東新町子ども食堂の実態①ー本当に子どもは来ているのか?

森哲平
徳島に子ども食堂をつくろう!
8 min readSep 6, 2016
東新町子ども食堂準備の様子。

徳島市内東新町に「毎週定期的にオープンしている子ども食堂」をスタートさせて、はや3ヶ月以上経ちます。

「定期的」という意味の取り方にもよりますが、毎週開催しているような子ども食堂は、徳島ではこの東新町が初めてですし、他に聞きません。

ぼくらの目的は「子どもたちがおなかいっぱい食べられる徳島」の実現。自分たちが運営している子ども食堂がすべて完璧にうまくいっているフリをすることが目的ではないので、ここではこの3ヶ月を振り返って、上手くいった点、上手くいってない点を報告していきたいと思っています。

いや、ほんとたくさんの支援もいただいてるし。他の子ども食堂、似たような活動をされている方はぜひ参考にしてください。

そこ本当に子ども来るの?

これ、この東新町子ども食堂について、一番聞かれる質問ですね。結論から言うと、子どもは結構来てます。だいたい、毎回20〜30食をお出ししているんですけど、お客様の半分くらいはお子さんです。というのも、結局のところ、子連れでの来場がほとんどだからなんです。

子連れでの来場がほとんど、つまり、逆に言うと、子ども【だけ】で子ども食堂に来るケースはほとんどゼロ。塾に行く前による高校生、みたいな例はあるけれど、基本的には子どもだけでは来にくい場所だと思います。繁華街だし。

でも、それはそれでいいと思っています。

「子どもの貧困」と聞くと、それこそ親から虐待を受けているとか、家で一人で居場所すらなく......というようなイメージを持ってしまうかもしれません。そういう子で【も】通えるようなスペースにしたいという思いはありますが、現実的には難しいです。

これは各所で指摘されていることですが、あまりにもシビアなケースであれば、それこそそうした問題にずっとプロとして関わってこられたような方のスキルや経験が必要だったりして、「簡単に子ども食堂【ごとき】で解決できると思うな」と我々も言われたりします。

あ、ついでなので言っておくと、子ども食堂をやっていると、別々の人から矛盾したことをしばしば言われます。これなんかもそうですね。「一番貧しくて一番困っている子どもを救え。それが子ども食堂だろう!」とある人から言われる一方で、「昨日一昨日、そこらのボランティアが気まぐれでチャラくスタートさせた子ども食堂なんかで、子どもの貧困、その闇を解決できるなど、ゆめゆめ思うな!」と他方でお叱りを受ける。

子ども食堂を運営している「同志」に対してここでアドバイス。上記のようなことがあるので、あまり深く思い悩まないこと。自分たちの目的に照らして、有効に活用できるならアドバイスとして受け入れるけど、そうじゃない場合は、その場では聞き流すのが吉です。

子ども食堂ってネーミングが悪い!

子連れ客がほとんど、という実態なのは、大人だけでは入りにくい、という理由もあるでしょう。「子ども食堂」というネーミング、これがまた問題で。これもまた別の機会に論じてみようと思いますが、「子ども食堂なので、子どもに食べさせてください」といって、遠慮して食事を辞する人が相当います。

「子ども食堂ってネーミングが悪いんだよ」。ええ、おっしゃるとおりなんです。これも何度も言われました。

でも「子ども食堂」というネーミングだからこそ注目を浴びることができたり、お金や食材を提供いただけてるメリットもあります。

人間、ある選択肢を批判するときは、その選択をしなかった場合の損失を忘れがちです。「子ども食堂」と名乗ることで、大人が来にくいのは確かだし、なんとかするつもりなのですが、こちらもそこにある種の「誇り」を持っているっていうか。

もちろん、別の名前にしてもいいんですが、そうすることで「ありゃ、一体なんなのか」、ますます第三者から見たらわけがわからなくなることもありますし、「子ども食堂」という名前ながら、大人も子どもも来ている食堂だって、全国に少なくないと思います。

そもそも、ここでもまた、2つの矛盾する要求を別の人からされたりするわけです。片方では「子どもが来なきゃ子ども食堂じゃない」「なのに大人ばかり来てる。これではまるで『大人食堂』だ」と批判され、また他方では「子ども食堂なんて名乗るから大人が行きにくいんだ」「そんなことも気がつかないのか」と呆れられたりするんですね。まったく、子ども食堂をしているとジレンマに遭遇してばかりです。

もちろんぼくらもこの「ネーミング問題」について考えてないわけじゃありません。というより「子ども食堂をはじめよう」と最初に思いついたときから、その点は議論してて「所詮『子ども食堂』って言葉もある種の流行り言葉だよね」と割り切っています。

また、これもいずれ書きますが、「子ども食堂をつくろう!」と名乗っていますが、我々の最終目標は「子ども食堂をつくる」ことではありません。いや、むしろ「子ども食堂を徳島から【なくす】」のが目的とすら言っていいくらいなんですよ。

始める前から、そこらへんまでは議論して、コンセプトを詰めて取り組んでいます。

東新町は子どもが来にくいのでは?

