LayerX Newsletter for Tech (2019/05/13–05/19)

Takahiro Hatajima
May 21 · 13 min read

はじめに: 今週の注目トピック

今週の注目トピックは、Microsoftによる分散アイデンティティシステムIONの発表です。

分散アイデンティティはユーザー自己管理型のアイデンティティと言われますが、そのインフラとして、Microsoftがコンソーシアムチェーンではなく、管理主体の無いパブリックチェーンを選んだことは注目に値すると考えます。パブリックチェーンにおいて顕在化するスケーラビリティの問題については、セカンドレイヤー技術を用いることによって解消し、秒間数万件を処理することが可能としています。IONノードを運用するエコシステムパートナーとして、アイデンティティ関連プレイヤーであるCivicなどのプレイヤーも名乗りをあげるなど、今後の広まりも期待されます。

もちろん実用化にむけては、秘密鍵の管理などといった課題が残りますが、中期的な技術開発・運用面のノウハウ成熟度向上を見据えて、パブリックチェーンの価値に大手企業が注目している好例として、今後の動向に注視したいと思います。

Section 1: Technology

1–1 Bitcoin

BlockstreamLiquid Sidechain上で証券トークンプラットフォームLiquid Securitiesをリリース日本語記事

  • Liquid Sidechainは、2018年10月にローンチした、交換業者むけの低遅延・低手数料ネットワーク(ConsensusでのBlockstreamによる解説スライドはこちら
  • 今回リリースしたLiquid Securitiesプラットフォーム上からは、トークン発行・再発行・法令遵守設定などが可能。ルールに基づき、いつ誰が取引可能かを設定できる
  • アセットの種別・金額などは秘匿化されると同時に、特別な鍵共有を用いて発行者・投資家は監査人に対して選択的に情報共有できることが特徴。また、BitcoinやStablecoinや証券をSidechainでサポートするのと併せ、アトミックスワップで即時交換することによってカウンターパーティリスクを極小化。BlockstreamのGreenウォレットを用いたカストディ提供するとしている
  • Liquid Securities立ち上げにあたり、TokenSoftやBnkToTheFuture・Zenus BankおよびPixelmaticとも提携

Bitcoin Cash、バグを突かれハードフォーク時に一時不安定に

  • Bitcoin Cashは5月15日にハードフォークを実施。ハードフォークは終了したものの、Bitcoin ABCのバージョン0.19.5以前のバージョンに含まれていたソフトウェアのバグを突かれ、一時不安定に
  • ハードフォーク後3時間ほど、トランザクションが詰まった状態(1ブロック内のトランザクション数が少ない状態)が続いた。ハードフォーク後にリリースされたBitcoin ABCのバージョン0.19.6でバグは改修され、安定を取り戻している
  • 昨年11月にBitcoin Cashに導入されたOP_CHECKDATASIG導入に伴って、OP_CHECKDATASIGのフラグをセットし、sigopsをカウントする仕様とした。しかし、メモリプールに記録するコードにはそのフラグが含まれてなかったため、sigopsがカウントされずにメモリプールに記録されることになった。その結果、カウントはされなかったにも関わらず、実態としてsigopsが多数あるという状態になり、無効なブロックと判定され、空ブロックが生成される結果になったというもの

Microsoft、Bitcoinブロックチェーン上のセカンドレイヤーとして稼働する分散アイデンティティION (Identity Overlay Network) 発表(日本語記事

  • 企業がID情報を管理するのではなく、ユーザー自身がID情報を自己管理する分散アイデンティティシステムの構築を目指すもの。人間だけでなく無数のデバイスが、相互運用可能なシステムを介してやりとりできるエコシステム構築を視野にいれている
  • 分散アイデンティティFoundationのオープンスタンダードに準拠するもの。BitcoinブロックチェーンへMerkle root hashを刻む方法を用いて分散アイデンティティシステムを構築
  • 今回はBitcoinテストネット上で稼働するテスト版としての発表だが、Bitcoinチェーン上のセカンドレイヤー技術Sidetreeプロトコルをベースとしている。セカンドレイヤーとして稼働することによって、秒間数万件の処理が可能。データを集中管理しないため、アイデンティティに関わる個人情報の大量漏洩といった事態も少なくなるという期待

Taproot/Tapscript BIPの解説記事

Schnorr署名・MAST・Taprootの図解チャート

1–2 Ethereum

分散オラクルネットワークChainlinkが5/30にメインネットローンチ予定

  • 外部システムとのやりとりを通じて、ブロックチェーン上のスマートコントラクトがデータアクセスできない問題を解決するもの
  • オラクルを、外部世界との接続性を提供するノードとして定義した場合、単一障害点の問題を抱えるため、オラクルノードに問題が発生するとスマートコントラクトもその影響を受ける。そのためChainlinkは分散オラクルネットワークとして、スマートコントラクトへインプットやアウトプットを接続することを通じて、各種APIとの接続や、ペイメントを提供

