LayerX Newsletter for Biz (2019/05/13–05/19)

Takahiro Hatajima
May 21 · 20 min read

はじめに: 今週の注目トピック

今週の注目トピックは、分散アイデンティティです。

ユーザー自己管理型のアイデンティティと称されることも多い分散アイデンティティは、企業目線で考えると、攻守双方の側面で有用性を挙げることができます。守りの視点からは、個人情報漏洩リスクへの防御といった見方ができる一方、どこでも必要なときに使える、IoTなどのデバイス普及をも睨んだユニバーサルアイデンティティとしても注目が集まっています。こうした新たなデジタルアイデンティティの実現にあたって、特定の発行体に依存しない共有台帳としてのブロックチェーンを活用する動きがMicrosoftといった大手企業の動きとして具体化しつつあります。

デジタル化の進展の波の中で、お金の新しい形態として各種のデジタルなマネーが社会的地位を獲得していっている中、アイデンティティについても平行してデジタルアイデンティティという新しい姿が生まれようとしています。そしてブロックチェーン技術は、デジタルな信用を供与する技術として、「新しいお金」「新しいアイデンティティ」の双方を支えるものです。これまでに無い新しい概念の創造にむけて、引き続きこうした動向に注目していきたいと思います。

ST分野の今週の注目トピックは「Openfinance Networkの2銘柄がロックアップ期間が終了、non-accreditedも参加可能に」です。

今迄STのセカンダリーに上場されているトークンは適格投資家(Accredited Investor)のみ参加できる形態がとられていました。理由は各国証券法の例外規定を利用したトークン発行だったためです。それもあってか、Openfinance Networkの取引参加者もあまり多いとは言えず取引量も非常に少ないものとなっていました。それが今回、米国証券法の例外規定の一つであるReg Dが定める期間を満たしたこともあり、セカンダリーに初めて一般投資家(Non-Accredited Investor)も参加できるようになりました。

今後は一般投資家もいつでもSTの取引に参加できるようになってきます。STはいつでも取引ができることが特徴、と謳われて来ましたがこれでその条件が整い始めた、ともいえるでしょう。今後これによって本当に取引量が増えるかが注目されます。流動性や取引量が増えなかったのは条件が要因であったのか、はたまた投資商品そのものに要因があったのか、今後明らかになってくるといえるでしょう。

Section1: Business

金融庁、各国規制当局と3月末に実施したラウンドテーブル内容を公開日本語記事

  • 加速する技術発展に規制当局が適応するためのアプローチについて議論がなされた。ブロックチェーンの便益を得る上では、エコシステムのステークホルダー達がどんな便益があるのかについて共有していくべきであるとし、パブリックチェーンにおけるプライバシーやトランザクショントレーサビリティについて議論があった
  • エンジニアが匿名化に注力する一方、当局はブロックチェーンを用いた可視性を必要としている。プライバシー拡大によるマネロンなど金融犯罪を懸念しており、エンジニアと当局で違いに観察しつつ、金融機関には、監査可能な形でブロックチェーンを使うように求めていく必要があるかもしれないとの見方を示している

米FinCENが発表した仮想通貨関連のビジネスモデルに対する規制のガイダンス対訳原文はこちら

  • 5/9にFinCEN発表されたガイダンスについて、対訳(案)を示したもの

●インド準備銀行、規制サンドボックスから仮想通貨関連を除外し、IT業界団体Nasscomが反発(日本語記事

  • 先月発表されたサンドボックスにおいて、ブロックチェーン技術のみが対象となり、仮想通貨やトークンについては対象外となっていたもの

StarbucksやWhole Foods Market・Nordstrom・baskin robbinsなど15社で仮想通貨決済アプリ受け売れ開始日本語記事

  • Flexaネットワーク上で仮想通貨による購入・支払用アプリケーションSPEDNを発表。今回SPEDNはConsensusカンファレンス参加者限定で利用可能となったもの
  • 暗号通貨の安全管理をはかるカストディとしてGeminiと協業し、Bitcoin、Ether、Bitcoin CashおよびGeminiの米ドルStablecoinであるGemini Dollarを使ったペイメントが可能。Starbucksなど大手企業で仮想通貨決済が認められた点は、仮想通貨の普及にむけて重要な一歩

