[翻訳:張亭菲]

質問1:皆さんはどのように〈衆建築〉(People’s Architecture Office、以下PAO)という建築ユニットを始めたのですか?

私たちはもともと同僚で、いずれも張永和先生の〈非常建築事務所〉(Atelier FCJZ)で長年仕事していました。このプロセスを通して、お互いにより深い理解と厚い友情を築き上げました。また、私たちは社会の現実に対する見方が似ていて、未来に対する構想を一緒に展開したいと考え、〈衆建築/衆産品〉(People’s Architecture Office / People’s Industrial Design Office)を創立したのです。

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質問2:PAOはプレファブ建築のシリーズを展開しています。その概要や目的を教えてください。

私たちのプレファブ建築は「プラグイン・ハウス」(「插件家」)と総称することができます。プラグイン・ハウスとは、PAOが開発した核となる基本部材、部材の接合、部材の関連部品、部材の取り付け方、そして最終的にできあがる製品そのものを含めた、ひととおりのプレファブ建築システムです。他の建築設計事務所と違って、私たちはこの部門をひとつのクリエイティブ産業(「創意産業」)の会社に転換しました。

プラグイン・ハウスの目的にはふたつのレベルがあります。
ひとつは製品のレベル。プレファブ化された建物システムをつくり出し、大衆生活に受け入られる製品を研究開発したいと考えています。この製品は、価格が高すぎてはいけませんが、しかし品質および使用者の実体験に対する高い要求に応えなければいけません。これが私たちの企業としての目標ですね。
つぎに社会のレベル。社会に適切な価額で提供することによって、高品質な建物製品を素早く広めることを狙っています。さまざまな人、さまざまな場面に対応できるようにしたいとも思っています。たとえば、歴史的市街地のリニューアルで力を発揮した「内盒院」(Courtyard House Plugin)(fig.1)は、プラグイン・ハウスを使って古い建物のなかに直接新しい家を建てることで、歴史的景観の保全、不動産の権利をめぐる紛争、建物構造上の難問、そして近隣関係などの問題を解決できるようにしたプロジェクトです。また、たとえば城中村★1のなかでプラグイン・ハウスを用い、廃棄された宅地を素早く居住空間に変換することができました[「上囲村のプラグイン・ハウス」文末附録参照](fig.2)。さらに、私たちがアメリカのボストンで進めている裏庭の使用面積を増やす製品は、アメリカのADU政策★2に対して、素早くこの区域の居住の空間の面積を増やし、収入の低い層であっても居住空間を手に入れる手助けとするものです。

fig.1 衆建築「内盒院」北京、2015年。歴史的街区のなかに位置する四合院(雑院)に対して、躯体に手を加えることなくプレファブユニットを挿入することで、居住環境を改善しようとすることが試みられている[提供:PAO]
fig.2 衆建築「上囲村のプラグイン・ハウス」広東省深圳、2018年[提供:PAO]

これらはすべてプラグイン・ハウスの社会的目標にかかわります。それはつまり、人々の住宅への要求を素早く解決することなのです。
一方、私たちはもっと大きなプレファブ建築システム──「プラグイン・タワー」(「挿件塔」)(fig.3)を展開しています。これは鋼材によるスペースフレーム構造とプラグイン・ハウスを結合したシステムです。その狙いは、ピロティをつくること、及びより大きな空間を実現することです。現在、4層までが可能になっています。プラグイン・タワーは土地の所有権が明確でないケースに応用して、従来の土地使用形式を保持することにも役立ちます。地上階のピロティ、スピーディな建設と撤去、そして太陽エネルギーの利用、雨水の回収、汚水・排水の自主循環などのエネルギー再利用技術などにも取り込んでいます。

fig.3 衆建築「湖畔のプラグイン・タワー」北京、2017年[提供:PAO]

