不足している視点や技術を相互に補完しあえる関係にある。地域が主体となって、地域資源を観光対象化することで、地域の外の人やモノごととの関わりを生み出し、地域の環境改善や経済循環をめざす観光まちづくりの視点と技術が求められている。

参考事例:北浜テラス

北浜テラスの事例では、ビルオーナーやテナントとNPOの有志が一緒にエリアの将来像を構想し地域に提案し、同時に河川区域を活用する方法や法的解釈を河川管理者に相談した。その結果、賛同したビルオーナーやテナントで3つのテラスを実験的に1ヶ月の期間限定で運営し、その検証を経て常設化に向けたスキームを官民で構築した。最終的に河川占用の包括占用を受け、日常的に管理運営を担う責任ある主体(北浜水辺協議会)を設立し、その主体が運用ルールを自ら決め、景観に配慮したデザインや安全性確保、エリアの魅力向上のためのイベント、船からテラスに直接アクセスする船寄場や水上ステージの設置協議などを進めている。地元協議会が、ビジョンづくりから社会実験による検証、テラスのデザインや設置ルールづくり、運営まで一気通貫で進めている。河川管理者の大阪府も、当初からエリアの将来像や民間による地域経営という共通の目標を協議会と議論を重ねつつ共有し、適切な制度設計を実現させた。それらの結果、来街者や観光客の目的地ともなり、エリア価値向上につながっている。

北浜テラス
北浜テラス
北浜テラス
北浜テラス

悪平等、質の評価をしないという思考停止

現象:
行政が関わる制度設計やプロジェクトでは必ず出てくるハードルが公平性である。結果の平等でなく機会の平等、いいアイディアや責任ある優秀な人材にはそれを応援する環境をつくる、ごく当たり前のことであるが実現は簡単でない。一部のクレーマーに対応を迫られることが多発し禁止事項が多く使いづらくなってしまった公共空間、地元の重鎮や世間体が次世代の若者のユニークなアイディアを認めない環境、民間の努力による収益や質の高い活動を評価しにくい均一な縦割り評価(来場者数主義など)や官民の契約制度、計画の途中で様々な雑音が入りターゲットが絞り込めず肥大化し結果事業が破綻する、などの状況が存在している。これらの質を評価しない悪平等の思想が蔓延している結果、良好な民間事業者の参画機会の損失が起こっており、結果として行政や市民の損失となっている。

原因:
・自由と自己責任という市民意識の欠如
・よい民間主体への適切な公共性の付与の放棄、任せる側の見識の欠如
解消:
・地域主体の自由と自己責任の徹底
・よいアイディアやチャレンジを応援しあう空気
・よい民間主体の事業について公共性を付与する枠組みづくり
・決めたらきちんと任せ客観的な外部評価で判断する任せる側の見識

例えば「北浜テラス」では、現在の準則特区の制度がない時代に任意の地元協議会を包括占用主体として初めて河川管理者は認可し公共性を付与した。法の枠組みはなかったものの、実際に賑わいに寄与しているか、地域合意がなされているか、責任が取れる団体か、景観デザイン・組織ガバナンス・情報発信が可能な人材がいるか、災害時対応や現状復旧の能力があるか、事業の安定性があるかなどを第三者審議会で判断し決定された。現在でも地元主体で自治しており、3年に一度、利用の妥当性について第三者審議会の評価を受け更新することとなっている。

「水都大阪」では、大阪府、大阪市、経済界が一体となり推進体制を構築し、秋の水都大阪フェスを若手チームに任せること、その後は水都大阪パートナーズという民間推進主体を公募し、単年度主義を排してその主体に4年間のビジョンとロードマップを提案させるとともに、府市合同のワンストップ行政窓口組織を設置するなどの工夫を行った。官民は一定の緊張関係のもとに取り組み、官民のトップの推進会議による事業内容決定と外部の事業評価委員会による評価の枠組みで、予算化、規制緩和や制度改善、次年度事業継続などを進めた。

