夕日のしずく

ある日 キリンは夕日を眺めていた。・・・・キリンは夕日が好きだった。
辺り一面を真っ赤に染める、その美しい景色を眺めていると、心の中がふんわりとしてきて
やさしい気持ちになるのだ(った。)

その日も、いつものように夕日をじーと眺めていた。

すると・・・どこからか誰かの声が聞こえてきた。・・・小さな声だった。
足元を見てみると アリがいた。
アリはキリンを見上げていた。・・そして小さな声で・・・・「何をみているのですか?」・・と聞いた。
「夕日をみているのさ」・・・・「夕日って、なんですか?」
「とても美しいものだ」・・・・・・「美しいって・・どういうことですか?」
「夕日を見てみればわかるさ」・・・。・・「ぼく見てみたい!」・・
「それならぼくの体を登っておいで」・・・・アリはキリンの体を登り始めた。

けれどもキリンの体はまるで高い木のようで、登っても登ってもなかなか上までゆけなかった。
アリはとうとう途中で止まってしまった。

キリンは「夕日をみるのは君には無理だな」・・と言った。
けれどもアリは・・・「いいえ、ぼく、どうしても夕日を見ます。見たいんです。」
そう言うと又、小さい体で登り始めた。・・・・一生懸命に登った・・・
登って登って登り続けた。・・・・
そしてとうとうキリンの頭の上まで登れた。
そして、アリは見た。夕日を見た。(アリは)言葉が出てこなかった。
そしてしばらく黙っていたが・・・そのうち小さな声でつぶやいた。・・「なんてきれいなんだろう」・・・

キリンは言った「不思議な気持ちになるだろう」・・・・
「・・・なんだか心の中がふんわりしてくるような気持ちです。」
「そうだ!その ふんわり というのがやさしいという気持なんだ。やさしい気持ちにさせてくれるのが、
 美しいということさ」
「きれいと美しいは違うんですか?」・・・「いいや違わない。美しいの中にきれいがあるのさ」
 「きれいで美しい!」・・アリは言った。
キリンも言った「そうだ!夕日はきれいで美しい!」

それからしばらくの間、キリンとアリは黙って夕日を見つめていた。

しばらくして風が吹いてきた。・・・キリンは「さぁ。風にとばされてはいけないからもう帰りなさい」「帰りはぼくの体を下りてゆかなくてもいいよ。そのまま地面に下ろしてあげる。

登る時もそうできたのだけど・・自分の力で登ってみた夕日は、特別に美しいのさ。

君にはその夕日を見てほしかったんだ」・・・アリはキリンのその言葉を聞くとたまらなく嬉しい気持になった。そして・・・「夕日はきれいで、美しくて、嬉しいものですね」・・と言った。
キリンはうなずいた。・・・・・・・・そしてそっーと首を曲げ、アリを地面におろした。

するとその時、小さな赤い花を見つけた。
キリンは驚いた。こんな可愛いらしい花を見るのは はじめてだった。
そして思わず「これは夕日のしずくだ」・・・と言った。
アリも「そうだ!夕日のしずくが咲いたんだ!」

その時、小さな風が吹いてきて、花が返事をするようにうなずいた。

キリンはたまらなく嬉しい気持ちになった。そして心の中でつぶやいた。

「アリ君。夕日に出会ってくれてありがとう!
 夕日が美しいだけでなく、嬉しいものだとぼくに教えてくれてたのは君だ。」・・

アリも心の中でつぶやいていた。

「キリンさん。夕日を見せてくれてありがとう!
美しい!ということがどういうことなのか、ぼく今日はっきりわかりました!」

そして・・・夕日もつぶやいていた。

「あなた方が美しいと思ってくれることで、私はもっともっと美しくなってゆけそうな気がします。ありがとう!」

風が吹き・・・ちいさな花が、またうなずいた・・・・(終)

「夕日のしずく」4年生~大人用