[SXSW] 事業リーダーがオースティンでプロダクトを公開すべき9つの理由

SXSW2018が終わり、世界中で多くのレポートが出されています。

テクノロジーのトレンドや未来の話は他のレポートにお任せし、ここでは私がトレードショーに初出展したことで学べた「事業リーダーがSXSWで得るべきこと」まとめておきます。

前提:トレードショーとは
image : schmoozd

トレードショーは4日間にわたり開催され、世界各国からアンテナを立てた来場者が交錯します。膨大な出展者が軒を並べ、来場者の時間シェアをコンペし続けている状況です。

盛り上がっているブースは、お祭りというよりは、戦場に近い状態になり、4日間で1,000名を超える来場者とコンタクトします。


結論:プロダクトよりチームが強靭になった

プロダクトやサービスに対する生のフィードバックが得られることは確かめられましたが、そこは当たり前なので書きません。

プロダクトを作るチーム・メンバーの著しい成長が、事業リーダー自身の成長に繋がり、自信と勢いが生まれます。

この記事ではインパクトの大きい9つの効果をまとめます。

[1] バリューの再発見

プロトタイピング環境が整備された今日、ちょっとした「ほしい!」から製品開発が始まることは少なくありません。

イノベーションの観点からもこれは良いことですが、高速で進む開発の中で「この製品のコアバリューはなんだ?」と疑問が深まることが多々あります。大勢の来場者との会話の中で、自ら持ち込んだ仮説の検証だけではなく「こんなことに役に立つのか!」と気づきが得られます。

爆音オセロの仕組みに興味を持つ少年

ただ酒を飲みながら爆音でオセロをしたい、という欲求から生まれたプロダクトが、親子で楽しめるプログラミング学習キットになると気づけたのは、来場者のおかげです。

[2] プレゼン力の劇的向上

想像してみてください。1日で100回、4日で数百回を超えるプレゼンをした経験があるでしょうか。しかも全て勝負が数十秒で決まるエレベータープレゼン。どんなプレゼン研修よりも最良のトレーニングになります。

自分が愛するプロダクトを前にして、人の心を掴むための工夫を凝らさざるを得ない状況です。

仮説が全然刺さらず、他の側面に食いつかれた1分後に、次の来場者に対して話し方を変えていける環境は、他にはありません。

[3] 英語力不要への気づき

1日100回を超えるプレゼンの多くを、英語で行います。わたし自身トラベルレベルの英語力ですが、文法の崩れは全く問題ではありませんでした。むしろ正しく話そうとすると興ざめされます。大事なのは、プロダクトに触れてもらい、関心が高まった瞬間にインパクトのある「単語」で射ぬくこと。

Its me! とプレゼンを始めるHoloash 岸氏

ひかる卓球で遊び始めた人に「Hit, then Light,」

ひっくり返ると爆音が鳴るオセロで遊ぶ人に「Sound, Alcohol, Perfect.」

ホログラムをじっと見つめる人に「Its me.」

会話の即時可視化ツールに食いついた人に「Brain becomes Transparent.」

これで掴めれば、あとは拙い英語でも根気よく聞いてくれます。

むしろ下手な英語の方が熱がこもって伝わっているくらいです。

そして面白いのは、最終的には英語を学ぶ意欲がマックスになっています。(英語力がなくてここまで伝わる・・・てことは!)

[4] 愛すべき隣人との出会い

来場者が興味を持って話しかけてきてくれても、ビジネスにつながることは稀です。だからこそ、ビジネスにつながるレベルで対話が盛り上がる相手が際立って記憶に残ります。

プロトタイプの新たな使い方に気づかせてくれるYELLOW氏

特に外部の人間と接する機会が少ないエンジニアやデザイナーにとっては、自分のプロダクトと第三者のサービスの相乗効果を目の前で感じとった時、驚くほど前のめりでコミュニケーションを図ったりします。この光景は、通常業務の中ではまず見れないものです。

