LayerX の2019年

mosa_siru
LayerX-jp
Published in
13 min readDec 27, 2019

今年もお疲れ様でした!LayerX CTO 榎本(@mosa_siru)です。会社として、今年はどういう1年だったかなと振り返ろうと思います。

ブロックチェーン業界自体は、今年はLibraや中国CBDCのインパクトが強かったですが、実は商用化事例がわんさか出てきた1年でした。詳しくは代表福島のまとめと、ニュースレターをご覧ください!

LayerXの創業は2018年8月で、約1年半が経ちました。当初からブロックチェーン技術が ”来る”ことは確信していましたし、新技術が作る未来にベットすることは決まっていました。意識していたのは、いかに情報とキャッシュの集まるバンテージ・ポイント(見晴らしの良い場所)にいくか。模索し続けていましたが、今年1年でかなり確信のもてる地点までこれた手応えがあります。

LayerXの目指してる姿については、以下の記事をご覧ください。

ここからは具体的な取り組みを振り返っていきます。

ビジネス

LayerXは、ブロックチェーン技術をコアに、協業して事業をつくっている会社です。

その関係でなかなか表に出しづらいこともあり、「結局何やってるかわからん」とも言われるLayerXですが、今回ようやくMUFG様との取り組みを発表することができました。世界中の金融機関が証券をブロックチェーンで管理することに取り組んでおり、ブロックチェーン×金融のなかでも本命といえる領域です。

できて間もないベンチャーが大手企業と協業ができることは異例で、これはチーム(Biz, Dev, R&D)の総合力によるものとして素直に喜ばしいですし、一歩引いて見るならブロックチェーンというマーケットの強さを感じます。時代には、新しい技術によって普段は閉ざされている扉がひらく瞬間があって、いかにその時に入り込んでグロースするかなのかと感じました。

ドメインとペインの深い理解、技術力(ブロックチェーン以外も当然含みます!)、ビジネスの構築、複数社の絡むプロジェクトの推進力、法、世界的なトレンド… それらが密接に絡み合うため、1つ1つのプロジェクトは極めて難易度が高く、めちゃくちゃやりがいがあります。

技術的には、ブロックチェーンを用いた実践的なアプリケーション開発・インフラ構築の知見が多くたまりました。ただ触るのと、実際にプロダクトとして使える・運用できることには、大きな開きがあります。基盤についてもEthereumベースだけでなく、Substrate、CordaやHyperledger Fabricなど、複数の基盤に取り組んでいます。

プロダクト開発はスクラムで、原点にかえってカンバンで進めることも増えました。
ヒリヒリする開発も出てきて、鉄火場という言葉も流行りました。(明らかに誤用)

また当初から目指していた、R&Dの知見を事業に活かすこと、また事業側の生のペインをR&Dに活かすループも回りだした1年だったと思います。

R&D

LayerXのR&Dチームでは、コンセンサスプロトコルやシャーディングの研究と、秘匿化技術の研究を中心に行っています。前者はブロックチェーンのコア技術で、今後莫大な金額のアセットが乗るブロックチェーンの安全性を担保するために欠かせない研究ですし、後者はブロックチェーン技術のアダプションのために必須な機能と考えています。

今年は目に見える形で研究結果が残せた1年でした。

コンセンサスプロトコルである CBC Casper に関する論文はCrypto Valley Conference 2019に、ポスターはIEEE S&P 2019にアクセプトされました。

Etheruem Communityによる国際的カンファレンスであるEdcon 2019(Sydney)でも発表しています。

本研究を通して、日本初となるEthereum FoundationによるGrantsを獲得しています。(Cryptoeconomics Labさんも同時に採択されています。喜ばしい)

また、LMD GHOSTへの攻撃に対する研究は実際に Ethereum 2.0 の仕様に採択され、Devconでも発表しています。

Etheruem Foundationによる国際的カンファレンスであるDevcon 5(Osaka)での発表です。

(余談ですが、PoWやPoSをコンセンサスプロトコルと言うと、リサーチャーの中村から生暖かい目で見られます。)

秘匿化については、ゼロ知識証明を用いて秘匿化を行う Zerochain の開発を開始しました。

秘匿送金だけでなく、Fungible Assetの秘匿TransferやMint、さらに匿名送金も可能です。Tutorialで試してみてください。

こちらの研究も、Stakeさんと同時にWeb3 FoundationからのGrantsに採択されました

Devconでも登壇しています。今年も秘匿化・匿名化のトピックはホットでした。

また最近では、より汎用的に秘匿化された計算を行うために、TEEを用いた研究開発も進めております。

LayerXの行動指針では「徳」を大切にしています。これは短期的に自分の利益にならなくても、 周りのため、業界のためになることを長期的にやっていこうというものです。今年も徳を貯めれたのではないかと思います。