訳注★1:城中村とは、「都市のなかの村落」のこと。「改革開放」以後の中国大陸の大都市圏では都市化が急速に進んだが、一部農村が開発されることなくそのまま都市領域のなかの特異点として残存する現象が生じた。こうして生まれたのが城中村である。都市の法律が適用されない城中村には、違法増築された建築物などによるスラム的状況が生まれ、社会問題化することになった。

訳注★2: ADU は、Accessory Dwelling Units (Secondary Suites, In-law Units など多様な呼称がある)のことで、主屋とは別に同一敷地内に設けられる別棟のこと。米国ではそれ自身の玄関、キッチン、バスルームを有するものがADUsと称され、州や自治体の用途地域制によって管理される。

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質問3: PAOがプレファブ建築シリーズを始めることになった背景、またシリーズ最初のプロジェクトについて教えてください。

私たちははじめからグローバル化のデザインに関心を抱いていました。建築設計は、歴史や感情や空間に注目するだけでなく、現代社会とより密接に関係づけることも必要だと考えています。現代社会はグローバルな社会であって、商業・工業・農業のすべてが高頻度で全球的に流通していますね。
ひとつ、例をあげましょう。中国はいま世界で最大の生産加工工場です。だから世界の他地域ではつくれないような難しいものもつくれる。ところが、中国の設計業界ではこのような事情を意識することがありません。私たちはこの問題に直接向き合いたいと考えているのです。私たちの設計につねにプレファブリケーション、工業化、システム化などが現れるのは、このためです。プラグイン・ハウスのシリーズもこのような考え方をもとに生まれました。本来、工業化の方法とは、より多く、より良い製品を、比較的安価に人々に提供できるようにするものです。携帯電話を例にとれば簡単に説明できるでしょう。携帯電話は工業化され大規模生産される製品で、生産量が多いためにコストを下げることができます。逆に、ハンドメイドの製品、たとえば受注生産の手工装飾品はひとつずつつくられ、手作業が膨大であり、非常に高価格で売られ、使用できる人数も限られますよね。
私たちは、建築設計はもっと大衆の方に向かうべきだと思っています。工業化の方式で設計・生産することで大衆に影響する。これが、私たちがプレファブ建築の研究・開発を始めた背景です。
プラグイン・ハウス・シリーズの最初の製品が「内盒院」でした。設計時に考えたのは、組立化(部品化)やプレファブ化の技術をつうじて、北京の旧市街地における居住の品質を速やかにレベルアップすることでした。私たちは古い建物を壊すことなく、工場でつくったプレファブ住宅をその内部に直接組み込んでいます。これらの建材を古い建物のなかにスピーディに組み立て、あっという間に建物の内部を一新することができました。これが、私たちが最初に開発したプレファブ建築を応用する機会でした。

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質問4:PAOがこれまでに手がけたプレファブ建築のプロジェクト数と立地はどのようなものでしょうか?

いままでに終えたプロジェクトは20件です。所在地は、北京(13件)、深圳(3件)、広州(1件)、[山東省の]煙台(1件)、アメリカ(2件)。

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質問5:これまでに実現したプレファブ建築プロジェクトのうち、代表的な事例をいくつか教えてください。

代表的な作品の設計についての説明を別途まとめましたので、文末[附録]を参照してください。

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質問6:プラグイン・ハウスは、設計、材料の調達、製材、運搬、施工といった建築の生産プロセス全体に関わる取り組みだと思います。製材や運搬、施工について具体的にどのような工夫を施していますか?

