子ども食堂と営業許可の話

結局「保健所的」には何がオッケーなのか?

森哲平
徳島に子ども食堂をつくろう!
6 min readNov 2, 2016

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徳島市内の保健所でいただいた食品営業許可に関する資料

東新町子ども食堂をクローズし一から再スタート。というわけで、せっかくだから、初心に帰って、もう一度、大事なところから全部再確認していこうと思い、徳島市内の保健所を訪ねました。「どういう形式だったら子ども食堂は開催できるの?」って話です。

結論から言うと、子ども食堂であろうが何だろうが、原則、食品関係の営業に該当します。つまり、専用の厨房があり、シンクがあり、冷蔵庫があり......といった条件を満たすことが必要になります。いずれにせよ、必ず事前に保健所に相談に行くべきです。これは徳島県に限らず、全国共通の原則です。

当たり前だろ、って思われるかもしれませんが、これがネットの情報を見てると結構曖昧なんです。

「炊き出しであれば許可が要らない」「給食という扱いにして給食届けを出せばOK」「子どもにも料理をさせて"調理実習"という形であれば可能」などなど。実際にそういう情報を目撃していたので「子ども食堂をしてみたい」と相談を受けた際には、ぼくらも「炊き出しならOKらしい」などと返したりしていました。でも、そこらへんもきちんと確認しておきたいなと思い、今回、再度、保健所に相談に伺いました。

保健所との円滑にやりとりするには?

保健所の方には大変失礼ながら、率直な意見を申し上げますと、相談、非常にストレスフルです。

というのも、こちらは「子ども食堂をしたい。どういった方法なら可能か。できるだけたくさんの可能性を知りたい」と思っているのですが、保健所側が知りたいのは「具体的に、どこで、誰に、何を、どのように提供するのか。それを教えてほしい」という話だからです。教えた内容に対し、その条件で実際に提供可能かどうか、前例に基づき、イエスかノーか「判定」だけしたい、というのが本音のようです。

つまり、保健所は相談者を警戒しているのです。そりゃ警戒もするよな、と思いました。子ども食堂のような動きは基本好ましいと思ってくださっているようですが、食中毒を起こされたら元も子もありません。相手は食品衛生の素人ですから、保健所が言ったことを間違って理解する可能性もあります。それをまたネットに書かれたりすると誤解が広まる恐れも。そんな中「どんなやり方なら、子ども食堂は開催できるのか」と聞かれても、「何とか抜け道を探そうとしてる」ようにしか見えないのではないでしょうか。

そこで、保健所の担当者に、自分たちは決して、法の網の目をかいくぐって何としてでも子ども食堂をやりたいわけではないこと、何より衛生的に安全に食品を提供するために、食中毒を防ぐために知恵を貸していただきたいこと、そのためにも明確な原理、考え方について、理解できるように説明していただきたいことを、お伝えしました。

何としてでも保健所をパスして子ども食堂を開催したい自分たちと、絶対に食中毒を起こして欲しくないからガチガチな「役所対応」を続ける保健所......みたいな対立は不毛ですし、個人的にもこの手のやり取りは大嫌いです。

でも、考え方を変えてみれば、「リーガル、かつ、衛生的で安全な食品提供」という目的は共通です。共通の目的を示し、こちらも決して対立しているわけではないことを最初に示すとコミュニケーションが取りやすいと思いました。

場所で許可を取るか/人で許可を取るか

子ども食堂を開催するのであれば、無料だろうが有料だろうが、それは不特定多数に対して食品を提供する「営業」に当たるため、「営業許可」が必要になります。営業許可を受けるためには、「子ども食堂を開催する場所」が、条件に適しているかどうかを判断されます。

基本、食品関係の営業許可は「場所」を基準になされるわけです。ただ、これとは別に「人」に対して許可する形式もあります。それが露店営業です。

露店営業であれば、許可を受けた人は、徳島県下一円で営業が可能です。つまり、その場所の所有者、管理者が「提供してもいいよ」と言ってさえすれば、特定の品目に限り、食品を提供することが可能になります。これなら、その場所にシンクや冷蔵庫のような、大型でお金のかかる設備がなくても「子ども食堂」ができます。

自分たちがその時検討していたのは、キッチンも調理スペースもない、私設の図書館での開催だったので、こちらの露店営業許可という方法を検討することにしました。

上の写真のような道具を揃えて、保健所に申請すれば、何も問題がなければ、その日のうちに許可が降りたりするそうです(経験者談)。あと、食品衛生者講習を受講する必要があるみたいですね。早速、申し込みました。

ただ、露店営業にも制限があります。おでん、うどん、そば、ホットドッグなど、提供できる食品に縛りがあるのです。一番のネックは「炊いたお米を提供できない」ことでしょう。

でも、逆に言えば、それさえ諦めるなら、一番最短で、許可もきっちり通し、場所を選ばず子ども食堂ができる方法が露店営業許可だとも言えます。

許可を得られるかどうかと「安全かどうか」は別な話

以上の話は、私たちが保健所に行き、担当の方からお聞きし、理解した話です。ひょっとしたら間違いあるかもしれません。いずれにせよ、必ず保健所に個別のケースを相談するようにしてください。

ただ、保健所に相談しにいったとき、担当の方から言われたのが「飲食店の方にお願いすることはできないのでしょうか」ということです。

仮に何らかの形で許可が取れたとしても、たくさんのボランティアが調理に関与する子ども食堂は、食中毒的にはやはり結構リスキーなのだと思います。飲食店なら、毎日業務をされていて、そのあたりの経験量が多いからよいのですが、素人がたまに食事を作って出すレベルだと、許可云々の話とは別に、やはり怖いですよね。

子どものためにと思ってはじめた子ども食堂で、食中毒が発生し、逆に子どもの命を危険にさらしてしまっては元も子もありません。大切なのは、保健所の許可を取れるか、そのテストをパスできるかではなく、安全、安心な食品を提供できるかどうかだと思います。

というわけで、11月初旬にあるという、食品衛生者講習をまずは受けにいってみようと思います。

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森哲平
徳島に子ども食堂をつくろう!

1979年兵庫県生まれ。2011年より徳島に移住。2015年から徳島市沖浜町にて私設の図書館や子ども向けプログラミング教室を運営している。