犬の島

夕陽の光の帯の上に薄っすら見えるのは、猫の島として有名になった青島の影。

瀬戸内には、猫密度が異常に高い「猫の島」がいくつかあるらしい。藤原新也氏が1998年に書いた『藤原悪魔』という本には瀬戸内の猫の島をハシゴしたエッセイがあるが、そこに青島の名前は出ていなかったから、ここは長らく人知れぬ猫の島だったのだろう。

日本には離島が6000以上あるらしいから、ある種の生き物が密集している島が色々ありそうである。きっと猫の島は日本中にあるだろう。例えば青島で猫を飼い始めたのは、漁具を痛める鼠を退治するためだったそうだから、古くからの漁業の島ならどこでも「猫の島」になりうるはずだ。

「猫の島」があるなら、犬密度が異常に高い「犬の島」もあってよさそうだが、そういう島は聞いたことがない。島民の十倍以上の犬が密集している犬の島はなぜないのだろうか。

猫と比べるために鼠退治の文脈で考えてみたい。鼠が身軽で小さいから、犬の手に負えなかった。ただそれだけだろう。すると、猫に負けないくらい体の大きな鼠を退治するためには犬を飼ったほうがいいということになる。「犬の島」が出現するためには、まずは大きな鼠が山ほどいる島を見つけなければならない。

しかし猫に勝てるほど大きな鼠を山ほど養える自然環境が離島にあれば、今ならすぐに県の天然記念物あたりに指定されるだろうから、その鼠を退治することはできまい。その島はむしろ「大鼠の島」として珍重される。

世界のどこかに、島民15人・犬200頭といったような人知れぬ「犬の島」がありはしないか――そんなことを思った。

(この写真の中央に写っているのも青島)

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