私たちのシステムは独自に開発したものです。建材そのものも私たちの研究成果であり、工場と提携して新しいサンドイッチ・パネル(「夾芯板」)を開発しています。この新素材は特許も取得しています。
加工についてもさまざまな改良を施しました。建材と製品をより高効率に生産できることを目的にしていますが、今後はユーザの使用上の安全面や防水性などのニーズも満足させたいと考えています。
もちろん物流と運送、施工と現場管理の面にも独自の方法があります。しかし、これでプラグイン・ハウス・シリーズが完璧なものになったとは思っていません。今後も研究を継続し、検査測定を行い、技術の更新も進め、より完璧なシステムにしたいと思っています(fig.4)。

fig.4 「内盒院」の施工プロセス。PAOが開発したパネルと接合方法を用いることで、非熟練者の手作業によって組み立てることが可能。狭隘な路地空間である胡同エリアでの運搬や施工作業にも適合させている。[提供:PAO]

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質問7:何哲さんは、著名な学者やデザイナーのレクチャー・プラットフォームである「一席」で講演をされていますが、そのなかで、プレファブ建築シリーズはPAOにとって最も「社会野心」的なプロジェクトであり、建築の製品化を介して普通の中国人の日常生活を改善すると話していて、とても印象に残りました。PAOが展開しているプレファブ建築シリーズは、一種の「社会実践 Social Practice」としての建築であると理解してもよいでしょうか?

PAOのすべての建築設計の仕事にはそれ自身の社会的目標があります。私たちは社会に影響──もちろん良い影響──を与えたいと思っています。共有と公平をもたらしたいし、貧富の格差を解消したい。
私たちのプレファブ建築はこのような思考カテゴリーのなかで設計されています。収入の高くない人たちでも、このシステムをつうじて高い質・量の生活空間を持つことができるのを望んでいるのです。たとえば旧市街地のリニューアルでは、普通の人民が素早く居住環境のレベルアップができるようにしたいし、村落部では普通の農民たちが都市と同じような高品質の生活環境を享受できるようにしたい。そのために私たちは[プラグイン・ハウスの]コストを抑えて、より多くの人たちが使えるようにしています。
一般に建築はオーダーメイド化されたものであり、大量の資源を集めた成果です。[しかし、]大量の社会資源をかけて精度の高い美しい建物をひとつひとつ注文生産するのは、決して簡単なことではないですね。一回つくるだけで終わりになってしまう可能性もあります。
しかし、もし「製品」という方法を使って、工業的に設計をし、また商業的に売り出せば、より多くの人たちが消費できるようになり、そうしてより多くの人たちに影響を与えることができます。得た利潤によってその製品をデベロップして再生産することもできる。私たちはこのような方法がよりサスティナブルであり、より社会の現状に適合していると考えています。

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質問8:中国でも日本でも、建築家によるリノベーション・プロジェクトが盛んですが、PAOのようにその手法を「システム化」「製品化」して社会的な波及力をもたせようとする姿勢は、稀有であるように思います。他方で、皆さんにとって建築の造形や美学的側面はどのような意味をもつのでしょう?

あなたのその概括は適切です。私たちの設計の多くはシステム化・製品化の原則を遵守しています。私たちにとって、設計の美学的範囲とは、設計したものだけに留まらず、そのプロセスや方法論をも含むものなのです──これが、私たちが好んでシステムをデザインすることを好む理由でもあるのですが。
たとえばプラグイン・ハウスでは、私たちは部材の取り合わせ、応用可能な環境、生産[方法]を含めたシステム全体をデザインしています。「デザイン」というのは全プロセスのなかで生まれるものであり、単なるアウトプットと見なすべきではないと私たちは考えているのです。それゆえ、私たちは造形性や審美性といった事柄はシステムと関係づけられているべきものだと思うのですが、それ[評価の基準]はいくつかの方向に分かれるでしょう。
ひとつは「参与性」。ひとつのシステムであるからこそ、[設計者以外の]他者もデザインに参加することが可能になります。たとえば「樊さんのプラグイン・ハウス」(Mrs. Fan’s Plugin House)(fig.5、文末附録参照)はそのような[参与の]成果なのです。この建築の形態は、周辺隣家の人たちの異なる要求があったのですが、彼らの意見もまたデザインの調整作業に取り入れたことで、最終的にこのようになりました。
もうひとつは「全体性」です。システムのなかで構成要素は様々に分割されます。そのため、異なる部材がひとつの建物に組み立てられる際にはうまく取り合わないといった問題が時々起きます。設計者の仕事は、それらが組み合わさるとき、形式性や空間性を含む全体性のある状態が確保されるようにすることです。これはシステム・デザインのより高度なレベルのことでもあります。

fig.5 衆建築「樊さんのプラグイン・ハウス」北京、2016年[提供:PAO]

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質問9:PAOが北京、あるいはその他の都市でプレファブ建築を展開するにあたり、中国の都市や建築に関連する法律などはどのような影響をもちますか?

