子ども食堂には「おでん」がいい

森哲平
徳島に子ども食堂をつくろう!
6 min readJan 27, 2017

昨年11月頃から、徳島市沖浜町にて、大人も子どもも無料の「みんなでおでん」を開催しています。

東新町で子ども食堂をしたとき、結構大変なことや、思った通りにいかないことが多くて。その反省を踏まえて、無理なく続けていけるモデルを、と考えたのが「みんなでおでん」です。

以前の子ども食堂ではこんな課題がありました。

・毎週なので労力がかかる
・スタッフが足りない
・メニューがその都度変わるので味が不安定
・いただいたものの使えない食材が出てくる

そこで、隔週開催、毎回メニューをおでんにしてはどうだろう、と考えたのでした。

おでんの何がいいかというと、だいたい何でも入れられる、何を入れてもおでん、というところです。たとえば農家さんがブロッコリーをくださるとします。おでんに入れちゃえばいい。ポトフ風になりますが、彩もあり、きれいです。白菜だろうが、青梗菜だろうが、おでんに入ります。

また、おでんであれば、大変容易に露店営業許可が取れます。事実上、(その土地の所有者さえOK出せば)どこでもお店を出せることに。

それに作るのも簡単です。出汁を挽いて、下ごしらえした具材を入れ、最後に味付けするだけ。毎回同じ作業ですから、調理はどんどん上手くなりますし、速くなります。効率が上がる。

実際、今「みんなでおでん」はほぼほぼワンオペです。調達、準備だけ2人くらいでやってて、開店時間中はワンオペ。それでも全然回ります。

「毎回おでんをつくる」とSNSで伝えたところ、「それならうちの食材を使ってくれ」「それなら、この食材が余ってるんだけど」というお問い合わせもいただきました。「おでん」と「お題」が出ていたほうが、寄付してくださる側も名乗りでやすいというか、リクエストが理解しやすいのだと思います。

今、提供しているおでんは、出汁はいりこと昆布でベースをとり、そこに醤油、塩、みりんで調味するスタイルです。具材は様々ですが、現在、そのほとんどを寄付していただいた食材で賄っています。場所代も特にかかってないので、固定費もほぼほぼゼロ。かなり安く提供できていると思います。

今日はそんな「みんなでおでん」の食材とオペレーションを紹介します。

いりこと昆布で一晩水出し

「おでんの素」みたいな商品を使ってもよかったのですが(それはそれで個人的には好き)、「それじゃおもしろくないから」くらいのノリで、いりこと昆布を使ってベースの出汁をひいています。

出汁は10%くらいの濃度で。つまり、10リットルの水に対して、いりこ、昆布をそれぞれ100グラム程度でしょうか。よく洗った鍋にいりこ、昆布と水を入れて一晩。翌日出汁がらを取り出すと、とてもクリアーなスープが取れます。

凝るとき、時間をかけるときは、いりこを背割りして、内臓を取り出し、軽くフライパンでローストしていますが、経験的に、あとスタッフの好みから「そのまま水出しが一番旨味濃厚でおいしい」との結論になりました。

出汁がらの昆布は、もちろんおでんの「タネ」にもできるわけですが、最初は紐結びとかしてたんですけど、よく考えたら、大変な割に別に味が変わるわけではないので、今はハサミで適当な大きさに切っているだけです。

新鮮すぎて殻が剥けないたまご

たまごはとある養鶏場さんから、毎月100個近くいただいてます。1回につきその半分を使うのですが、問題はその鮮度です。

スーパーや流通に乗ったらありえない鮮度なので、ほんま殻がむきにくい(笑)。先日、あまりの鮮度の良さに、生産者さんに「鮮度がよすぎる」と「苦情」を言ったくらいです。素材の味を見るために、役得で最初に少しいただいてみました。たまごかけごはんにしたり、卵焼きにしたり。もう、何してもおいしい。

「遠慮せんと、もっと持っていきよー」なんて言ってくださって、本当に感無量です。このたまごでプリンを作って、子どもたちに配る、なんて計画も今、ちょっとしています。続報を待て!

最初はとにかく剥くのに苦戦したたまごでしたが、今は、お尻の殻をちょっとだけ潰し、つまようじで穴を開けた上で茹でる、という方法で落ち着いてます。これだと結構簡単にスルスルと剥けるんですね。あ、たまごの茹で時間は沸騰してから10分です。

レストランから牛スジをいただく

ひょんなことから、徳島の某レストランさんから、牛スジをいただくことができました。聞いたらびっくりする人気店です。いただいた肉もすごいキレイで「これが牛スジか......」とびっくり。こちらも毎回定期的にいただけることになりそうです。本当にありがたや......。

牛スジなので、下処理が結構面倒です。軽く洗って油を落とし、何度かふきこぼします。ものがよいのだと思いますが、1回ふきこぼしたら、もうあとはほとんどアクが出なくなりました。

1回分、何キロあるのかな......。もう全然わからないけれど、1時間半くらい煮込んでトロットロにした上で、冷やし、鍋に固まった油をとった上で、大きすぎるものだけ刻んでます。

これまた「役得」ってことでお許しください。スジを煮込んだスープのほうは牛ダシのフォーにして「まかないメシ」にしてみました。今後うまいこと利用できたら、このスープをおでんに加えていくのもアリかも!

各種ねりもの、取り揃えております

我が家のおでんでも使用している蒲鉾屋さんから、規格外のねりものを大量にいただいてます。毎回、もらうたびにショックを受ける量です。ここのねりもの、ちくわはどれも本当においしい。毎回「みんなでおでん」には、このねりもの目当てで「ネリモノォー!!」と叫んで食べにくる子どもが何人もいるくらい。

そのまま軽く炙ってもおいしいのですが、「てんぷら」系は油があるので、軽くお湯を通してから、ちくわはそのまま、あんまり早く入れると、ドロッドロにとけていってしまうので、最後に入れています。

「専属契約農家」からの採れたて野菜

以前の東新町子ども食堂のときから、相談に乗ってくださっていた農家さん。なんと「欲しい野菜を言ってくれ。それを作る」というので、わざわざ子ども食堂のために「生産」している野菜を、前日、もしくはその日のうちに収穫しています。

白菜、青梗菜、大根、かぶ、人参、ブロッコリー......。ない野菜がないです。野菜からもたっぷり美味しい出汁が出るので、とにかくたくさん入れています。

その他の食材は購入

いかがでしたか? 現在では出汁部分以外の食材を、ほとんど寄付だけでまかなえる体制になってきました。このほかには、豆腐やこんにゃく、れんこん、餅などをケースに応じて購入しています。ここにくるまでに結構試行錯誤したので、最初のうちはお金もかかっていましたが、今なら1回2000〜3000円もあれば、十分な量のおでん(30人前くらい)を提供できそうです。

徳島の子ども食堂、皆さんのご協力のおかげでとんでもないことになってるぞ!と伝えたい。本当においしいおでんですので、ぜひぜひ気軽に食べにきてくださいね。

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森哲平
徳島に子ども食堂をつくろう!

1979年兵庫県生まれ。2011年より徳島に移住。2015年から徳島市沖浜町にて私設の図書館や子ども向けプログラミング教室を運営している。