建築家自邸シリーズ 004 梅沢良三邸/Notes of design about IRONHOUSE/梅沢良三

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Feb 10, 2017 · 4 min read

林昌二さんに自邸を見ていただいたことがある。その時、椎名さんが、「梅沢さんは建築家ですよ」と持ち上げたところ、林昌二さんは「エンジニアとは本来そういうものなのではないでしょうか」と応じられた。住宅の構造は一般的には骨格であり、仕上げなくして建築足り得ない。けれどもこの住宅は構造のみで建築になっている。正確には建築になるかどうかの実験住宅であった。ではなぜこのような試みを行ったか。話せば長いが私はこの住宅を数世代先の子孫の代まで残したいと考えた。そのためには、通常の住宅を遥かに超える強度と耐久性を持ち、メンテナンス野用もかからない建築構法を考案する必要があった。耐候性鋼板を用いた理由は100年から200年耐えられる材料で現実的なものが他に見当たらないからだ。また、建築は時を経るごとに味わいの深まるものでありたい。耐候性鋼板はその要求を満たす材料でもあった。ここで用いられた一枚のサンドイッチパネルは建物を支える構造としての性能に加え、防水性能、耐久性能、断熱、遮音と言った建築の基本性能をも有している。すなわちこのパネルを組み合わせて空間を創れば自動的に建築が成立するのである。

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実は5年ほど前に竣工した、IRONY SPACEと名付けられた自社のアトリエで、サンドイッチパネルを用いた最初の実験が行われた。鉄の表面温度は真夏の南中時に摂氏60度に達する。ヒートブリッジによる断熱性能に問題を認識し自邸では改善を試みたが、その他の基本的性能に問題が無いことはこの時に確認された。この経験を経て現代住宅のありようについて考察したものが「住宅シェルター論」であった。自邸はこの論の実践として計画されたが最大の課題は技術的問題よりも建築をいかに創るかであった。すなわち、鉄の素材感の表現、モノコックな空間の構築など建築としての価値にこだわった。また、超長期住宅は機能の可変性を持つことはもちろん、居心地のよさや住むことの喜びに加え、周辺環境への貢献など公共性の配慮が重要であることを認識した。

これらの課題に対応していただくため建築家椎名英三さんに設計をお願いした。住宅は住んでみないとわからないことが多い。竣工後ほぼ二年経過したので、実験住宅としての生活体験の一部を総括してみたい。まず、地下に住むことの快適さは予想以上であった。夏涼しく、冬暖かく、木枯らしも、台風も地上より穏やかである。プライバシーが高く、静寂である。地下に居間、食堂など、親世帯の日常生活の中心を計画し、アウタールームと称するサンクンガーデンをL型に囲み、総掘りの地下室を中庭と一体化する発想は延べ床面積の緩和規定による土地の有効利用にあった。さらにアウタールームは外部階段を通じ、屋上庭園と連結され、外部階段はサービスヤードの通用口から外部に通じている。このようなアウタールームを中心とした外部動線計画は平面的にも立体的にも空間の広がりを誘発し、狭い敷地の閉塞感を緩和している。

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また、日本の住宅が長寿命化しても景観に配慮した設計がなされなければ町並みの改善にはつながらない。IRONHOUSEの屋上庭園は段々畑状の地形を模し、植栽の景観を周辺に住む方々に提供する考えとした。日常的な植栽の手入れ、雑草取りや植え替え、土の補充等を頻繁に行うために外部階段の必要性は予測したが日常的な実体験からも実感した。日本の戸建住宅が抱える問題は多い。住宅の寿命が100年以上になれば多くの問題が解決する。日本の町並みがヨーロッパと比較できる景観に変貌するためには現状維持では不可だ。

建築討論

建築をめぐる幅広い批評的議論のプラットフォームを提供する日本建築学会のウェブマガジンです。

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建築討論委員会(けんちくとうろん・いいんかい)/『建築討論』誌の編者・著者として時々登場します。また本サイトにインポートされた過去記事(no.007〜014, 2016-2017)は便宜上本委員会が投稿した形をとり、実際の著者名は各記事のサブタイトル欄等に明記しました。

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