LayerX Newsletter for Biz (2019/05/06–05/12)

Takahiro Hatajima
May 14 · 16 min read

はじめに: 今週の注目トピック

0–1 @th_sat より

今週のBiz関連の注目は、OpenLawの取組みです。例えばいくつかの質問に答えることを通じて契約の自動生成を行うほか、こうした契約のテンプレートに基づきスマートコントラクトとして合意事項を自動執行するものです。

商取引にかかる複数の事業者および法律事務所における各種リーガルコストの低減に加え、監督官庁から見れば法規制をビルトインしたコントラクトとし、それを監査できる状態におくことによって、法令遵守を担保することにも繋がることが期待されます。

ブロックチェーンという共有台帳上で、参加者が検証可能な環境として様々な価値移転を行う際に、このような形で合意事項や法規制をスマートコントラクトとして組み込むことによって、よりスムーズな商取引あるいはこれまではコストの見合わなかった超小口の事案についても、契約として執行することが可能になる点について、引き続き注目したいと思います。

0–2 Eisuke Tamotoより

今週の注目トピックは「Tokensoftによるenterprise向けSTコンサルティングサービスの開始」です。Tokensoftは今まではSTローンチを目論むファンドやスタートアップを中心としたコンサルティングサービスを手がけていましたが、大規模機関向けにもコンサルティングサービスを提供する方針に舵を取った形になります。

セルサイドにおいて、機関投資家によるST参入は最近のホットなテーマとなっており、機関投資家向けの取引所などのサービスも増えています。一方、トレンドを見てみると、バイサイドだけでなくセルサイドでも大手機関の参入の動きが見られます。現に先々週号で紹介した、ソシエテジェネラルによる社債発行など、大手機関による実例が生まれ始めているのです。

現在筆者はニューヨークでのblockchain weekに参加しています。Fluidity SummitなどSTに重点を置いたサミットに参加していますが、今年は「機関投資家や大手機関を如何に巻き込むか、彼らのニーズとは何か」を議論するセッションがが多いように感じます。これも最近のトレンドを反映しているのかもしれません。別の記事においてUSのSTトレンドについてまとめることを計画しておりますので、こちらの詳細についてはもうしばらくお待ちください。

Section1: Business

1–1 Regulation : 規制動向

米FinCEN(金融犯罪取締ネットワーク)、Convertible Virtual Currencies (CVCs)関連ビジネスモデル向けに規制ガイダンス発表(ガイダンス原文はこちら

  • 銀行秘密法(The Bank Secrecy Act: BSA)が適用可能な仮想通貨を扱う金融サービス業者に対するガイダンス
  • ガイダンス内容については、Coin Centerのまとめ記事が有用。マルチシグやDEXや秘匿コイン開発者やノンカストディサービスはmoney transmittersとしての規制対象外。交換業者やATMは送金業者にあたる。DEXについても取引の精算を行う場合は通常の交換業者と同様。価値の受取/送信を行うDappsは送金業者にあたる。ガイダンス原文中、LNノードについては一言も言及されていないので勘違いないようにしたい
  • FinCENのガイダンスの原文については、元MessariのKatherine Wuによる原文への注釈書き込みバージョンが読み進めやすい。FinCENのガイダンスのエッセンスを並べた、@msantoriESQ のツイートも概要把握に良い。これら上記含め、Messariが有用レファレンスをまとめている

FATFプライベートセクターフォーラムが5/6–5/7に開催

  • Virtual Assetsの顧客デューデリやレコードキーピング、怪しいトランザクションの報告などについて議論あった模様。これらは6月のガイダンスへ向けた最終化のインプットに

リヒテンシュタイン、ブロックチェーンおよびトークンに関する規制案が通過

参考資料:世界各国のブロックチェーン・暗号通貨関連の規制をまとめたレポート

1–2 Crypto Adaptation: 暗号通貨の普及・応用

Fidelity、機関投資家むけに暗号通貨売買サービスを開始予定日本語記事

  • Fidelityとして参入済みであるカストディ事業に続いて、暗号通貨取引サービスに乗り出すもの。先日公開されたFidelityによる調査にて、機関投資家に暗号通貨市場への関心が一程度あり、約2割が暗号通貨を保有していることを明らかにしていた