Ethereum 2.0 フェーズ2

Ethereum2.0のFinality Gadget

1–3 Bitcoin/Ethereum以外

EEA、’Off-chain Trusted Compute Specification V1.0'を発表日本語記事

  • オフチェーン上の端末同士で信頼関係を構築するTrusted Computingの仕組みを実現するAPIの仕様をまとめたもの
  • Trusted Computing技術として、ゼロ知識証明のほか、TEE(Trusted Execution Environment)やMPC(Multi Party Computing)などについて互換性レビューを実施
  • ブロックチェーンへのアクセス権を持つ他ユーザーへトランザクションの詳細情報を秘匿するほか、選択した当事者に対して部分的に情報を開示するといったニーズへの対応

Kaleido、Enterprise Tech Stackを発表日本語記事

  • Kaleidoは、ConsenSysとAWSが提携して取り組んでいるブロックチェーンサービス。今回、資産のトークン化やDapps開発を行う基盤を提供することを通じ、企業間コラボレーションをサポートするとしている

Cornell大のEmin Gun Sirer、Avaをローンチへ

  • Avalanche(Ava)プラットフォームの特徴は、高速ファイナリティ・高スループット・1万-100万ノードまでのスケーリングを謳う
  • マルチVMで、ネイティブトークンAvaと追加トークン生成可能。ステークを通じたSybil攻撃耐性。ガバナンスは投票ベースであり、ステーク量によらず1body 1voteのガバナンスメカニズム

Amazon、PoWとしてのマークルツリー生成で特許日本語記事

ISO/TC307(Blockchain and distributed ledger technologies)最近の動向(2019/02発表分)

Section2: Articles & Papers

2–1 論考

日銀ディスカッションペーパー: 暗号資産における取引の追跡困難性と匿名性(2018/12発表分)

  • 追跡困難性や匿名性を高める技術として、ネットワーク上の匿名通信技術Torの他、ブロックチェーン上のミキシング(CoinShuffleなど)や高度な暗号技術を用いる方法を紹介
  • 高度な暗号技術としては、リング証明およびゼロ知識証明を用いる方法として、信頼できる第三者を用いないもの(CryptoNoteおよびMonero)と用いるもの(Zerocoinなど)について示している。このとき、取引における処理量・データ量をいかに削減するかが課題であるほか、信頼できる第三者を置く場合にその存在をどのように実現するかが課題としてまとめている。不正取引を追跡する監査人機能として、送金時にゼロ知識証明を解くための情報を渡した上で、追跡必要性が生じた場合に限り、監査人がこの情報を用いて送金元などを特定できるようにするなどの案が示されている

日銀情報セキュリティ・シンポジウム(第18回)の模様: 新たな金融サービスを支える高機能暗号(2017/03)

2–2 論文

How to make a digital currency on a blockchain stable

On the Efficiency of Privacy-Preserving Smart Contract Systems

UniquID: A Quest to Reconcile Identity Access Management and the Internet of Things

Impossibility of Full Decentralization in Permissionless Blockchains

Analysis of Committee Selection Mechanism in Blockchain

Ques-Chain: an Ethereum Based E-Voting System

NFTracer: A Non-Fungible Token Tracking Proof-of-Concept Using Hyperledger Fabric

Incentives Don’t Solve Blockchain’s Problems

Diversification Across Mining Pools: Optimal Mining Strategies under PoW

Decentralized Trusted Computing Base for Blockchain Infrastructure Security

LikeStarter: a Smart-contract based Social DAO for Crowdfunding

Trustee: Full Privacy Preserving Vickrey Auction on top of Ethereum

DeXTT: Deterministic Cross-Blockchain Token Transfers

TAPESTRY: A Blockchain based Service for Trusted Interaction Online

When Internet of Things Meets Blockchain: Challenges in Distributed Consensus

A Deep Dive into Bitcoin Mining Pools: An Empirical Analysis of Mining Shares

Harvey: A Greybox Fuzzer for Smart Contracts

An Empirical Evaluation of Selfish Mining and Strategic Mining in Proof-of-Work Blockchain with Multiple Miners

Blockchain-based Data Provenance for the Internet of Things

Blockchain Goes Green? An Analysis of Blockchain on Low-Power Nodes

Section3: Future Events

Fluidity Summit (5/9 at NYC)

Ethereal Summit(5/10–5/11 at NYC)

Consensus 2019(5/13–5/15 at NYC)

Token Summit (5/16 @NYC)

IEEE International Conference on Blockchain and Cryptocurrency(5/15–5/17 at Seoul)

Eurocrypto(5/19–5/23 at Darmstadt, Germany)

Malta AI & Blockchain Summit (5/23–5/24 at Malta)

blockchain.tokyo#19 EDCON Recap!(5/24 at Tokyo)

SEC FinTech Forum(5/31)

Bitcoin Lightning Hackday Munich(6/1–6/2 at Munchen)

Breaking Bitcoin(6/8–6/9、at Amsterdam)

Decrypto Tokyo 2019(6/8–6/9 at Tokyo)

Devcon5(10/8–10/11 at Osaka)

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