「豊田市都心環境計画、あそべるとよたプロジェクト」では、まず、まちの空地を市民や事業者に開放するため官民管理者による活用推進組織を設置し、自由と責任のルールや商売可能な整理をした後に利用者を公募。市は道路区域の除外や利活用仕組み支援を行い、結果として人が溜まれなかった豊田市駅前のデッキには、プロポーザルで選定された民間事業者が飲食事業で自ら稼ぎながら居心地よいひろば空間を運営している。

「岡崎市おとがわプロジェクト」では、市が旧市街の再生のプロジェクト推進のパートナーとして地元NPOを選択したことがまず画期的。地元NPOならではのネットワークを活かし市民や事業者ワークショップを重ね、外部専門家も入り「QURUWA」という重点的に官民の良質な投資を呼び込む回遊動線を設定した。市が公民連携方針を打ち出し、最終的にはエリアの運営は民間に任せるべく、社会実験結果をふまえつつ公有地事業のプロポーザルを計画している。

参考事例:長門湯本温泉観光まちづくり

「長門湯本温泉観光まちづくり」では、廃業した老舗旅館跡地に市が誘致した外部投資企業(星野リゾート)にエリアマスタープランを任せ、それを市と地域は受け入れ温泉地の再生を進めている。本来、旅館運営と温泉街の魅力づけは、同じ方向性で進めることのできる事業であり、施設運営は営利目的の民、エリア価値向上は公益目的の官、と分離しきってしまう必要はない。しかし、地域のしがらみにより地元企業がエリアへ提案するというのもハードルが高く、第三者の適切な外部評価に基づく提案の質を確保することも簡単でないのが現実である。

そこで、エリア価値を高める投資を予定する外部主体に行政投資を含めた戦略づくりを任せ、これにより企業が本来持つ「社会性」を引き出し、エリアの質を高め価値向上につなげていくという新たな公民連携の方法をとっている。市は当初の旅館解体や観光でまちを再生する大方針を決定し、ランドスケープや駐車場を投資することに対して、民間は新規旅館建設やプロポーザルによる外湯の建替え、外部からの新しいビジネスの参入、公共空間の運営などを担い、地域はそれを受入れる合意形成を図りつつ新たな事業展開も担う。社会実験により事業性や地域合意などを検証しながら進め、地元地銀もファイナンスで民を支援する。

市が大方針を示し、もともと社会的な存在である企業が一定の公的役割を担うことがきっかけとなり、様々なアイディアを官民で持ち寄り、試行錯誤を繰り返しながら新たな価値観を共有しはじめている。

長門湯本温泉観光まちづくり
長門湯本温泉観光まちづくり
長門湯本温泉観光まちづくり

初動期の鶏と卵の呪縛

現象:
地域再生のプロジェクトの初動期では、民間の事業の担い手が見えずに次の一手が打てないという事が良く起こる。以前は拡大傾向の状況の中で、官はビジョンを策定すれば自動的に予算と民間投資がついてきたが、現在はよい民間事業者の参画が成否を分け、それにはエリアのポテンシャルを可視化し、投資に対する興味を持っていただくことが不可欠である。大資本では採算が合わないが、地方にはディベロッパー候補がいない。

民間は官がどのようなまちにしたいのかビジョンがわからないので投資できない。また官の位置づけや投資があることが担保されれば民間は参画できるが、官としては民間投資があることが前提でないと投資に踏み切れない、官が勝手にビジョンをつくっても民間が呼応してくれるかどうかわからない、官がビジョンを策定したら自らの責任で必ず予算をつけて推進することが課されるためそこまで決断できない。

民間としては、社会実験を行いながら、段階的に事業性を検証し投資を判断したいが、それには官民で共有する将来ビジョンがいる。仮説を持ち検証が行われないと単なるイベントとなり、次の事業に展開しないからである。しかし、先ほどの懸念で官はビジョンを打ち出せない。これが初動期の鶏と卵の呪縛である。