プラグイン・ハウスの歴史的街区での応用である「内盒院」は、実際のところ、都市と建築の関連法規に対処するために生まれた製品です。北京の四合院地区の多くは景観保護区として保存されたものであり、建物の外観を変えることは許されません。ですが実際には、古い建物を撤去してそっくりな外観で建て替えるケースが少なからずあります。この場合、かたち(外観)だけ残し、内部の構造から材料まですべて取り替えられるわけですが、実際に住んでみると快適さにも使い勝手にも欠ける場合があります。私たちの「内盒院」は、このような「浪費」をせず、また歴史保全の規定にも一切触れないようにできています。既存の建物には手をつけず、ただ新しい住宅を内部に組み込むだけだからです。スピードも早いし、効果もとても高いものとなっています。

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質問10:近年、中国政府もプレファブ建築を推進しています。このような国家政策についてはどのように捉えていますか?

政策の方向性には私たちも賛同しています。というのも、中国の伝統的な建築生産には弊害も多いからです。現場でつくる部分が多すぎて、量産化することが難しいだけでなく、現場に重大な汚染をもたらしているし、品質も揃えることができていません。この問題は非常に大きいものです。ですから、プレファブ建築の方向性は間違っていないと思います。
しかし、実際に推進していく過程で出てくる問題は多いですね。たとえば、数年前まではプレファブリケーションといえば主にプレキャスト・コンクリートで、この数年では鉄骨造の推進がはじまっているのですが、設計基準が十分には統一されていないため、各会社が各自で努力していて、やはり無駄が多かったのです。また製品品質の評定基準も整っておらず、品質がばらばらになりがちでした。
ともあれ、私たちもまた[政府と同じように]プレファブ化された建築は今後大いに発展していく趨勢にあり、社会の発展にも符合すると考えています。ですから、より多くの建築家がこの流れに参加すべきだと思いますよ。

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質問11:PAOではプラグイン・ハウスのようなプロジェクトとは別に、数十万㎡という大規模な開発プロジェクト(fig.6)や、インスタレーションアートのような作品(fig.7)も多数手がけていますね。こうした事務所の建築的実践の総体のなかで、皆さんはプレファブ建築のシリーズをどのように位置づけているのでしょうか?

fig.6 衆建築「三千渡のレジデンス」山西省太原、2016年[提供:PAO]
fig.7 衆建築「ピープルズ・キャノピー」北京、香港、深圳、2015年[提供:PAO]

私たちの設計の範囲は比較的広く、大きいものは住宅小区★3、小さいものはインスタレーションアートといったところですが、私たちの考え方の中にプレファブやシステム化の手法はずっと存在しています。どの案件でもそれを議論してきました。それが比較的集中的に実践されているのがプラグイン・ハウス・シリーズなのです。プラグイン・ハウスは私たちの内側から生まれ出てきた成果でもあり、事務所が今後発展していく方向を代表してもいるため、重要度がより高い、ということになります。
またお話しておきたいのは、プレファブ建築は[私たちにとって]結果的な命題にすぎず、目的的な命題ではないということです。というのは、私たちがより重要視しているのは設計がどう社会に影響を与えうるか、ということだから。プレファブ建築はそのための道具ないし方法にすぎません。プレファブ建築をつくるためにプレファブ建築を開発しているわけではないのです。

訳注★3:中国では、集合住宅団地建設の増加にともない、「物業管理条例」(不動産管理法)に定める不動産管理の区域を「住宅小区(居住小区とも)」という。規模や共用施設整備などの具体的な基準は省級政府により定められる。