Bakkt、7月にビットコイン先物テスト開始

Facebook、ペイメント分析向けFinTech企業「Libra Networks」をスイスに設立

Coinbase、Stablecoin「USDC」の利用を拡大し85カ国で利用可能に

BitGo、機関投資家むけにオフチェーンでの仮想通貨クリアリング・セツルメントサービス開始

カストディサービスのプレイヤーマップ

国内仮想通貨交換業者の決算発表が出揃う

HTCのEXODUS、Kyber Networkと統合(デモ動画はこちら

  • HTCのスマホEXODUS 1は、ウォレットZion Vaultを内蔵し、鍵の所有権保持・トランザクション実行・資産管理が可能。Trusted Execution Environment(TEE)技術を活用することで、鍵およびトランザクションを保護する仕組み
  • 取扱可能なアセットは、Bitcoin・Ether・Litecoin・ERC20/ERC721トークンで、Operaブラウザを介してDappsアクセスも可能
  • 加えて、Kyber Networkの流動性プロトコルを統合することにより、取引業者を介することなく、ウォレット内でERC20トークンを直接交換することができる

Binance、Stablecoinレポート発表日本語記事

  • ドルベースのStablecoinの取引量が継続して増加していることに加えて、Trust Tokenがドルベース以外(カナダドル・ポンド・ユーロなど)のStablecoinへ拡大し、海外送金やヘッジへの用途を想定
  • そうした中、Facebook・Samsungなど大規模ユーザーベースを持つ企業による参入が、デジタルアセット業界の成長をさらに促進する可能性

0x、KyberNetworkと流動性プール共有へ

MakerDAOトークンの解説

分散型金融(DeFi)ユースケースに対する有識者コメント

Openfinance Networkの2銘柄がロックアップ期間が終了、non-accreditedも参加可能に

  • Openfinance NetworkにリスティングされているSpice VCとBCAP Tokenの二銘柄のRegDに基づくロックアップが終了
  • これにより、US国内のNon-accredited investorもトークン取引が可能に
  • ST業界でnon-accredited investorも参加可能な取引が行われるのは初
  • 他銘柄も時期が到達次第順次non-accredited investorも参加可能に

Securitizeがプラットフォームの大幅アップデートを行いver3.0を発表

  • 今回のアップデートにより、発行体側の投資家管理がさらに簡易に
  • 管理ダッシュボードのUIを改善
  • 同時に、DS Protocolのコードを公開、今後オープンソース化を志向
  • プラットフォームの質が担保されたことが今回公開に踏み切った要因
  • 詳細はこちらのMediumで解説

PolymathがST向けの独自チェーンを開発へ

  • PolymathがCharles Hoskinsonとタッグを組み独自チェーンを開発する方針であることをconsensusで発表
  • 法準拠を完全に満たすチェーンを開発し、世界初のST特化チェーンとすると発言

Kaleidoがトークン化をサポートするBaaSツールを提供へ

  • ConsenSysグループのKaleidoが提供するBaaSをアップグレードし、トークン化に対応したサービスにすると発表
  • node設計やコンソーシアム形成の簡易化を手助けするツールを提供
  • Atomic-swapを実現する仕組みが導入される模様

Harborを利用した100M規模の不動産投資ファンド組成へ

  • Rhodium and Primary CapitalがHarborプラットフォームを利用して100M規模の不動産投資ファンドを設立することを発表
  • Harborにとっては失敗した1号案件に続いて2例目の案件となる
  • USの多世代住宅への投資が主目的とのこと
  • USDによる投資に加えてBTC, TETH, Geminiでの出資を可能に

KoreconXが$250M規模のマイニングファンドのSTOを実施

  • PCF Capital Groupが炭鉱ファンドを設立し、そのための資金$250MをKoreconXが提供するKoreProtocolを利用してST化させることを発表
  • USやUK, SingaporeなどのAccredited-investorとInstitutional Investorが投資家対象
  • KoreconXが提供するKorePartnerを利用することで世界中のオファリングが可能になる
  • このパートナーには世界中のLegal, Accounting, Blockchain advisor, Custodyなどが対象

