Kyberと共に
Kyber設立以前について
私の旅は暗号通貨とイーサリアムが世界規模の現象になる前の、2014年に始まりました。最後にはKyber Networkの共同創設者となる大学の仲間たちと共に、根本的に他とは違い、また現状を打破するこのテクノロジーに深く感動しました。特に、いかなる集権的主体にも頼ることなく、世界全体の技術的/経済的なシステムを運営する能力に全く新しい世界を感じました。
問題を解決する科学者としての心を持っていたので、私たちはこの基本技術レイヤーを改良することに大きなモチベーションを刺激されました。これは私たちの研究で最もインパクトがあり、貢献の大部分にあたる部分であると信じていたのです。結果として私たちのKyber以前の主要な研究は、分散化/スケーラビリティ/セキュリティ という3つのブロックチェーンの柱に集中することとなりました。
私たちの研究はこれらの柱それぞれにつき、ブロックチェーン分野に広く認められ、採用されるプロトコルの開発により貢献することができました。セキュリティについて、最初の自動スマートコントラクト検証フレームワークであり、今日のセキュリティ専門家(Melonport, Quantstamp等)に最も利用されるオープンソースの監査ツールである Oyente を構築しました。分散化については、Smartpoolに関する私たちの研究はマイニングプールの過剰な集権化を回避することに重点を置き、ブロックチェーンネットワークの基礎をよりセキュアで検閲耐性のあるものにできました。スケーラビリティにおいて、私たちの Elastico は、パブリックブロックチェーンにおける最初のシャーディングを提案した研究となり、現在では最も有望なスケーラブル・ブロックチェーンプロジェクトである Zilliqa の設計に直接影響を与えたものでもあります。
これらの全ては博士課程の数年を要するハードワークでしたが、非常に価値が高く、Kyberの登場のための強力な技術基礎を築いてくれました。コミュニティ全体が、現在の経済を根本的に変えるアイディアに熱心であることには、特に勇気づけられました。この熱意は、技術の初期段階における大きなハードルの存在にも関わらず、分散型テクノロジーとソリューションを開発し続けるための真のモチベーションとなってくれました。
ベースレイヤーのソリューション研究は、私たちにたくさんのチャレンジと重大なインパクトを創造するポテンシャルを与えてくれました。私たちは分散型テクノロジーの恩恵を、暗号通貨や技術に詳しくない、より多くの人々に届けるプラットフォームの研究がしたいと考えていました。そして、私たちは直接的なインパクトを与えるプラットフォームを創造することと、分散化のポテンシャルを解放する基盤を構築することに注力したのです。現実社会での活用を促進するためです。
私たちにとっての重要な瞬間は、イーサリアムで違うトークンを扱うことは可能だろうか、とあるプロジェクトが議論を持ち込んでくれたときでした。共通のトークン保有者とコミュニティが、異なるトークンエコシステムに参加することを意図してのことです。これは両者にとって有益で、他のトークンをもっと便利にできるし、シナジーも提供できます。私たちはそれを研究しましたが、この一見シンプルな問題がいかに困難であるかに気づき、驚かされることになりました。
単一のクロストークン取引であっても、非互換性から(トークンはEtherではありません) 決済のファイナリティ (決済の承認の確認方法)や価格フィードに至るまでいくつも問題がありました。価値観やトークンと標準プロトコルの多様性のもと、数千を超えるトークンの中からコントラクトがより多くの種類の受領を求めるともなれば、その課題は爆発的に増加します。
大半のプロジェクトがプロのトレーダーや投機家へのサービスにフォーカスしており、その問題の解決策はまだ存在せず、問題に取り組んだり、それについて話すことさえ稀であることも判明しました。しかし私たちがこの問題を研究すればするほど、この解決に衝撃的なポテンシャルがあることを実感していました。分散型テクノロジーの採用を妨げる主要ハードルを取り除くことは、どんなトークンを保有するかに関係なく、プラットフォームへの平等なアクセスをトークン保有者に与えることになるのです。
その瞬間から私たちのゴールは、異なるプロジェクトやエコシステム間のシームレスな分散的交換を促進することとなりました。私たちの考えは終局的に、生まれや立地、権力やバックグラウンドを問わない全ての人々への平等なアクセスをリードすることになるでしょう。
Kyber: 最初のステップ
Kyberはそのゴールを達成するための最初の大いなる一歩となるべく、可能な限りの多くの人々がアクセスできる、有意義な価値交換のための分散型プラットフォームとして創設されました。