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質問12:最後に、プラグイン・ハウスの今後の展開について教えてください。

私たちはプラグイン・ハウスが将来、どこでもいつでも買うことのできる携帯電話と同じように、正銘正真の「製品」になるように願っています。たとえばある田舎に小さい敷地があったら、それを手軽に購入して、運んできて、すぐ建てれる……。こんなことが私たちの目標ですね。


【附録】衆建築(PAO)によるプロジェクト解説

1.「樊さんのプラグイン・ハウス」(Mrs. Fan’s Plugin House)北京、2016年
新婚の樊さんはごく普通の北京の家庭出身で、およそ彼女のような30歳過ぎの年齢で自分の力で北京城内で住宅を購入するのは夢のまた夢であった。
樊さんは西城区[北京市中心市街の西北部]の胡同[フートン]で育てられた。高校の時、家族が郊外で高層マンションの一室を購入したが、彼女は馴染めず、人情溢れる胡同での生活を懐かしんでいた。
そして彼女はプラグイン・ハウスのシステムを用い、旧家の古い平屋を改造することによって、子供時代に育った環境を取り戻すことになった。マンションの購入と比べ、改築費用は1/30ほどに節約でき、居住条件はより優れ、日常のエネルギー消費も大きく抑えることができた。通勤時間も4時間から1時間に短縮できた。元来、胡同には衛生・汚水システムがなく、公衆便所しか使えなかったが、プラグイン・ハウスは輸入された無水コンポスト・トイレを用いているので、厨房と衛生設備を装備することができた。
このプラグイン・ハウスは閉所恐怖症の樊さんのための特注品である。リビングの天井は元来の平屋の二倍近く高い。上部両面に高窓を取り付けたので太陽光が室内の隅々まで照らしてくれる。浴室上部には青い屋根が隠れていて、たとえ光化学スモッグの日でもこの小さい空間に青空を反射する。屋上のデッキは狭苦しい胡同の環境の中で樊さんが呼吸のできる小さな世界をもたらす。
プラグイン・ハウス・シリーズは「内盒院」[本文fig.1]から発展したものである。そのプレファブによるプラグイン・ボード(「挿件板」)のシステムは、優れた防水性能を備え、室外でも使うことが可能であり、また工事のときには他の構造は必要なく、板材自身が構造となる。プレファブ・パネルはそれ自体が構造・防潮・保温・設備・室内外の仕上げの機能を兼ね備えるが、厚みはわずか50mmである。パネル間の接合はロック・フックを用いており、何人かの素人が簡単な道具を使えば一日以内で建設を完了させることが可能だ。
「樊さんのプラグイン・ハウス」の建築形状は、近隣環境と直接的に関係する。すなわち、新しい建物が近隣のあらゆる採光や視線や通風などに影響を及ぼさないように、場所ごとに異なるセットバックや切断が施された。建築の組み立て作業中にも、近隣から新たな改変の意見が随時出きたのだが、プラグイン・ボードは現場で簡単にカットできるので、こうした問題への対処も容易だった。
プラグイン・ハウスは、絡み合った社会的な諸力が多くの現実的な制限のなかで産み出した新しい都市の情景である。居住者が負担可能な金額で居住の品質を着実に向上させ、樊さんのような若い世帯がもともと住んでいた胡同での生活に回帰し、古い市街地での新生活を楽しむことを可能にするのだ。

衆建築「樊さんのプラグイン・ハウス」北京、2016年[提供:PAO]