SECがNextBlock Globalを証券法違反で検挙へ

  • SECがカナダ法人のNextBlock Globalを誤解を与える勧誘方法を行ったとして証券法違反で検挙する方針
  • 4人の突出したblockchan界隈のアドバイザーが付いていると広告したことが虚偽に当たるとされている模様
  • 現在自主的に出資資産の返金を行なっている

Blockstream社がSTプラットフォームを開発すると発表

  • Liquid上で発行できるSTプラットフォームを開発すると発表
  • EthereumよりSTに特化した発行ができると強調
  • TokenSoftが協力会社の一つとして名を連ねている

tZERO親会社OverstockのCEOが自社株売却をした理由を釈明へ

  • OverstockのCEOが自社株売却した理由を株主へ釈明へ
  • 自分の$100,000の給料を支払うためであった、と説明
  • 合計900,000株の売却を実施
  • 株価が2日で一時的に24%も下落

Coinbase custodyのCrypto運用額が$1Bを突破

  • サービス提供開始1年で運用額が$1Bを突破
  • 70の機関がクライアントとして存在

LSTA(Loan Syndications and Trading Association)、シンジケートローンの組成・取引自動化へ向けてOpenLawと提携シンジケートローンの動画

・オリジネートや管理に手間のかかり作業ミスなどのリスク低減を目的に、LSTAの協力のもと、LSTAのフォームに基づいてエンドツーエンドのプロトタイプを開発し、ローン組成・ドキュメント実行・KYC/AMLプロセスなどを実施。シンジケートローンの契約について、リーガルテックツールとブロックチェーンへの電子署名を用いて自動化した他、ローンの管理について、スマートコントラクトを用いて自動化

・狙いは、シンジケートローン取引におけるセツルメント時間の短縮。管理者そのものを無くすのではなく、スマートコントラクトを用いて管理機能の効率化に寄与すること。トークン化されたアセットのみを対象とするため、デジタルアセットが広範に普及したり、従来型アセットを容易にデジタルアセットに転換するツールなどが課題としている

タイ中銀と香港金融庁、中央銀行デジタル通貨の共同研究へ日本語記事

  • これまでに香港金融庁は「Project LionRock」、タイ中銀も「Project Inthanon」と、独自で取組を進めてきており、今回はFinTech分野における協力取組の一環として、中央銀行デジタル通貨の共同研究を挙げている
  • 先日は、シンガポール「Project Ubin」とカナダ「Project Jasper」の間で中銀デジタル通貨の共同実験が行われており、各国に閉じた研究のステージから、中銀を横断した実践的ステージへと移行が進んでいる

欧州中央銀行、暗号資産に関するレポートを発表日本語記事

  • 仮想通貨が現金などの信用ある代替手段として機能しない限りはマネーの役割を果たすことはなく、仮想通貨で商品やサービスの購入ができる小売店が少数である現状において仮想通貨の普及は限定的との見方を示した。一方、Stablecoinについてはボラティリティ低下の観点から継続してモニタリングしていくとしている

世界銀行とCommonwealth Bank of Australia、bond-i債券のセカンダリーマーケット取引実施

UBSやHSBCなど、2020年ローンチ予定のデジタル通貨セツルメントシステムFinaltyプロジェクトへ$50mを投資日本語記事

LVMH、EthereumベースのトレーサビリティプラットフォームAURA発表日本語記事

  • 高級ブランド品の材料選定から販売までのプロセスをトラッキングし、商品および記録の真正性を顧客自身も確認できる。LVMH傘下のいくつかのブランド(Louis Vuitton や Christian Diorなど)で導入へ向けて準備が進行中

パナソニック、中国の食肉衛生管理むけトレーサビリティシステム開発

  • 食肉衛生管理を高度化するコールドチェーンシステムを中国で発売するにあたり、センシング技術で検知した家畜の感染症記録をブロックチェーン上で管理
  • 家畜の成長から食肉処理、配送まであらゆる工程をトレーサビリティーに対応させ、履歴管理の改ざんを防ぐ狙い

