建築作品小委員会選定作品/FUJIKI Renovation, SHIGARAKI ART COMMUNICATION Keita Ishino / MEIZANGAMA , ROOF/石野啓太

AT editorial board
Mar 22, 2017 · 7 min read

“地域”の新しいエリアイメージを発信する編集ユニット「ROOF」

歴史のほとんどを陶器と共に歩んできたまち「信楽」。一説には、約1300年前より続く産地と言われ、日本六古窯の一つに数えられます。今日まで連綿と続いてきた信楽の陶器文化は、時代のニーズに呼応するように多様な陶製品を生み出し、今日までその文化を受け継いできました。中でも、タヌキの置物はあまりにも有名で、信楽は陶器のイメージを中心とした一定以上の知名度を持つまちです。

しかし、それは一方でこのまちのイメージを固定化してしまって久しく、地場産業である窯業が低迷を続ける今、もう一度原点に立ち返ったまちの考え方が必要なのではないでしょうか。

「ROOF」はこのまちの本質を、陶器だけでない1300年のものづくりの暮らしの歴史に裏打ちされた個性豊かな文化蓄積・土壌にあると考え、地域資産の「編集」「みたて」という行為を通して、地域固有の新しい価値や魅力を再発見することに取組んでいます。

ここに暮らし働く若手の私たち自身が、誇れる地域としての暮らしの満足感を高めること。そのための見え方、あり方、伝え方をデザインすること。こうした“自分ごと”の興味の先に、新しい地域像と共感を見出していくことを目的としています。

FUJIKI Renovation(2015)

まちの中心部で長年空き店舗になっていた陶器問屋「藤喜陶苑」を改修し、ギャラリーおよび地域のまちづくり拠点として再生するプロジェクト。「文化・福祉・教育」をテーマに、陶器産業だけでない地域の魅力ある資源を発信したり、これからのまちを考えていける場所をつくるために改修したプロジェクトである。まちなかに拠点をもちたいという思いがあった滋賀県立陶芸の森の創立25周年事業の一環として参画。「土と手プロジェクト」の企画と「FUJIKI」の設計施工を担当した。
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所在地:滋賀県甲賀市信楽町
竣工:2015年
主要用途:ギャラリー、イベントスペース、地域情報発信拠点など
クライアント:滋賀県立陶芸の森
設計・施工:ROOF +滋賀県立大学川井操研究室、地元有志
施工協力:株式会社トヨケン
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空き家となっていた改装前の藤喜陶園エントランス
空き家となっていた改装前の藤喜陶園エントランス
空き家となっていた改装前の藤喜陶園エントランス
セルフビルドによる解体の様子
セルフビルドによる解体の様子
空き家となっていた改装前の藤喜陶園エントランス
セルフビルドによる施工
セルフビルドによる施工
セルフビルドによる施工
改修後のエントランス
改修後のエントランス
改修後のエントランス
内観:エントランスからを見る展示会風景
内観:エントランスからを見る展示会風景
内観:エントランスからを見る展示会風景
前面道路より見るFUJIKI全景
前面道路より見るFUJIKI全景
前面道路より見るFUJIKI全景
内観:壁紙を剥がし既存モルタル壁を生かしている
内観:壁紙を剥がし既存モルタル壁を生かしている
内観:壁紙を剥がし既存モルタル壁を生かしている
夜のエントランス
夜のエントランス
夜のエントランス

SHIGARAKI ART COMMUNICATION(2016)

創作行為そのものが、コミュニケーション

異なる背景を持つ二人の作り手がペアとなり、創作行為を通じた「言葉に頼らないコミュニケーション」から生み出す作品やそのプロセスを展示する企画である。人と人とのつながりの中から生まれる「アート」を、二つの創作プロジェクトを通して紹介した。(平成28年度地域の元気創造・暮らしアート事業採択)

01.社会福祉法人信楽青年寮 作家 × 信楽在住作家
陶芸の森事業の一つであるアーティスト・レジデンスを経て信楽に拠点をおくアーティストや地元出身のオブジェ作家と、信楽青年寮で制作活動されている障がい者の方が2人1組となって、共同で作品を制作。異なる背景をもって作品を制作している2者が、創作というコミュニケーションを通して、どのように共鳴し合いながら作品を制作していくのか。その過程を記録するとともに、アールブリュッドというジャンル作品への一つの新しい試みでもあった。

展示会では、できあがる作品だけでなく、作品がつくられるまでにかわされるコミュニケーション過程そのものを大切にしている。初対面の出会いからマッチング、お互いの作風の理解や制作のリズム、癖など…。創作する過程で交わされていくコミュニケーションを展示構成・映像などで視覚化し、作品が立ち上がってくるまでの背景を丁寧に汲み取ることを心掛けた。そこにこそ、信楽固有の価値観に満ちた世界が溢れている。

02.アメリカ・ミシガン大学芸術部 × 地元小学校
信楽の小学校の授業では、昔から陶芸があたり前のようにある。現在では、そうしたカリキュラムが英語の授業と結びつき信楽独自の教育プログラムとして発展している。

きっかけは、毎年交流を目的に信楽に訪れるアメリカ・ミシガン大学の芸術学部の学生らが3年前より、「Art for Social Change: Japan」をテーマに、信楽地域を学びの舞台と位置付けたことにはじまる。このプログラムでは、子どもと学生が2人1組となり、「未来」「友情」など抽象的なテーマを手掛かりに、粘土を使って共同作品を制作していく。英語に親しむという目的だけでなく、ジェスチャーや絵を描くなど、言葉に頼らないコミュニケーションを重ねたアート教養も兼ね備えるプログラムとなっている。
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会期:2016年10月
企画・主催:ROOF
協力:社会福祉法人しがらき会信楽青年寮、滋賀県立陶芸の森、小原小学校
藤原純/陶芸家、田尾晃/陶芸家、井掛紗百合/陶芸家
助成:平成28年度地域の元気創造・暮らしアート事業採択(滋賀県)
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「SHIGARAKI ART COMMUNICATION」ポスター
「SHIGARAKI ART COMMUNICATION」ポスター
「SHIGARAKI ART COMMUNICATION」ポスター

石野啓太
1985年滋賀県甲賀市信楽町生まれ。2010年滋賀県立大学大学院環境科学研究科博士前期課程修了。2010年建築設計事務所OpenA。2012年−(株)明山窯(ブランドマネージャー担当)。2016年より、信楽を「再編集」するまちづくり任意団体ROOFを設立、共同代表を務める。

建築討論

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建築討論委員会(けんちくとうろん・いいんかい)/『建築討論』誌の編者・著者として時々登場します。また本サイトにインポートされた過去記事(no.007〜014, 2016-2017)は便宜上本委員会が投稿した形をとり、実際の著者名は各記事のサブタイトル欄等に明記しました。

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