怪異の気配 — 水木しげるとYMOから

現在、僕は自身の経営するダンスミュージック・レーベル「 KWAIOTO Records」にて、1年以上にわたり京の怪異を音像化するコンセプトシリーズ「Occulted City 呪法都市」を制作している所為で、すっかり周辺から「妖怪好き」と思われている。
確かに
2018年8月現在、過去のリリースを振り返れば

Vol. 1 茨木童子
Vol. 2 羅生門鬼
Vol. 3 鉄鼠
Vol. 4 土蜘蛛
天狗(愛宕山太郎坊)
Vol. 6 怪童丸(坂田金時の幼名)
Vol. 7 葛葉狐(安倍晴明の母)
Vol. 8 鵺
Vol. 9 紅葉(女盗賊で鬼女)
Vol.10 餓者髑髏
Vol.11 清玄 (僧侶の亡霊)
Vol.12 平将門(の怨霊)
Vol.13 平知盛(の怨霊と弁慶の死闘)
Vol.14 東雲(暗殺者で鬼女)
Vol.15 菅原道真(の怨霊)


全作、月岡芳年の描くキャラクターをビジュアルにしている時点で、すでにガジェットとして成立してしまっているので、そう思われていても仕方がないのだが、僕は決して「妖怪好き」な訳ではない。
妖怪や亡霊などの「怪異キャラクター」には全く興味がないのだ。
けれども、そうした怪異の気配、背景といった周辺情報には、幼少期から強く惹かれてきた。
水木しげる先生の「ぬらりひょん」を例に取ると

先生のこうした妖怪「画」には心動かされる。
「ぬらりひょん」本体(ここでは”顔だけ”)は、古くは鳥羽僧正「化物づくし」、佐脇嵩之「百怪図巻」、鳥山石燕「画図百鬼夜行」などから連綿と受け継がれてきた完成キャラクターなので、
「あぁ、妖怪の総大将って設定だよね」
と、それ以上の想像の拡張を許してくれないのに対し、この背景や衣装。
(石燕版にも描かれていた)あの駕籠の担ぎ手は誰なんだ?
暖簾がかかっているから店だろうが、ここは何屋なんだ?
そもそも、何しに来たんだ?
何をしようとしてるんだ?
などなど、じっと眺めているだけで限りない妄想力を掻き立てられる「気配」のようなものが、メインのキャラ以外の要素へ描き込まれているからだ。
実はこの手法、僕の「Occulted City 呪法都市」シリーズでは、大いに使わせていただいている。

メインのキャラクターを表すものとしては、ジャンル固有ガジェット(Synth Bass であったり、Beat の形成であったり)や、シリーズの象徴(和太鼓や和楽器、時に大編成オーケストラのショット)を使用しつつ
「気配」を Beat やアンサンブルの隙間に、いわゆるフォーリーを潜ませることで形成する、という応用をさせていただいているのだ。
このシリーズの制作で、もっとも時間がかけているのも、この部分で、アルバム化のリワークやリミックス作業などで、一番最初に検討に入るのも、実はここ。

怪異の要は

いるのか、いないのか、よくわからない。
けど
なんか、いる。

だと常々考えていたので
その「気配」を音として、きちんと描くには?
という一つの着地点への示唆となった次第。

水木先生以前、
「気配」を意識させられたのは、
もうすでに、音の世界で生計を立てることを決めていた中学2年で耳にし、未だ事あるごとに針を落とす、YMO「Technodelic」。

音の向こう側に何かいる。
特に、オープニング・トラック「Pure Jam」。