[g] 表面2:建材

038|201912|特集:福島、風景と注釈

KT editorial board
建築討論
4 min readDec 1, 2019

--

いくつかの地方都市、とくに山間部の集落と比較して新しそうな家が多く目についた。バブル崩壊から減少傾向にあった福島県の住宅着工件数は震災直前において、1万件を下回っていたが、震災後は平成25年より1万5千件前後を推移している。サイディングを中心とした建物の外観は、私たち外部の人間が期待してしまう、いわゆる田舎的な風景の消失である。しかし住宅の更新により、集落の営みは生きながらえる可能性も高くなるだろう。(編集部K)

photo g_01|レンガ調のサイディング。除染のために建て替えられたものが多く、まあたらしい風景が集落に広がる。|葛尾村|2019年10月20日撮影(K)

photo g_02|ロードサイドの車窓から撮影した家屋。|2019年10月20日撮影(K)

photo g_03|スマートグリッドを採用した災害公営住宅。太陽光発電のパワーコンディショナやLPガスのスマートメーターが壁面に並ぶ。|浪江町|2019年10月21日撮影(K)

仮設的な建築・構築物と自然が織りなす風景も特徴的であった。震災後9年を経ようとして、様々なタイムスパンが建材の表面にも現れている。

photo g_04|減容化処理施設に付属する仮設灰保管施設のテント膜。遠景ではミニマルな表情を見せる膜も、近づくと経年変化が見られる。福島県復興推進計画に基づく応急仮設建築物で、建築基準法による存続期間を超えて、令和6年まで活用期間が延長されている。|飯館村蕨平|2019年10月20日撮影(K)

photo g_05|防潮堤の建設現場やフレコンバッグの仮置場で見受けられた白い仮囲い。しばしば長大な距離におよび、ランドスケープを形作っていた。地形に追随して仮囲いの上端部がユニットごとに段差を生む。|2019年10月21日撮影(K)

photo g_06|東日本大震災に際して福島県内でログ工法の仮設住宅が約600戸建設された。一部は仮設住宅としての役目を終え移設され、避難を余儀なくされ他地域に暮らす人々の短〜中期の宿泊施設として利用されている。二地域居住を支え、人々の故郷へのつながりを維持する。|浪江町大字高瀬桜木|2019年10月21日撮影(K)

--

--

KT editorial board
建築討論

建築討論委員会(けんちくとうろん・いいんかい)/『建築討論』誌の編者・著者として時々登場します。また本サイトにインポートされた過去記事(no.007〜014, 2016-2017)は便宜上本委員会が投稿した形をとり、実際の著者名は各記事のサブタイトル欄等に明記しました。