HTC、スマホにBitcoinフルノードを統合へ日本語記事

1–3 Decentralized Finance : DEXやトークンなど

日本語によるDeFi概要解説連載記事

Compound — クリプトレンディングとマネーマーケット

Multi Collateral Dai解説

MakerDAOトランザクション図解

1–4 Security Token : 証券トークン関連

注)今後証券トークンをこのニュースレターにおいてはST(Security Token)と表現していきます。

TokenSoftが大企業向けSTコンサルサービスを提供開始

  • STの発行コンサルティングを行なっているTokensoftが大企業向けのSTコンサルティングサービスを始めると発表
  • 現在すでに6社程度のクライアントがいる模様

FluidityがEthereum上での抵当発行を行うと発行

  • FluidityがNYとCaliforniaの不動産の抵当権をEthereum上で発行する計画があると発表
  • ことし夏ごろのローンチを予定(行政からのライセンス獲得のスケジュール次第で前後する模様)
  • 集合債権化させて新たなSTを作成することも視野に入れて開発中

tZEROがDS Protocolを使用プロトコルとして採用

  • Secondary platformのtZEROがSecuritizeと提携
  • Securitizeが提供するDS ProtocolにtZEROが対応することを公表
  • Securitize上で発行されたプロジェクトがtZERO上でトレード可能に

GSRによるtZEROへの投資ディールがクローズ

  • 昨年より続いていたGSRとの投資契約がクローズ
  • 投資額は当初の400億円より大幅に減額され5億円になった模様
  • 企業評価価格が下がったものの1000億円以上の価格は維持

ADAXがフィリピン政府からSTプラットフォームのライセンスを獲得

  • Asset backed Tokenの発行&セカンダリプラットフォーム開発を目指すADAXがフィリピン政府よりOVCEライセンスを獲得
  • PFのリスティングは2019年のQ2, セカンダリトレード自体は2019年Q3にローンチ予定

SmartlandsがStellar上でST向けのWalletを開発

  • Stellar上でのST取引に対応したwalletをローンチ
  • 投資家はKYCチェックに通過したもののみがWallet登録可能
  • AIを利用しつつwallet上のst上の取引でAMLに抵触する可能性がないかをチェック

スイス証券取引所の取締役が独自トークンの可能性に言及

  • 1号案件としてまずは独自のトークン化とSTOを実施する予定であると説明
  • 取引所が開発を進める、PrimaryとSecondaryのプラットフォームは来年初期のリリースを目標
  • 投資商品の多様化は2021年ごろの実現を目標にしている

tZEROが親会社Overstockの株式をトークン化させることを発表

  • OverstockのシリーズAで発行された株式をトークン化させることを発表
  • トークン名はSeries A-1 Token
  • 株主による承認を受け次第トークン化を実施
  • トークン化されても株主が有する権利は現在の株式と同様

論考系

金融市場におけるpublic chainの可能性

  • public chainの方が金融市場に良い効果を与えられる理由についてprivate chainと対比させながら説明
  • private chainと既存の分散データベースとの相違点は、全体を管理する単一主体が存在するかどうか
  • 現在既存業界がpublicを避けている姿勢は、Internet登場初期に既存企業がIntranetを好んだ状況と似ている
  • プライバシー、スケーラビリティ問題それぞれがpublic chainで解決されればpublic chain上でのST発行は実用性が出てくる

英国の法規制の現状

  • FCA(日本でいうFSA)はUtility Tokenについては定義をする動きはなし
  • 個別案件ごとにSecurity該当性が審査される
  • AMLについては規制を強める計画がある
  • 今年末までにデリバティブ提供には規制を設ける予定

1–5 Financial Institutions : 金融機関による応用ケース

米法律事務所Latham & Watkins、ConsenSysおよびOpenLawと「Auto Convertible Note」を発表

  • 転換社債の一種であるconvertible noteについて、企業名・希望額の記入、割引率や投資家の権利などの選択など、いくつかの質問に回答するのみで、OpenLawプラットフォームがカスタマイズされたConvertible Noteフォームを動的生成する。フォームはマーケット標準である500 StartupsのKISS (“Keep it Simple Security”)フォーマット準拠した上で、デジタルトークン購入オプションなどの修正を含むもの
  • フォームの合意事項に関する自動化を通じてリーガルチームの時間を削減する。資金調達に要する負荷を低減し、開発に専念できる環境につなげる狙い

OpenLawとカナダ六法律事務所、M&Aエスクロー合意の自動化

  • カナダの法律事務所との間で、Openlawプラットフォーム用いて契約書テンプレート開発へ協働するもの。擬似Stablecoinを使ってM&Aエスクローや補償請求に関する合意事項の自動執行などを行う