2. 「上囲村のプラグイン・ハウス」(Rural Plugin House)広東省深圳、2018年
「上囲村のプラグイン・ハウス」は古い客家住宅の再生プロジェクトである。村がこの数十年に経験してきた経済衰退のため、数百年の風雨を経てきた家々は空き家になり、放棄されていた。深圳周辺の急ピッチな都市化は上囲村のような村々を飲み込み、それらを徐々に城中村に変えるか、新しい発展の波に包囲された孤島村へと変化させつつある。村人はより良い生活を求めて上囲村から離れていき、やがて村の半数以上の家屋が放棄されてしまった。
現地の政府すなわち「上囲村合作社」は、地元のアーティストや職人が新興コミュニティを組織することを支援し、促進するような新たな方法の模索に全力を尽くしている。そして、「楽平基金会」と「未来+」(現地の非営利組織である)の支援を受け、政府とPAOは一緒にパイロットプロジェクトを立ち上げることになった。村政府が屋根崩壊などの不適切な物件を修理する責任を負うのだが、このような家屋のリノベーションは困難で、何をしても近隣の家屋の構造に影響しかねない。こうした問題を解決すべく、プラグイン・ハウスにより、もとの構造は保存しつつ、現存建物の内部に新しい構造を追加することになった。
「上囲村のプラグイン・ハウス」はモジュール化したプレファブ・パネル構造を採用し、構造コネクタをパネル内部に組み込んでいるため、専門作業員でなくでも簡単な工具で一日で完成できる。工業化された生産により、高品質の部材で高いエネルギー効率を得ることができ、生産規模の大きさによって低価格にすることが可能である。
パネルは量産とはいえ、個々のプラグイン・ハウスのプロジェクトでは敷地に応じてカスタマイズが可能である。[上囲村における]「黄氏のプラグイン・ハウス」は15㎡の小型空間に適合したもの。既存の家屋は屋根が一部残るため、内蔵させるプラグイン・ハウスは構造的補強や保護としても機能し、古い住宅に起こり得るいかなる構造的問題も解決できる。また、余分の空間を増やすために寝室は中間階に配置し、角窓は崩れた壁の上に突き出すことで室内から村の全景を見ることができるようにした。トップライトをもとの屋根の位置に設置し、自然光を取り込む面積を増やしている。「方氏のプラグイン・ハウス」の面積はやや大きく、約20㎡で、トップライトにより太陽光を南面から後方の寝室に取り込む。どちらの家でも、プラグイン・ハウス・システムは冷暖房可能な高機能の小さなセパレート型エアコン、現代的なキッチン、そし独立したてコンポスト・トイレを加えることで、生活品質の向上を図っている。

衆建築「上囲村・黄氏のプラグイン・ハウス」広東省深圳、2018年[提供:PAO]
衆建築「上囲村・方氏のプラグイン・ハウス」広東省深圳、2018年[提供:PAO]

3. 「衆空間」(The People’s Station in Yantai)山東省煙台、2017年

「衆空間」は煙台市広仁路の歴史文化地区に位置し、市内のハイテク商務区とわずか通り1ブロックしか離れていない。[このプロジェクトで、]私たちはこの文化的中心地が「紐帯」のようなものとなり、宙に浮く軽やかな構造や半屋外の空間、そして広々としたエントランスによって人々を寂しい旧都市中心部の探索と発見へと引き込み、新たな活力を刺激できることを期待した。
プロジェクトの工期は大変切迫していた。そこで私たちが独自に開発したプレファブ・システムを用いて、わずか3ヶ月で「衆空間」プロジェクトの設計案作成から組立工事までを完成させた。
「衆空間」の内部は、天井上部のピラミッド型トップライトから差し込む自然光に燦々と照らされた、活動のためのスペースである。展示ホールの上部は広く、斜め上部に図書館・閲覧室・小劇場といった第2・3層の空間が入り組むように配される。各層のバルコニーからは周辺の歴史建築と遠方の海の景色を俯瞰できる。
この建築の接地階には、「衆行項」(People’s Canopy)[2015年に制作された可動式テントのアート装置]と数台の三輪住宅車両といった、軽快な付属装置が外付けされている。建築本体と繋がっているときにはこれらの装置はアコーディオンのように展開でき、建築の面積と機能の多様性を拡げる。またこれらの装置は簡単に折り畳むこともでき、建築本体から切り離して他の場所に乗っていくことも可能である。まるで人工衛星のように、煙台市内の公共活動に向かない地域にも文化情報を送ることができるのだ。
「衆空間」のオープンニング・イベントは、マス・インターベンション(「衆介入」)をテーマにした〈衆建築/衆産品〉の設計作品回顧展であった。しかしこの建築自身も、「衆行項」やプラグイン・ハウス・システム、三輪住宅車両など、PAOの過去7年間の代表作を集めたものでもある。このコンプレックス建築の設計コンセプトは、煙台市が市民と密接に連携するための新しい活力を与え、この地域のより広い社会的つながりを促すだろう。