当初より、暗号通貨マーケットでの伝統的なトレード技術のサポートにはフォーカスしないことに決めていました。人為的な取引高の数字が成功に数えられ、エンドユーザーに不公平な状況を導く恐れがあるからです。代わりに私たちは、包括的かつ透明性の高い金融システムの基盤を形成できるプラットフォームを構築するよう努めています。
イニシャル・トークンセール後、私たちの最初のステップはいくつかの重要な開発フェーズとなりました。
- よくテストされ、セキュアで公的に検証可能なトークン交換プラットフォームを構築し公開すること、そして多様なトークンをサポートすること
- リザーブモデルの経済的な実行可能性を検証しつつ、最もユーザーフレンドリーなUIを分散型社会に持ち込むこと
- MyEtherWallet や imToken, Request Network 等の、この分野の信頼できるプロジェクトへ、トークン交換プラットフォームを解放すること
最終的に25,000人が私たちのトークンセールに参加し、様々なインターフェイスからプラットフォームを利用してくれました。創業以来から私たちを支え、浮き沈みの中でも信じ続けてくれたグローバルで多様なコミュニティを持つことができ、私たちは信じられないほど幸運です。これら全てが私たちに自信と洞察を与え、核となるプラットフォームをより広範な方法で活用されるように創ることができました。
最近の9ヶ月で、エコシステムも開花しました。驚くべきほどに多くのイノベーションが起こり、バラエティに富んだプロジェクトが開発されました。それらはモバイルウォレットや全く新しいバーチャルグッズ経済圏、暗号通貨決済に応じるベンダーや暗号資産に投資する分散型ヘッジファンドに至るまで、商取引全体をまたがって開発されています。競争と哲学の違いから、ときには異なる当事者間で緊張が走ることもあったかもしれませんが、最終的には皆違う道で、よりよきグローバルシステムのために仕事をしていることを理解していました。私たちにとっての主要なフォーカスは、彼らをそれぞれのゴールに到達させるため、どのようにKyberを設計できるかにかかっていました。
プラットフォームと大きなエコシステムの両方が出来上がり、Kyberの戦略を公表する準備が整いました。 最初にこの戦略をKyber Network 2.0イベントで定義し、その後に新しいウェブサイト、開発者ポータル、およびKyberの詳しい解説をリリースしました。また、今後の戦略をコミュニティ、エコシステム、マーケットに明確に伝えるために、7月と8月もKyberを知ってもらうためのコミュニケーション資料を公開します。
Kyberの目覚め
現在のトークン社会の最も明らかな現象は、非常に多くのトークンとプロトコルの出現です。数千のトークン、数十のプロトコルも毎週に生み出され、それらのトークンの多くは彼ら自身のプラットフォームや取引所でのみ受け付けられています。これは明らかにトークンの有用性と受容性を制限することになっています。何と言っても、その場で使えないトークン資産が何の役に立つのでしょうか?
Kyberの次のステップは、プラットフォーム、エコシステム間での瞬時でシームレスな取引を実現することにより、この隔絶されたトークン社会を繋げることにフォーカスすることです。
その核となるものこそ、トークンホルダーからの流動性提供を受け入れ、さらにどんなアプリケーションとも統合できる分散型流動性ネットワークです。それにより、彼らに決定的な流動性とトークン取引機能を提供します。
例えば、ウォレットはすぐにでも瞬時のトークン交換機能を組み込むことができますし、ベンダーは自身の通販プラットフォームで複数種類のトークン決済を受け入れることができ、なおかつ好きなトークンで支払いを受けることができます。加えて、dAppsは彼らが発行したトークンを持っていないユーザーにも、他のトークンでプラットフォーム内のサービスを提供できます。さらに、分散型ファイナンスプロジェクトに対しては瞬時にポートフォリオをリバランスする手段を提供できるのです。
流動性は、誰もが遊休トークン資産を分散型流動性プールに提供できるオープン・リザーブ・アーキテクチャにより促進され、トークン提供者は、全ての取引のスプレッドにより利益を得られます。それらのトークンは、ネットワークに参加するどんなプラットフォームでも利用可能になりますし、トークンをより流動的に、便利なものにできるのです。
以下の3つは、私たちがどのようにオープン・流動性ネットワークを構築したかを説明するための鍵となる特性です。
- 包括性: このネットワークは流動性の提供の大小かかわらず、多くの主体に開かれていなければなりません。包括性は、金融システムへの平等な参加を保証する鍵となる特性です。
