サッカーとフェアプレー

イシケン
イシケンブログ
3 min readJun 29, 2018

今W杯予選リーグ、日本がフェアプレーポイントで決勝トーナメントに勝ち上がったことへの賛否両論を見かける。

これについては定められたルールで結果を出すこと以上でも以下でもないのだが、そもそもサッカーにおける「フェアプレー」とは何だろうか。

2015年、FIFAは大規模な不正によって関係者が処分された。本ロシア大会と2022年カタール大会でも不正招致疑惑が持ち上がっているし、そもそも彼らは長きにわたって汚職が取り沙汰されて来た組織だ。

ネイマールやメッシ、C.ロナウドは相次いで脱税によって当局から捜査を受けている。世界的なスーパースターがこの有様では、サッカー界全体の倫理観が高いと言えないことは明白だろう。

インテルやACミランといった名門クラブは、中国企業によって続々買収されているが、こうした潮流はサッカーが一大ビジネスであり、政治的背景が持ち込まれやすい状況を示唆している。

また、2015年の不正によってFIFAからいくつかの巨大スポンサーが撤退したことと引き換えに、今回のW杯にはロシアの国営企業ガスプロムが公式スポンサーとして名を連ねている。同社はウクライナ紛争などでも悪名高く、プーチン大統領の側近が関与していることでも知られる。2014年のソチ・オリンピック以降、世界的なスポーツの祭典が政治的思惑に巻き込まれることへの批判が再燃しているが、今回のW杯も例外ではない。

サッカーは世界的なビック・ビジネスであり、その象徴がW杯だ。良し悪しはさておき、選手もクラブも、そして連盟も金銭的インセンティブが強く働く構造になっており、政治的背景も如実に絡んでくる。

すなわち、試合におけるフェアプレー云々以前に、サッカー界という一大産業におけるフェアプレーの方が大きな問題なのだ。

乱暴に言ってしまえば、試合における公正性は、ゲーム自体のルールと審判によって担保されている。ルールを逸脱しない限りにおいては、どこまで戦略的な動きをしようと、倫理的に疑問が呈される戦術を繰り出そうと、合法である。

しかし連盟など、サッカー界全体が不正にまみれてしまえば、彼らの叫ぶフェアプレー精神は空虚に響くことになってしまうし、彼らが提示する仕組みやルール自体に疑義が呈されることになるだろう。

ここ数年、ヨーロッパの主要リーグでは人種差別や移民に関する議論が沸き起こっている。EUの難民問題は、ドイツやフランスを始めとした各国の主要な政治アジェンダになっており、もともと移民選手が多いサッカー界は特に影響を受けやすい。

各リーグやクラブチームは、人種差別的な行為に対しては厳しい対応を示しているが、各国で排外主義的な政党・勢力が勢いづいた2015年前後には、ナショナルチームが多くの移民によって構成されていることに批判が集まった事例もある。

こうした現状において、連盟やクラブチームが公正性を示すことの重要性はますます高まっていると言える。サッカーが巨大ビジネスであることは、優秀な選手を育成し、競技自体の環境を整えていく上で素晴らしいことではある。

しかし、その結果として業界自体のガバナンスに問題が生じるならば、その在り方に問題があると言わざるを得ないだろう。

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マイナースタジオという会社をやってます。