衆建築「衆空間」山東省煙台、2017年[提供:PAO]

4. 「湖畔のプラグイン・タワー」(Lakeside Plugin Tower)北京、2017年
「湖畔のプラグイン・タワー」は480㎡の住居混合空間である。中央政府が設立した国家級の「モデル都市」である「雄安新区」のパイロット・プロジェクトとして、深圳建築科学研究院との協働で開発した長期的にサスティナブルな建築設計と都市発展の解決法を提供するアイデアである。雄安新区は北京から西南100kmに位置し、北京の非首都機能を緩和させる役割を引き受ける新区であり、その目的は、京津冀[北京・天津・河北省を包括する都市圏域)の都市配置と空間構造の改善、そして「イノベーションの育成と新しい駆動力の発展」にある。新区の住宅価額の合理化を保証するため、すべての住宅は国が所有し、政策補助金も受けられる。100%クリーンエネルギーを使用し、面積10%の永久農地を保全するなど、新区は低炭素エコシティ創造に全力を尽くしている。
建築物の土地への影響を軽減するため、湖畔のこの亭は分布式コンクリート基礎杭上に設置されている。建物全体は地面より一層分高くすることで、雨水が地下に浸透できるようにした。そのデザインは「スポンジ・シティ」[雨水を活用することで気温を下げる都市]の設計理念に符合するものであり、都市の溜水と地表汚染を減らすため、アスファルトでつくられた都市の再考を試みるものである。建築を高く持ち上げたのは、同時に地面の植被への日照と成長に十分に配慮したためである。
建物はプレファブ技術を用いてコストダウンと施工効率のアップを図っている。建築の外装は、建物本体の鉄骨造と切り離したプラグイン・パネル(「挿件面板」)を採用。モジュール化されたパネルによって、建物が使用される寿命のあいだ、最大のフレキシビリティが得られる。パネルを接合するための偏心ロックはパネル内部に組み込み、熟練職人でなくでも簡単な工具によって手で組み立てられる。よって時間の経過とともに、建物の一部を他の部分に影響を与えることなく必要に応じて拡張ないし移動が可能である。このような柔軟性は建築使用の可能性を大きく拡張するとともに、将来の維持コストも軽減するだろう。
この建築はニアリー・ゼロ・エネルギー・ビルディング(NZEB)の基準に従って設計された。屋根は太陽光エネルギー・パネルに覆われている。プラグイン・パネルの外装面は高効能の剛性絶縁材料を採用し、床には暖房を埋め込み、掃出窓が最大限の自然換気を可能にする。また、各フロアは垂直循環機能を含むサビース・タワーと持続可能な汚水浄化槽に接続されている。

衆建築「湖畔のプラグイン・タワー」北京、2017年[提供:PAO]

建築討論

建築をめぐる幅広い批評的議論のプラットフォームを提供する日本建築学会のウェブマガジンです。

何哲+ジェームス・シェン+臧峰(衆建築)

Written by

カ・テツ(He Zhe)、James Shen、ゾウ・ホウ(Zang Feng)/2010年に建築ユニット「衆建築」(People’s Architecture)を共同設立。「大衆のための設計」を主題として、プレファブ建築やプロダクトデザインを実践している。主な作品に「内盒胡同」「小樊的挿件家」「衆空間」など。

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