[5] 改善の爆速化
気づいたら即行動。近くのHOME DEPOで木材の調達

プレゼン・対話の中で発見される改善点は、ものすごく具体的です。そのためネクストアクションの単位が細かくなり、いますぐに着手すべきことが沢山うまれます。アクションが具体化された時のエンジニアは、三度の飯よりもエンジニアリングを優先します。今出た改善点をその場でなおし、15分後にユーザーから別の反応を見て取れるスピード感は他では得られず、改善サイクルの爆速化が身につきます。当然エンジニアの自主的な改善リクエストに対する事業リーダーの決済スピードも爆速化します。

[6]リモートワークの加速

1週間に渡る海外生活は心踊るものであると同時に、母国で走り続ける仕事との関わり方が重要になってきます。今回、優秀なチームメイトに多くのことを引き継ぎ、助けてもらって渡航が実現しましたが、どうしても自分が行うべきタスクは残ります。

朝のうちにTACOSとメール

目の前に広がるチャンスの海に飛び込んでいくためにも、1分でも時間を多く確保したい。そのために自分のタスクを短時間で確実に実行し、時差を超えて母国にボールを投げ返す必要があります。

普段からリモートワークが多い弊社メンバーですら、この1週間の選択と集中、業務処理スピードは格段に上がったと見ており、この効果が持続することを期待しています。

[7] 世のプロダクトへの敬愛

自戒を込めますが、世の中のプロダクトに対する批判は日常的に起こっています。他者のプロダクトにネガティブな発言をする人の多くは、自分の責任でプロダクトを作ったことがない人です。または、自分のプロダクトが世の中でどういう意見に晒されているかを把握していない人です。

東京大学のチームは学生のうちから矢面に立つ

トレードショーでは、自分のプロダクトも他者のプロダクトも平等に来場者の意見に晒されます。場の空気が生み出す仲間意識も手伝っていますが、他者が必死に愛情を注いでいるプロダクトに対して、改善の意見を述べたくなることがあっても、批判したくなる気持ちは生まれません。努力なく生まれてきたプロダクトはなく、リスペクトを持って様々なプロダクトに接するべきであるという姿勢は、なかなか得る機会がありません。

[8]共鳴する仲間の獲得

熱量を持って臨んでいると、熱量を持っている他者が気になります。そして、逆も然りで相手はこちらを気にしていることがあります。そういう空気の中で生まれる繋がりは、異常な共鳴を起こします。互いに忌憚ない意見を述べているうちに、いつのまにか相手のプロダクトが自分ごと化してしまうくらい、共鳴します。

Konel + DOKI DOKI + ISID US

普段のビジネスライクな出会いではあまり体験することのない、爆発的な共鳴関係は、未来への原動力となり、切磋琢磨できるよきライバルになり得ます。

[9] メンバーへの誇りと挑戦への闘志

ここまでで書いたことは、エンジニアやデザイナーであっても享受できる学びです。では事業リーダーが不在でもいいのではないかという疑問はへの解は、否です。

airbnbでの毎日は企みに溢れます

目の前で今まで見たことのない速度で、インプットを吸収して変化していくメンバーを前にして、リーダーとして奮起しない人はいません。彼ら・彼女らへの誇りは増し、それは自信につながり、より大きなリスクをとる挑戦ができる心理状態が得られます。

その挑戦は失敗を呼ぶきっかけかもしれませんが、大きな価値を持つ失敗か大成功と出会えるはずです。

投資対効果

工夫をかさねて、計3名の出展費・旅費・滞在費を合わせて150–200万円程度で済ませることができたこともあり、投資対効果が高かったことは断言できます。

200万円の研修を受けるよりも、手にした効果は遥かに大きいです。

プロダクトの改善点だけではなく、これらの成長を得たチームは、格段によいものを生み出す状態になっています。

これは視察という立場では得られず、ステージに立ったものだけに許される学びだと感じます。

さいごに

事業構想をもっているリーダーは、プロトタイプを世界に晒しにいきましょう。普段はクライアントワークを主としているエージェンシーサイドの方々も、たまには自分だけが欲しいと思えるアイディアを形にして、世界に晒しに行きましょう。

「なぜ欲しいのか」というビジョンがあれば、製品として固め過ぎず緩い状態で晒しに行きましょう。

では、最高のBBQの地、テキサスにて!

Mitsuyo Demura | 出村光世 @Konel : Producer / Founder

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