Sal Mitsuzawa
LayerX-jp
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11 min readNov 26, 2018

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本質的に難しい問題を技術で解決するような、世界的な成果を出したい」LayerX CTOの語るブロックチェーン領域の面白さとLayerXエンジニアチームの目指す所

こんにちは。エンジニアのサルバ(@moonty_sal)です。今回はLayerXのエンジニアリングに関するアレコレをCTOの榎本(@mosa_siru)に語ってもらいました。

— 最初に自己紹介と、最近の働き方について聞いてみたいです。

2013年に新卒として株式会社ディー・エヌ・エーに入社して、2015年にGunosyにジョインし、「ニュースパス」など複数のアプリの立ち上げに携わり、アーキテクト / リードエンジニア等を担当していました。2018年8月からはLayerX設立に伴い同社CTOに就任しました。国内外を問わず、技術面や法規制面において、ブロックチェーンを取り巻く状況は日々目まぐるしく変化していて、ゲームチェンジングな出来事が多い中、正しい意志決定を行うのは容易ではありませんが、挑戦しがいがあります。平日は調査や設計、開発を進めています。LayerXのCTOになってからは、労働時間というより質的な面で働き方が変わりました。平日が忙しい分、土日は家族と一緒に過ごしていますよ。

— 個人として、ブロックチェーンに興味を持ったきっかけは?

実は、Gunosyで新規事業を検討していた際に「調べてみるか」となったことがきっかけです。それまでは詳細はわかっておらず、僕は「バズワードでしょ?」「怪しくない?」「何がスマートなの?」みたいなことを言っていました。今思うと完全に情けないです(笑)

そんな状態だったんですが、入門書を読んだ後、なんだかテンション上がっちゃって(笑)、次にSatoshi Nakamotoの論文を読んで衝撃を受けました。主張がシンプルで力強く、何ていうか書き方がカッコいいんですよね。そこから、これは基礎からじっくり勉強しないといけないと思いMastering Bictoinを読んで、読むだけでなくチーム内でディスカッションしたり、数学の本を読む時のように「なんでこうなんだっけ?」とか「こうじゃだめなんだっけ?」という観点で深く深く読み進めました。技術的な面だけではなく、インセンティブ設計的な面でも、マイナーは個々人で利益を求めているだけなのに、全体としてはうまく回るところ等、美しいと思いました。きっかけはそんなところです(笑)

— なるほど笑。僕も初めは眉唾だと思っていたので、似ているかもしれません。@mosa_siruも僕もウェブのエンジニアリング出身ですけど、ブロックチェーンエンジニアリングの世界とウェブのエンジニアリングはどういうところが違うと思いますか?

言い過ぎかもしれないけれど、ブロックチェーンの領域はまだ全てがR&Dのフェーズである側面があって、枯れた技術が存在するウェブの世界に比べると、変化の速さが圧倒的だと思ってます。技術的な側面でのウェブとの違いだと、考え方が異なる部分が多いなと感じています。

例えば、一度デプロイしたスマートコントラクトのアップデートが困難である点、もう少しつけ加えると、アップデート可能な設計を取ることはできるものの、ブロックチェーンの良さを活かす意味で、アップデートの困難性を担保する方が良いとされる側面は大きな違いを感じる点です。ウェブ開発の世界のセオリーであるA/Bテストの実行、小さく作って効果計測するようなアプローチが難しい。スマートコントラクトの世界故の特徴を理解して、開発の初期段階から固く作る必要があります。

またセキュリティ面においても、バグに後から気づいても直せないケースは多々あり、資産が流出するのを見ていることしかできないケースもあります。一口にバグといっても、共謀をはじめとするインセンティブ設計における様々な攻撃があり、中央の管理者が存在しなくとも、多様な攻撃パターンに対する穴が出来ないように設計する必要がある点も、難しくもあり、面白いとも感じます

心がけの面で言うと、ゲームチェンジングな出来事が起こるか全くわからない中で戦っていく力、アニマルさと頭の回転の速さが強く求められると思っています。

— LayerXの事業を鑑みて、エンジニアとしての挑戦しがいを感じるのはどの辺りですか?

LayerXにはブロックチェーン技術を利用したい企業向けのコンサルティング事業があります。コンサルティング事業と一言で言っても、本質的な技術力をベースとした必要な総合格闘技だと考えていて、非常にチャレンジングだと思っています

例えば、ブロックチェーン技術の選定に関しては、どのチェーンを選択するかも含め、現段階で利用可能な技術スタックを利用するか、ブロックチェーン以外の部分はどのような技術スタックを利用するかといったエンジニアとしての設計力が問われます

また、ビジネスとしての価値を出すために「全て分散型で実装する必要があるんだっけ?」という問いも立てながら、いつの段階でどこまで分散型にするか等、そういった観点でプロジェクトのロードマップを考える所も面白みが多いです。他にも、コンサルティングの中でトークンの設計をすることがありますが、プロジェクトがトークンにより資金調達をする場合は、投資家及びユーザどちらに対してもトークンを保持する価値のあるインセンティブ設計をし、提供しようとしているサービスにとって全体最適になるよう、行動経済学な観点も踏まえて考える必要があり、非常に面白いです。

— インセンティブ設計は、ゲーム開発のゲームバランスの設計に近いかもしれないですね。その他考慮すべき点はどのようなところでしょう?