原因:
・以前のようにビジョンや事業をつくる主体が官のみでは完結しない時代背景
・官民相互の投資意思決定の論理や時間感覚の乖離、相互に一歩踏み出す覚悟の不足
解消:
・行政計画に位置付けないエリアの将来ビジョンを官民でつくり、ふわっと浮かせて共有する、名付けて「フロートビジョン」
・エンジンとなるよい民間主体を、特に初動期に官民で支援

生命線となる「仮説・ビジョン」と「エンジンとなる主体」をつくり、初動期の呪縛を突破する必要がある。それには上記の2つのアイディアが有効と考えている。

官民でエリアの将来ビジョンを一緒につくりあげ共有することは必須であるが、行政計画とした途端に書けないことだらけになる、とんがったユニークな提案がまるくなるなどの弊害があるため、随時更新することを前提として事業者の顔が見える提案を盛り込み、あえて行政計画とはせずに棚に上げておくビジョンをつくる。官はそれをもとに一部行政計画に位置付けていく努力をする、民はその実現にむけて動いていく。
 
ビジョンづくりや推進には、価値を高めるアイディア、投資主体の想定、公共空間再編、エリア交通計画、空間デザインルールなどの地権者&地域合意など様々な作業やノウハウ、社会実験の試行などが必要となり、これらは非常に公益性の高い活動である。それを推進するエンジンとなる主体を発掘し、初動期に官民で支援する仕組みやお金がほしい。それが最終的にはエリア再生の根となり花となる。

参考事例:岡崎市おとがわエリアビジョン

岡崎市の乙川リバーフロント計画は、都市空間と水辺空間の一体的整備、回遊性の確保に取り組み、観光拠点となるにぎわいの場の創出を図るものである。乙川リバーフロント地区は、歴史文化資産岡崎城跡総曲輪(くるわ)を含み、現在設定されている主要回遊動線「QURUWA」は、東岡崎駅エリア、セントラルアベニューエリア、籠田公園エリア、りぶらエリア、伊賀川・岡崎公園エリア、乙川エリアの6つのエリアを約3kmで1周してつなぐもので、この「QURUWA」上に公民の投資を集中的に行い、エリアの価値を高めていくことを意図している。

この中で、乙川エリアについては、河川緑地のハード整備は行政計画に挙げられているが、具体的な将来ビジョンや作り出したいシーンはこれからという段階であったので、将来的な活動の担い手やアイディアを発掘し実践する「おとがワ!ンダーランド」を複数年にかけて行い、民間投資主体の候補となる主体が見えつつある状況になってきた。しかし、行政としては「QURUWA」全体の基本計画を策定したばかりであり、民間事業に対する行政の受け方も位置づけはあるが具体的には決まっていない。

行政計画とすると必ず予算をつけて実施することとなるため位置付けられない。民間主体としても自らが公有地をどのような条件で使えるか、イベントでなく事業として投資が可能なのかがわからないのでこれ以上進められない。このような状況の中で、①地域・民間・行政でエリアの将来像と短・中・長期で展開するプロジェクト・活用のイメージを共有する、②目指す姿を明確にすることで良質な民間事業者を呼び込む、③地域は暮らしに、民間は自らの事業に、行政は計画に反映していくことを目的として、「おとがわエリアビジョン」をつくることとなった。行政計画には位置付けず、ふわっと浮かせて共有する。

乙川エリアに関わる地域住民、事業者、地先オーナー、行政が集まり、単に「こうなってほしい」という第三者の意見ではなく、官民フラットに「私達がこれをやりたい」という提案と主体をレイヤーとして重ねていく。結果、17プロジェクトに集約された。このエリアビジョンを地域へのお披露目の場を持ったところ、各民間主体が地域の人に提案し顔の見える関係が生まれるという状況が生まれている。当初策定したエリアビジョンは正確な実現を目指すのではなく、随時動きながら更新する前提の柔軟なものとする。

岡崎市おとがわエリアビジョン
岡崎市おとがわエリアビジョン
岡崎市おとがわエリアビジョン
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