「なんで東新町なんて繁華街でやるんだよ。子どもだけで来にくいじゃないか」。これももう、ほんと「ごもっとも」なんですが、その......100%条件を満たした物件って、なかなかないんですよね。

子ども食堂をやってると、みなさん結構おっしゃってくださるんです。

「もっと駐車場がある場所でやれたらいいね」「もっと子どもが来やすい場所で」「もっと調理スペースが」「もっと目立つ場(略)」。

ほんと理想を言えばキリがないんですが、なかなか理想のすべてを満たす場所というのが見つからないんですよ。あそこでやっているのは「他にそれ以上適切な場所を見つけることができなかったから」という側面が非常に強いです。

何より、スタッフが毎週、場所の不便さ、条件の悪さに泣いています。いや、貸してくださってるオーナーさんの厚意は十分に理解しつつ、それでもほんとこれは厳しいなあと。

20から30食を調理するのに、カセットコンロと電気コンロが1台ずつのみ。キッチンも狭いし、ブレーカーはすぐ落ちます。鍋を沸かせるだけで、もうものすごい時間がかかるし、たくさんスタッフがいても、中で包丁で野菜刻めるスペースがない。

そもそもこの東新町のお店は「シェアバー」と呼ばれる場所で、日替わりで店長が変わるのが売りの、ほら、最近よくあるでしょう。「1日カフェ」みたいな。あんな運用をしている場所なんですね。

なので、さっきからブツブツ文句ばかり書いてますが、むしろ他の利用者さんからすると「子ども食堂がいろいろな調理器具を置いたり、調味料を置いたりして使いづらくなった」と思っていると思います。すみませんすみません......って思いながらやってます。

また、ボランティアスタッフは恒常的に不足していますし、調理経験が決して多いとは言えません。

その状態で、その日いただける食材も決まってない中、アドリブでメニューを決めていくものですから、これが非常に大変なわけです。正直、料理はかなり上手くいっていません。

お客さんが帰った後の後片付けも本当に大変。空になったカセットコンロを持ち帰ったり、お米が大量に余った場合は炊飯器を持ち帰ったり、ゴミも毎回持ち帰りです。布巾やダスター類も毎回家で洗濯して、また持っていってます。食材をたくさんいただいても保存できるスペースがないため、別の場所で保存し、使うときだけ持っていったり......。

そして、何より、お客様が座るスペース。

「子ども食堂」なのに、バー用途に改造してあるため、椅子とテーブルの高さが合わず、ほんとごはんを食べにくい。座席数も少ないし、ここが一番何とかしたい!けど、何ともならんところなのです.......。

以上いろいろ言いました。そのすべてがイモリに「なぜヤモリじゃないんだ!」と言うような所業でして、つまり、お店自体が当たり前のことながら、子ども食堂のために作っているわけではなく、単なる「間借り」なので、そら、客にもスタッフにも不便だろうよ、ということです。

何が言いたいのかというと「なぜそんなところでやってるんだ?」とおっしゃるのは簡単なのですが、答えとしては「そこしか場所が見つけられなくて。すみません」に尽きる、ってことなんですね。

徳島市内で、小学校や中学校が近く、好きなときに借りられて、十分な広さの衛星的な調理スペースがあり、大人数の食数を作る用の調理器具が備わっていて、レンタル料金もそんなにかからず、椅子やテーブルも完備してあり、駐車場スペースがスタッフ分も含めてほぼ無数にあるんだけど、子どもが歩いてでもこれる場所。

そんな場所があれば、ぜひそこでずっと、ずーーっと子ども食堂をさえていただきたい、というのが我々の切な願いです。当方、徳島生活がまだ浅く、そうした立地を十分に理解しているとは言い切れません。「ほんなとこ、子どもくるん?」。もう、そういうのもわかりません。

場所については「完璧」はないと思っています。ただ、もし、ある程度条件がよさそうな場所ややり方があれば、ぜひ教えていただきたい次第。よろしくお願いします。

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森哲平
徳島に子ども食堂をつくろう!

1979年兵庫県生まれ。2011年より徳島に移住。2015年から徳島市沖浜町にて私設の図書館や子ども向けプログラミング教室を運営している。