トッパンフォームズ、個人情報・機密情報管理の技術検証を完了

  • データをブロックチェーンからPDS(パーソナルデータストア)へセキュアに連携することによって、ブロックチェーン自体には個人情報を伝播させずに、管理主体の違う環境へ必要な情報を連携
  • 具体的には、ユーザーが入力した住宅ローン審査に必要な個人情報や資産状況などのデータ自体はブロックチェーン上で流通させず、PDS内の情報の所在を示すアドレスで管理し、適切な権限を持つ事業者のみが参照・利用

グロービス、改変不可のデジタル修了証明書を試験発行

  • ブロックチェーンを用いた修了証明は、文部科学省が認可し学位を授与する教育機関としては日本初
  • 改変のできないデジタル修了証明書を即時に発行し、証書発行の信頼性と利便性を一層向上させることが狙い
  • システムはCredentiaが提供し、MITが開発したBlockcerts準拠の世界標準規格のブロックチェーン証明書を謳う

GE Aviation、航空エンジンむけ部品トレーサビリティ

独Bosch、独エネルギー大手EnBWや独Siemensと共同で電気自動車充電・駐車場支払いプロセス向けプロトタイプ開発

ドイツテレコムのT-Labs、Riddle&Codeと共同でブロックチェーンベースの本人確認・マシン認証・マイクロペイメントを実装したe-スクーター開発

Greensill、サプライチェーンファイナンス(紹介記事

トークントークン、代表者のいない政治団体としてスマートコントラクトとトークンエコノミーを活用した政策課題解決に向け活動(紹介記事

Section2: Articles & Papers

●European Identity & Cloud Conferenceトピック

・Munichでアイデンティティに関するカンファレンスが開催され、分散アイデンティティについて多くのトピックがあったのでまとめる

  • アイデンティティの進化イメージとして、「ネットワーク化・データ共有・シェアリングおよびAI」が進展する中で、どこでも必要なところで使えるアイデンティティやKYC共有、デバイスアイデンティティなどと言った「共有されたアイデンティティ」が必要になっているとのこと。
  • ユニバーサルな自己統治型アイデンティティが求められる背景として、個人データ収集に伴う管理負担・漏洩リスクや規制対応の重さも一因にあげられている
  • 新しいデジタルビジネスにむけて、データ共有とAIによるデータアクセスが重要になっており、そうしたデータ共有の文脈から「共有のユニバーサルアイデンティティ」を必要としている背景もある模様。再利用可能な共有アイデンティティを通じて、既存のKYCプロセスが不要になる可能性も
  • 分散アイデンティティにおける「何故今ブロックチェーンか」については、「発行者単体に依存せずエッジでスケール可能」「共有台帳上で検証できることを通じた信用供与」「ゼロ知識証明を通じたプライバシー提供」の3つを挙げている
  • ブロックチェーンIDのSWOTについては、「S:改ざん困難性」「W:プレイヤーがアーリーステージでソリューションが未成熟」「O:他技術への付加」「T:ハイプ、クリティカルマスへの遠さ」という整理がされている

スマートコントラクト用いた証券規制遵守の自動化についてのレポート

  • 対象としては、適格認定・転売制限など、権利移転にかかるコンプラチェックが考えられる。管理にかかる負荷低減や業務プロセス短縮を見込むことができる。その他、技術面・市場面・法的側面からの課題についてまとめられている

ChainLinkのオラクル活用について

Ether経済とETHの持つ3つの役割

Kikのアセットが証券認定されるかどうか米SECと係争中の件に関するa16zの論点整理

Section3: Future Events

●Multicoin Summit (4/24–4/25 at Half Moon Beach)の模様・動画

Fluidity Summit (5/9 at NYC)動画

Ethereal Summit(5/10–5/11 at NYC)動画33本

Consensus 2019(5/13–5/15 at NYC) 動画

European Identity & Cloud Conference 2019(5/14–5/17 at Munich)動画

Token Summit (5/16 @NYC)

Malta AI & Blockchain Summit (5/23–5/24 at Malta)

SEC FinTech Forum(5/31)

Event Horizon — The Global Summit on Blockchain Technology in the Energy Sector(6/19–6/20 at Berlin)

Crypto Valley Conference(6/24–6/26 at Zug, Switzerland)

Ethereal Tel Aviv(9/15 at Tel Aviv)

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