『建築討論』第5期──制作方針について

リアクションの空間として

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建築討論
Jan 11, 2022

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日本建築学会のウェブ媒体『建築討論』は2022年1月より第5期がスタートする。あらためて振り返っておくと、第1・2期(2014〜2017年)は布野修司が、第3・4期(2018〜2021年)は青井哲人が委員長をつとめる編集委員会によって制作されてきた。第5期(2022〜2023年)では市川紘司が編集委員長をつとめる。編集委員会の構成はこちらを参照されたい。

第5期の制作方針はこのようなものである。まず、第3・4期では月刊誌的に毎月特集を制作していたが、これを年間4本と減らす。そしてぎゃくに、シリーズものの記事を大幅に増やす。前委員会から継承した「書評」とオーラルヒストリーの「建築と戦後70年」にくわえて、建築展のレビューとインタビューをおこなう「展評」、海外のあたらしい建築論や都市論を要約的に紹介する「サマリーズ」、そして多様な執筆陣による「連載」をもうけた。

以上のような制作方針を立てたのは、本誌を建築系コンテンツのレビューの空間として設定してみたいと考えたためである。

建築系メディアの衰微がさけばれて久しいが、他方で、建築や都市にかかわるコンテンツはかわらず多く生み出されている。建築書は隣接領域をふくめればなお充実しているし、建築展はこの10〜20年でむしろ増えていると言えそうだ。海外に目を向ければ、21世紀に入ってからの時代の変化のなかで、さまざまな議論や実践が生まれている(翻訳書を出す体力が落ちたことでキャッチアップできていない)。こうしたすでに世に出回っているコンテンツにリアクションし、記録とレビューをすることをひとまずは優先してみたい、というのが、今期の『建築討論』の趣旨である。そのためにレビュー的なシリーズ記事を増やした。特集の数を減らしたのは、たんに予算と人員がかぎられているためである。

また、今期のあたらしい試みとして、連載の企画公募を昨夏(2021年7〜8月)におこなった。結果、我々の予想をはるかに超える60以上の企画をご応募いただいた。惜しくも採用できなかった方々には個別にメールを差し上げたが、あらためて感謝申し上げる。採用企画は6本となった(当初は3本を予定していたが倍にした)。これに特命で依頼した2本をくわえて、計8本の連載記事が、これから一年間、それぞれ隔月で更新されていく。各連載の展開を追っていただければ幸いである。なお、2023年にも連載企画の公募はおこなうことを予定している。追って告知する。

以上のシリーズものの記事は、季刊誌的に年4回更新される特集とは別立てのスケジュールで、逐次更新されていく。たとえば「書評」は毎月第1・3週の金曜日、「サマリーズ」は第4週の月曜日、というように。どんぶり勘定だが、おそらく週に2本くらい、あたらしい記事が出る。年間では計100本ほどの記事が公開されるだろう。月刊誌的にドカン!とまとめてコンテンツが公開されるのではなく、壊れた蛇口がチロチロと水滴をこぼすような、常時なんらかあたらしい記事がでているような状態。そういうメディアとなることを今期の『建築討論』はめざしている。読者諸氏には定期的に本誌を訪れて、記事を閲覧していただければと思う。また、媒体全貌が見わたしやすくなるよう、あたらしく総目次ページをもうけた。■

(2022年1月13日追記)なお、今期も引き続きmediumをプラットフォームとして使用していく。記事の種類が増えるので、トップページでの視認性を高めるべく、サムネイルデザインを新調することにした。デザインは江川拓未氏と斧澤未知子氏による。

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建築討論委員会(けんちくとうろん・いいんかい)/『建築討論』誌の編者・著者として時々登場します。また本サイトにインポートされた過去記事(no.007〜014, 2016-2017)は便宜上本委員会が投稿した形をとり、実際の著者名は各記事のサブタイトル欄等に明記しました。