特集趣旨

建築家は、建築を設計する一人の作家であり専門家である。もちろん。他方で、建築は、建築家の手を離れて社会的に生産され管理・運用される事物である。それもまた然り。

現在という時間が、社会における建築と建築家の存立のしかたの大きな変革期であることは、おそらく誰しも感じているだろう。リノベーション、まちづくり、デジタルファブリケーション、評判社会、アカウンダビリティやエビデンスの要求…等々、その変革をうながす力はすぐにいくつも思い浮かぶ。このとき、編者が感じるひとつの徴候は、建築家と建築の「作家性」や「作品性」や「切断」や「フォルム」を忌避し、むしろ社会的諸関係のなかにそれらを(プロセスにおいてもアウトプットにおいても)溶かしていこうとするムードである。が、そのような思考が果たしてどのような出口をもつのか、疑問もある。重要であるのは、建築及び建築家と社会の込み入った関係性に対する現実的な認識と、そうした関係性のなかで建築が生み出されるとき、建築家が結局のところいかなる局面でどのような役割を演じ(てい)るのかを、丁寧に見定めることでしかないのではないか。そのためには、ひとまず、社会性と作家性、作為と自然、切断と連続、フォルマリズムとソーシャリズム(あるいはリアリズム)、能動と受動、私と公共といった、固定化された二項対立的認識をキャンセルしたほうがよいだろう。

本特集はそのための手助けになりそうな概念をまとめたキーワード集である。挙げた概念は11ある(まだまだ取り上げるべき概念はあるが、差し当たり)。執筆者の方々には、単なるキーワード解説にとどまることなく、各々の意見にもとづく踏み込んだ検討・分析を執筆いただいた。またその際、各概念の考えるうえで有効となる文献にもいくつか具体的に触れていただくように依頼した。本特集をブックガイド的に使って気になったキーワードを深掘りしてもらえればとも考えている。(K.I)


KT editorial board

Written by

建築討論委員会(けんちくとうろん・いいんかい)/『建築討論』誌の編者・著者として時々登場します。また本サイトにインポートされた過去記事(no.007〜014, 2016-2017)は便宜上本委員会が投稿した形をとり、実際の著者名は各記事のサブタイトル欄等に明記しました。

建築討論

建築をめぐる幅広い批評的議論のプラットフォームを提供する日本建築学会のウェブマガジンです。

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