OpenLaw、Rocket Lawyerとブロックチェーン契約協業を発表

  • まずペイメントまで行うRocket Wallet提供などを通じて、スマートコントラクトベースに参加者間の複雑な法的契約をStablecoin決済として自動執行することによって、一般消費者がそれと知らずに暗号通貨を利用できるようにする

豪州証取ASX、分散台帳ベースのエクイティ決済システムリプレイスへ向けて顧客用開発環境をリリース

タイ中銀、中銀デジタル通貨のプロトタイプを用いた銀行間ペイメントをR3およびWiproと実施日本語記事

R3 Corda用いた貿易L/C発行を行うVoltonプロジェクトの試行を50行参加し実施日本語記事

ボストン連邦準備銀行、銀行間の資金の流れやセツルメントを監視する規制監視ツールとしてブロックチェーンの監視ノード設計を計画日本語記事

1–6 Enterprise/Government : 非金融分野の応用ケース

飲料大手PepsiCo、エンドツーエンドのサプライチェーン効率化へZilliqaプラットフォーム用いてトライアル実施日本語記事

  • エンドツーエンドのリコンサイルを通じて広告サプライチェーンの効果計測を実施。広告キャンペーンにおける支払い透明性向上などを通じて、広告管理効率を28%向上をみた

スターバックス、Quorumブロックチェーンを用いたコーヒー豆のトレーサビリティ日本語記事

  • 生産地から店舗までのサプライチェーンをトラッキングするもの。Microsoft Azure上に構築するブロックチェーン環境上で稼働

ドバイ、‘Decentralised Data for Dubai’プログラム立ち上げ計画

経産省、学位・履修履歴、研究データをテーマとした、大学・研究機関におけるブロックチェーン技術の適用可能性に関する調査報告 を発表(4/23付)

1–7 Startup : 個別プレイヤー・アプリケーション

AtomicLoansビットコイン担保ローン

RealT、不動産トークンプラットフォーム

Sablier App、給与など継続的なペイメントをEthereum上で受けるウォレット

LiquidShareConsenSysのPegaSysチームと協働でSME向けポストトレード基盤を発表

Humanityアイデンティティ・ガバナンス・ベーシックインカム向け実験的なDAO

Section2: Articles & Papers

業界横断のコラボレーションを推進する上で、競合を含みガバナンスの効きにくい環境下で企業間におけるデータ共有を行うことが今後重要になってくると思われます。そうしたシーンにおけるゼロ知識証明の意義などについて、有用な論考です。

2–1 論考

QEDITが語るゼロ知識証明の意義

  • ブロックチェーンはコラボレーションに魅力的な反面、競合企業の相乗りは難しい。そこで、実データを共有すること無くデータ正確性を証明できるのがゼロ知識証明。金融市場・サプライチェーンにおいて、KYC/AML規制遵守しつつ、機密を保つ上で有用

自己主権型アイデンティティとブロックチェーンの話し

  • セルフソブリン・アイデンティティとブロックチェーンに関する論考。アイデンティティ記録というより、ゼロ知識証明など通じた証明に意義あるのでは、との指摘など

European Identity & Cloud Conference 2019でBYOID+DIDの話をします

  • Bring Your Own Identity + Decentralized IdentityをuPortなど使って実装した取組の発表

デジタルテクノロジー活用を通じた「Trustの自動化」

Deloitte、グローバルサーベイを発表

米SECのコミッショナーHester M. Peirceの講演

  • 業界がどのような方向へ進むべきかについて、明確な道筋が規制当局から示されていることへの懸念を表明。不明瞭な規制はプレイヤーを米国外へと追いやることになると警鐘

Section3: Future Events

New YorkおよびBostonでBlockchain Weekとしてイベントが集中的に開催されています。

Business of Blockchain 2019(5/2 at MIT Media Lab, Cambridge)動画

Fluidity Summit (5/9 at NYC)動画

Ethereal Summit(5/10–5/11 at NYC)初日の動画

Consensus 2019(5/13–5/15 at NYC)

Token Summit (5/16 @NYC)

Malta AI & Blockchain Summit (5/23–5/24 at Malta)

SEC FinTech Forum(5/31)

Crypto Valley Conference(6/24–6/26 at Zug, Switzerland)

バックナンバー

#1 (2019/04/01–04/07)
#2 (2019/04/08–04/14)
#3 (2019/04/15–04/21)
#4 (2019/04/22–04/28)
#5(2019/04/28–05/05)

Disclaimers

This newsletter is not financial advice. So do your own research and due diligence.

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