森の中に不思議な木がありました。
ところがその木が森のどこにあるのか、どんな風に不思議なのか、森に住んでいる誰も
知りませんでした。
けれども森のどこかに一本の不思議な木がある・・・うその噂だけは伝わっていたのです。
さて、ある日のこと、サルとブタが、けんかをしていました。
一緒に食べようと約束をしていたおいもがなくなってしまったのです。
サルは自分がいないに、ブタが食べてしまったのだと思いました。
そこで、
「ブタ君、君が一人で食べたんだろう?」とそう言いました。
するとブタは怒り出し、
「僕食べてないよ。そんなこと言うんなら、さる君が食べたんだろう?」
さるはそう言われると、ますます怒り出し、
「僕食べてないよ。」
するとブタも
「僕じゃない。」
「僕じゃな~い。」「ぼくじゃな~い」・・・・と二人は大喧嘩になってしまいました。
するとその時、側に立っていた木が枝をさわさわふるわせて(低い声で)こんなことを言ったのです。
「私にのぼってごらん。どっちが嘘をついているか、すぐにわかる。
正直な者がのぼれば私の一番上まですぐに登れるが、嘘をついている者が登れば、何べん登っても途中までしか登ることができない」
それを聞くと二人はささっそく順番に木に登ってみることにしました。
まず先にサルが登りました。サルはもとより木登り上手、あっという間にスルスルスルと木のてっぺんまで登れました。
そして木のてっぺんに着くと、下にいるブタに向かって
「ブタく~ん。ほら、 僕これで嘘をついてないことわかっただろう~。」そういうとまた、スルスルス~と下までおりてきました。
次はブタが登る番です。
ところがどうしたわけか、ブタはなかなか木に登ろうとしません。
何かひどく心配そうな様子をしていました。そしてそのうち小さな声でサルにこんなことを言ったのです。
「サル君。もしもだよ、もしもぼくが途中までしか登れなくたって、僕 お芋食べてないからね。ぼく嘘ついてないからね。・・・・・・木登りが苦手なだけなんだ。」
苦手などころか、ブタは今までただの一度も木に登ったことがなかったのです。
皆さん、ブタが木に登ってるのを見たことありますか。
(聞き手が言う。)「な~い」
そう、今日が初めてだったのです。
ブタは、そろりそろりと木に登り始めました・・・・
ところがいったいどうしたと言うのでしょう。のぼり始めてまもなく、あっという間に
スルスルスルーと、木の一番上(てっぺん)まで行けたではありませんか。!
はじめてのぼった木の上で、ブタはとてもうれしそうでした。
「わあ!、すごーい! ここ木の上だよ!すご~いよ~
サル君~~~僕登れたよ~ うわ~! 高いよ~!木の上だ~!」
ブタはうれしくてうれしくて、なかなかおりたくない様子でした。
それでもしばらくすると(しかたなく)ゆっくりゆっくりと下におりてきました。
さて、二人とも登れたとなると、いったい誰がお芋を食べてしまったのでしょうか。
森には大勢仲間がいます。その中からお芋を食べた者を見つけるのは、大変なことでした。
そこで二人は、友達がたくさんいるきつねに聞いてみることにしました。
きつねはいつも森の中をかけまわっています。誰かがおイモを食べているのを見たかも
しれません。
そこでキツネの所にいこうと思った時、ちょうど(きつねが)向こうから駆けてきので、二人はわけを話しました。・・・・・
その話を聞くと(きつねは)
「お芋?・・・ そんなもの、見たこともないよ。」とそう言ったのです。
キツネが知らないのなら、もう誰が食べてしまったのか探すのは無理なことでした。
二人はがっかりしました。
するとそのとき、きつねは側にあった木を見上げて
「うわー、すごい木だ!僕、登ってみよう!」 とそう言って登り始めました。
ところが、途中まで登ると、ストーン!と下に落ちてしまったのです。
そこで今度は後ろ側の枝ぶりのよいところから登り始めました。
ところが二度目もまたストン! と落ちてしまったのです。
三度目も四度目も五度目も、何べん登ってもきつねは途中まで行くとストン、ストン!と下に落ちてしまうのです。
その様子を見て、二人は誰がお芋を食べてしまったのか、すぐにわかりました。
みなさんにもわかるでしょう。そうです。嘘をついていたのはきつねです。
そこで二人はきつねにこの木がこんなふうに不思議だという話をしました。
するときつねはだまってしばらくその木を見上げていましたが、そのうち正直に、お芋を食べてしまったことを二人に話して、あやまりました。
そして次の日、お詫びだと言っておいしいかぼちゃを二人にひとつずつ持ってきてくれました。
これで仲直りができました。よかったですね。
さて皆さん。この木はなんと言う名前か知っていますか。
ウソ発見木です。森の中に一本だけあるそうですよ。
杉の木、樫の木、松の木 くぬぎの木・・・ それからウソ発見木!
森へいって「この木がウソ発見木だ!と思ったら、正直な気持ちで登ってみてください。
きっとすぐに一番上まで登ることができるでしょ!」
(終)
注★( )の中の言葉はその時の状況で入れて下さい。
★ 題名は言わずに話し出して下さい。