- 透明性: 透明性こそ、なぜ分散化がより堅牢なシステムをもたらすか、についての体系的な理由です。多くの市場操作や金融危機は、不明瞭な情報が原因です。これが、流動性ネットワークの全てのオペレーションをオンチェーンで行っている理由であり、公的な検証や注意を可能にすることで、詐欺や論争を避けることができるのです。
- アクセシビリティ: 広く利用してもらうため、ネットワークはプラットフォームを問わず開かれなければなりません。イノベーションやエコシステムの多様性を制限することなく、どんなアプリケーションやプロトコルにも流動性プールを活用してもらわなければなりません。私たちの設計は、開発者やユーザーが使いやすく、統合しやすいものにできるようフォーカスしています。
これら全ての重要な原則は、オープンであること、というアイディアに回帰します。すなわち、大小関わらずどんなエコシステムプレイヤーにも、流動性プールの提供やアクセスを可能にするということです。そうすることで、私たちは新たな分散化システムの活用事例が現れることをサポートします。エコシステムの想像力だけが、唯一の制限となるでしょう。
Kyber: これから
プラットフォームの構築はもちろんのこと、エコシステムの採用を促進しつつ、今後の戦略を世界に詳述していきます。将来のために、分散型流動性ネットワークをより多様/相互運用可能/スケーラブルなものに構築します。
- 多様性: トークンのより広範な多様性をサポートするため、私たちは徐々にリザーブへの流動性提供をオープンにします。これは2つの大きなステップがあり、それはリザーブ資料ポータルのリリースと、Kyberへトークンを提供するためのリザーブプロトコルの開放です。
- 相互運用性: 私たちはエコシステムと協力して、暗号通貨界全体の統合を進めるため、特にクロスチェーンサポートと、一般的なプロトコルやDEXとのシームレスな統合を可能にしました。
- スケーラビリティ: 私たちは最近、より安価で迅速な決済を可能にするだけでなく、既存のプロトコルを桁違いに拡張する新しいスケーリングソリューション、Gormosを提案しました。Gormos は、膨大な数のトランザクションが発生するアプリケーションを、セキュリティとユーザビリティの犠牲なしに助けることができます。これはエコシステム全体によるオープンソースプロジェクトとして開発されます。 膨大な数のトークンペアを持つ世界のインフラを構築するため、Kyber でも Gormos を活用する予定です。
Kyber: トークン社会を一つに繋げる
スティーブ・ジョブズは有名なスタンフォード大学でのスピーチにおいて、たくさんの点は後からでしか繋がらないと言いました。時間の感覚からも、最も理にかなっていると思います。まさにKyberも、このケースに当てはまります。
技術優位性を保つための核となるコミットメントは、分散型テクノロジーを可能な限り多くの人々にアクセスしやすいものにし、全てのプロジェクトが容易に統合できるようにすることです。私たちの信じるものを繋げれば、最後にはトークン社会の次のフェーズの技術的、哲学的な基礎となるでしょう。
ビットコインが最初のトークンを創造したときから、トークン社会の最初のフェーズが始まりました。イーサリアムは誕生以来、資産のトークン化を簡単にし、さらに最初に広く採用される標準規格であるERC-20を創り出し、劇的に進化を加速させました。私たちは、次のフェーズは大多数のトークンを可能な限り流動的に、便利にすることだと信じています。
将来普及するシナリオは、トークンを保有する誰もが簡単に、自由に望みの状況でトークンを利用できることです。ある人はゴールドの裏付けのあるトークンですぐにTシャツを購入できるし、そのトークンで様々な代替投資も可能で、もしくはトークン化された物的資産を使って愛する人へのジュエリーを買うことも可能でしょう。
これが Kyber がもたらす将来です。私たちの流動性ネットワーク内のトークンは広範な状況で利用可能で、それらを即座により流動的に便利なものにできます。つまり Kyber は、隔絶されたトークンエコシステムをつなぐ橋となり、断片化されたトークン社会を一つにつなげることを目指しています。
この分野では、一人きりで達成できる重要なものは何一つありませんし、広範なプレイヤーで共に努力することが求められます。 私たちは、同じ任務に取り組んでいるすべての人と力を合わせて働くことに100%集中しています。それは全て、より透明で包括的、アクセシブルなグローバル金融システムを構築するためです。
素晴らしい Kyber コミュニティと暗号通貨エコシステム全体が共に、トークン社会を次のフェーズに進めることを楽しみにしています。