(Learn X Creation シンポジウムレポート)情報をつくる時代の学び―子どもの情報発信の取り組み方
講演概要
世界から受け取る情報の量と多様さが増すなかで,真に必要な情報を取捨選択し、自らの情報を発信し得る能力を身に付けることが重要になっています。子どもが大人の情報発信を「学び」につなげるための取り組み方について、ジャーナリストで NPO法人「8bitNews」 代表の堀潤氏にお話しいただきました。
シンポジウムの記録
「たくさんの情報が得られるようになった今、その掌の情報のなかに自分で手に入れたものは何がありますか?その情報の真偽を確かめたことはありますか?」という問いかけの後、NPO法人「国境なき子どもたち」に所属し、ヨルダンやシリアで難民支援をしている松永晴子さんのエピソードの紹介がありました。そのお話には、我々の日常では知り得ない難民キャンプの子ども達の姿がありました。
松永さんは、難民キャンプで子どもたちの選択肢を広げるために情操教育を担っています。難民キャンプの子どもたちに将来の夢を聞くと、医者や学校の先生とほとんどが答えるそうですが、それは難民キャンプに子どもたちが日常のなかで触れる大人は、国連から派遣された大人や教育者しかいないからだそうです。
難民キャンプのなかにある学校で、松永さんは演劇や歌を教えたり、子どもたちに物語を書いてもらったり、みんなの手で作ろうよ、学校に来ようよというメッセージを送り続けているそうです。小さな主語の情報を知ることは共感に繋がるいう堀氏のメッセージに気付かされるお話しでした。
そして、差別や分断を無くすために「伝える人になる」という方法があるということと、伝える、すなわち情報発信のために3つの技術を伝えて頂きました。
①大きな主語ではなく小さな主語を使おう
「北朝鮮は」「韓国は」「日本は」「政治家は」「教育は」という大きな主語が独り歩きしてしまう世の中になった。大きな主語は何かを言っているようで実は何も言ってないんじゃないかなと感じる。大きい主語で話すから、批判が生まれる。小さな主語には批判ではなく共感が生まれる・自分の手で何かをつかむ情報のきっかけができる。
②Oponion(意見)よりもFact(事実)を大切にしよう
意見は多くの事実に基づくものであるからこそ事実に目を向けたい。日本語は主語を置かなくても会話が成り立つし,相手に慮ってもらえる柔軟な言語だからこそ、事実に基づく発信をしたい。
③言葉の因数分解をしよう
「平和が大事だよね」と言われて共感する人はたくさんいるはずです
そもそも「平和」とは何でしょうか?「平和を分解してみようか」と問えば、100人 に100通りの答えがある.いろいろな言葉を分解してみてください。
フェイクニュースやフィルターバブルなど、分断や憎悪を生む情報が蔓延する中、子ども達が「伝える人」となっていく事で、共感を生む情報へのアクセスが増えてほしいものですね。
堀氏の講演最後のメッセージ、子ども達に伝えていきたいです。
「未来を予測する最良の術は自ら創り出すことだ」 堀 潤
シンポジウムの動画はこちら
参加者の感想
★長野県・文教系自営業
孫さんと堀さんのお話を聞きたくてLearn x Creationに参加しました。
SNSの罵詈雑言に、そんなことして何をするの?もっと仲良くなろうよ、と常日頃より感じでいたこともあり、堀さんのお話を聞いて非常に共感しました。「みんな」という言葉があまりにも大きすぎて、漠然としすぎてて人々が振り回されているな、もっと自分をもとうよ、という自戒も込めて感じてい流。これからは,メディアリテラシーやシチズンシップ教育が必要なのだと感じた。
アウトプットやまとめ
たくさんの情報が得られるようになったいま、その掌の情報の真偽はどうなのか,その情報のなかに自分で手に入れたものは何がありますか,という問いが刺さりました。
私たちは,真偽を確かめずに鵜呑みにしてリツイートや拡散してないでしょうか?
子どもの情報環境を管理しようとするのではなく、まずは子どもと一緒にこの情報環境をうまく活用できるようにす努力する姿勢が必要だと再認識しました。
情報を正しく伝える3つの技術(①大きな主語ではなく小さな主語を使おう ②Oponion(意見)ではなくFact(事実)を使おう ③言葉を因数分解して考えよう)を意識して情報発信をしていければ社会はよりよくなることでしょう。
堀潤氏プロフィール:
NPO法人「8bitNews」代表理事 堀 潤
1977年生まれ。ジャーナリスト。2001年NHK入局。「ニュースウォッチ9」リポーター、「Bizスポ」キャスター、「ニッポンのジレンマ」初代MC。2012年、米国ロサンゼルスのUCLAで客員研究員、日米の原発メルトダウン事故を追ったドキュメンタリー映画「変身 Metamorphosis」を制作(京都国際インディーズ映画祭特別賞)。2013年、NHKを退局しNPO法人「8bitNews」代表に。2017年、株式会社「GARDEN」設立。個人やNGO /NPOなどの発信支援のメディアを運営。
ライター:
金森 千春 (私立中学高等学校教員)