エンジニアのみを対象としたイベント blockchain.tokyo も、ついに23回を迎えました。今年はより実践的な、実際につかわれるプロダクトを開発するための話が多かったように思います。このコミュニティ運営を通して、ブロックチェーンエンジニアが増えていけばいいなと思っています。

scrapboxには全てのリサーチ内容を公開しており、約800個のエントリが出ています。気になるトピックがあったら、普通にググる前にここで調べてみるのも良いかもしれません!(実際僕もしています)

圧がやばい

今年はじめたNewsletterは、ついに38通目を迎えました。ビジネス・技術面ともに目まぐるしい進化をする業界の注目ニュースを毎週お届けするものです。出張中にも変わらぬペースで書いているメンバーをみて「これが徳か…」と感じました。ぜひsubscribeしてみてください!

「徳」は会話でもよく使われます。なぜかコードが動かないときは、徳が足りてないことが多いです。

チームの状況

ここ1年で倍増して、約30人になりました。その多くがエンジニアです。アニマルな学生からシニアな経営メンバーまで幅広く在籍していて、平均年齢は31です。仲間が増えたこともあって、10月にオフィスを移転しました。六本木から東日本橋です。(街の雰囲気が落ち着いていて、とても好きです。)

経営面においては、より機動的・自由度の高い意思決定のために、8月に福島によるMBOを行いました。また10月には強力な経営メンバーがJoinし、新経営体制を発表しました。

Microsoftさんとのパートナーシップも深めており、お互いに勉強会を行ったり、blockchain.tokyo での連携もしております。今後もどんどんAzure上でサービスが拡大するとのことで、期待です!

クラウドについてはAWSさんも活用しており、セキュアなインフラ構築についてご相談させていただいております。

個人として

僕自身としては、組織を拡大しながら、同時に事業を探索しながら確実にくる未来まで”なんとかする”ことできた年だったと思います。チームが生きていけて拡大できるキャッシュフローを事業から得ることができました。

各プロジェクトにおいて関係構築から信用を蓄積し、設計・開発までゴリゴリすすめ、複数のプロジェクトが走るなかでも採用、登壇や取材での発信、組織作りなど兵站を構築し、ドメインを勉強しながら時代にのっかっていくの、しんどい時もありますけど楽しいですね。

飾らずに言うと、会社の成長速度や業界の進化のスピードにヒィヒィ言ってる毎日でもあります… >< もっと自分に能力があればこういう動きができたのに、と思うことも多かったです。また昔に比べ業務領域が広がったためか、世の中にはすごい人達がたくさんいるなぁ…と思うことも増えました。

来年に向けて

業界全体としては、海外中心に引き続きプロダクション事例が本格化していく年になります。各国の金融機関の動きにも目が離せません。

LayerXとしても、仕込んでいる各プロジェクトを本格化していくフェーズになります。今年1年で複数の案件を仕込んでおり、近いうちに発表できるかと思います。わくわくです。

ブロックチェーンは複数主体によって初めて意味をなすため適用射程が通常の技術と異なり、効果の定量化も難しいケースがある故に「なぜブロックチェーンなの」と言われたりもします。僕たちはこの技術に確信を持っていますし、海外、特に中国で急速に実用例が出ているのは紛れもない事実なので、まだまだ事例の少ない国内にこの技術を広めていくのは使命だと思っています。

来年において、LayerXの一番の課題は採用です。複数のプロジェクトが立ち上がり本格化していく中で、現在毎週レベルでエンジニアのアサインを調整している状況です。(たぶんしのげてないです、泣きそうです。)圧倒的に仲間が足りません。

まだまだ採用市場において壁を感じるというか、急成長するブロックチェーン領域にエンジニアがどんどん流入するムーブメントをつくるところからだなと感じております。

企業の成長がマーケットに規定されるのと同様に、人の成長もマーケットに規定されるのかと思います。急速に実用化されているこの領域にいち早く乗り込んで暴れてみたいなと思った方、ぜひご連絡ください!

よく誤解されるのですが、今いるメンバーも初期から詳しかったわけではなく、強い学習力でキャッチアップしていった形です。またブロックチェーンだけでプロダクトが作れる訳ではなく、直近ですとSRE / 事業ごりごり推進できるエンジニア / サーバーサイド強い方 / 金融システム強い方 を特に募集しています!

あらためまして、極めて変化の激しい領域ですが、来年以降も”なんとかして”いきます!

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