サービスを実際に使うユーザの利便性を損なわずしてブロックチェーンを導入するために、ユーザ体験の面も考える必要があります。技術面・サービス設計面以外の話をすると、資金調達という意味でのビジネスの側面や法規制の側面も考慮する必要があります。トークンは設計によっては証券に該当し、適切に法律を守る必要があります。法律に従うために、どんなプロセスを踏む必要があって、将来的にはどうなりそうか、何処をブロックチェーンで置き換えられるかということも考える必要があります。そして、プロジェクトの要件として、トークンに証券に該当するような性質が必要かどうかを問いかけたり、資金調達の方法も含めて検討しなければなりません。そういった意味で、深い技術理解はもちろん、ビジネス面や法律面への深い理解も求められる総合格闘技だと思ってます。

— LayerXのいちエンジニアとして見た時に、LayerXのエンジニアの働き方や雰囲気ってどうですか?

その言葉通りですが「和気あいあい」やれてるなと思います。結構硬いイメージがあるって聞くこともありますが(笑)全然そんな事は無くて、slackも盛り上がっているし、雑談もするし、楽しい雰囲気で仕事をしています。毎日行う勉強会も非常にためになるものが多いです。

ブロックチェーン領域はカバー範囲が広すぎて、全部を一人で追うのは到底無理なので、ある人は金融、ある人は暗号というように、個々人が得意分野を持って知見を共有してくれるのは助かります。金融等の門外漢の分野に関しては、背景やプレイヤー、取引の実情を理解するのは大変ですが、最近金融業界出身のメンバーが加入してくれたので、その辺りを手触り感を持って理解できるようになりました。そのように得意分野を持った人が集まってくる面白みも感じています。

もちろん、難しい情報科学や数学の話だとついていくのが大変だと思うこともあるし、勉強会の最中に話を聞いていて「お前がNo.1だ」って思うこともありますね(笑)

— 毎日の勉強会はGunosyのブロックチェーン研究開発チーム時代から長く続いていますよね。メンバーみんなが大事にしているカルチャーだと感じています。他にもLayerXのエンジニアリングで大切にしている事ってありますか?

勉強会の内容のScrapboxでの公開も含めて、継続的に成果をアウトプットをしてエコシステムに貢献していくことを心がけてます。

人の面では「アニマルさ」のあるメンバーが集まっているのは面白いと思っています。事業を進める上で必要であれば、自分が今未知の領域でも食らいついて、圧倒的な速度でキャッチアップして実際に物事を前に進めてしまう、そういう突破力のある人をアニマルだと呼んでいます。具体的に、エンジニアリングの文脈で「アニマルさ」を考えてみると、例えば、知らない分野でも必要であればキャッチアップしてすぐに実装までやってみたり、海外出張にいきなり行くことになっても、実際に企業や研究者にアポイントメントを取って情報収集や議論をしたり、チーム内でもアニマルにやろうという話はよく上がります。

ブロックチェーンの技術領域は個人時代の幕開け的な意味合いもあると思っているので、まずはメンバーが一人ひとり自立できている組織でありたいと思っています。

— エンジニアリングの観点でLayerXが目指している所ってどいうところでしょう?

LayerXには研究開発チームがあって、短期的なビジネスに繋がる等の観点は一切捨ててアウトプットをしています。調査内容をイベントで発表したり、勉強会の内容をscrapboxで公開したりしています。開発したものとしては、Plasma MVPのVyper実装やRemixのVyperプラグインの開発等です。調べるだけではなく、実際にモノを作ってブロックチェーンの技術、エコシステムに貢献し、貢献することで繋がった人たちと、更にアウトプットを出して、大きな事業を自分達で作りたいという思いがあります。GoogleやMicrosoftと同じように、1つでも大きなキャッシュエンジンを作り、そこで生んだキャッシュを研究開発に投資して、さらにそれを改善していく。そういう意味でも、中長期的な観点でR&Dは大切にしたいという思いを持っています。

社内向けの行動指針に「Bet Technology」=「技術に賭ける」というのを掲げていますが、この心がけは大切にしていきたいです。ブロックチェーン領域で、一番本質的な価値を生んでいるのはプロトコルレイヤーの技術であり知見なので、本質的に難しい問題を技術で解決するような、世界的な成果を出したいと思っています。

日本はブロックチェーンというと投機的な文脈で見られることが多く、「仮想通貨、儲かるんでしょ?」という話が多いですが、世界的には様々な優秀なプレイヤーがスケーラビリティの問題からユーザビリティの問題に関してまで、解決が難しい問題に関して議論しています。日本が海外から遅れをとるのは悔しいので、技術的なアウトプットで日本のエンジニアコミュニティを盛り上げて、貢献していきたいです。

— ありがとうございました。

Layerではこれまでのブロックチェーン領域での経験に関わらず、ブロックチェーン技術に関心を持ち、技術に賭けてチャレンジしたいエンジニアを募集しています。

まずはメンバーとランチ等カジュアルな食事からでも!

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