おとなの工場見学 ・TRC編

本の物流拠点「新座ブックナリー」へ

Tsutomu Kawamura
Librize
9 min readDec 6, 2018

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「うちの工場、まだですよね? ぜひ見に来てください!」 — 秋頃に、図書館流通センター(TRC)の細川さんからお誘いをもらいました。それから暫くして、やっと伺う機会を得たのが12月の頭、新座市までお邪魔してきた次第です。折角なので、その様子を写真でレポートしようと思います。

Tは図書館のティー

武蔵野線の新座駅から、車で移動すること数分のところに「TRC新座ブックナリー」はあります。TRCといえば、公共図書館や学校図書館向けサービスの中心的な会社。つまりリブライズのライバルです (おい)。そして、ここは、そのTRCの書籍流通の要で、単に本の倉庫というだけでなく、バーコードの貼付、フィルム貼りほか図書館の本に必要な「準備」を一手に引き受ける場所なのだそうです。

ちなみに、TRCは「Toshokan Ryutsu Center」の略だと思うんですが、なんで「Center」だけ英語なんでしょう。この件、聞き忘れてしまったので、またこんど聞いてきます。

倉庫? 工場なの?

物流拠点というと、amazon的な倉庫を思い浮かべてしまいますが、新座ブックナリーでは「装備」の過程があるため、「工場」という側面もあります。ピックアップから装備までをワンストップで行うという点が、こちらの大きな特徴になっています。

  • 書籍の在庫
  • ピックアップ
  • 装備 (ラベル貼りやフィルム)
  • 発送

と、いったお話を伺いつつ、工場(+倉庫)見学が始まります!

案内人は、こちら森岡さん!

今日のツアーの大まかな流れ:

  • 入荷~棚入れ本のピックアップ (既刊)
  • ベルトコンベア萌え
  • 本のピックアップ (新刊)
  • 装備
  • 梱包~出荷

温泉跡地にできた巨大倉庫

10年ほど前から稼働を開始したという、ブックナリーですが、それ以前は温泉だったのだとか。今も源泉が残っているそうですが、残念ながら社員温泉はないそうです。500人も働いているんだから、温泉ニーズは高いと思うんですが…

建物は3つに分かれていて、それぞれ3~4階建て。総床面積は「神宮球場と同じくらい」あります。東京ドームじゃないあたりに若干の控え目さを感じますが、約200万冊は収容可能(※)なので十二分に広いです。※もう一つの拠点と合わせて

書籍が最初に届くのがここ、最初の建物の1階です。細川さん曰く、熟練の「予想屋」たちが仕入れた本がトラックで届きます。曰く「1日6万冊が届いて、6万冊が送られていきます」。

仕分けられた本は、ブックトラックに載せられて各階へ運ばれます。それでは、ブックトラックと一緒に上の階へ。

運び込まれた本は、各通路の本棚の空いているところにランダムに放り込まれていきます。と、聞くと適当なようですが、どこに入れたかは本棚のIDが記録されるので、問題なし。

ここまでで、本の受け入れは完了です。この倉庫に仕入れられた本で、実に図書館から注文される本の実に96%をカバーするとのこと。図書館というターゲットが決まっているとはいえ、すごい数字ですね。新刊本だけでなく、ロングテールのものも相当数が置かれていましたが、返本率は1割程度。あえて「書店」と考えるなら、非常に小さい割合になっています。

続いて、本のピックアップへ。棚を歩くときの順路が決まっていて、どの順番で本をピックアップするかまで含めて、ソフトウェアが勝手に計算してくれるのだとか。

本棚には棚単位で(またはさらに細かく)、番号が振られるいるので、それを頼りに本を見つけます。一般書店と異なり、本当に脈絡なく並んでいるので、ハンディーターミナルが羅針盤替わりです。本だけ見ながら歩くと迷子感が半端ない…。

全長2kmのベルトコンベア

「オリコン」って何かと思ったら、折り畳みコンテナのことでした。こちらに、本をピックアップして入れて、ベルトコンベアに流し、各階各建物を流れつつ他の本も合わせて、最終的に梱包の場所まで辿り着きます

ベルトコンベアは、建物中に張り巡らされて開設時で全長2km。現在は「もう少し長いはず」。

時に、分岐を経て…

山を越え…

谷を降り…。工場好きとしては、見続けてしまい切りがないのでこの辺で。

図書館のための本屋

希望書籍の96%を抱えているというと、もはや「取次」との違いが良くわかっていない私ですが、位置づけとしては「書店」なのですね。ただ、店舗を構える一般書店とは違い、あくまでも物流拠点です。新刊倉庫に足を進めると、物量に圧倒されます。(たぶん、仕入れ担当の方だと卒倒しそう)

広辞苑だけで、いったい何十冊あるのか…

紙芝居や大型絵本は、図書館ならではのラインナップではないでしょうか。

こちらは「100かいだてのいえ」シリーズ。長いです。

装備

図書館の本といえば、装備 (分類ラベルやフィルム貼り) ですね。この工程は、150人体制ですべて手作業。図書館からの指定(端から15mmとか)に答えて、ラベルの位置などにきめ細かな対応が入るそうです。

ラベルの印刷パターンも多種多様。

RFIDのタイプもそれなりにあるようでした。

様々な指定に対応すべく社員が発明したという、道具の数々がありました。

ちなみに、検品用に使っていたバーコードリーダーは、リブライズ推奨機種と同じでした。安定のビジコム。

続けての工程は、別の階に移動して、フィルム貼り。うず高く積まれた本に高速にフィルムが貼られていきます。熟練の方は1時間に40冊のスピードだとか…

一角に置かれた色鉛筆セットが目を引きました。こすれ等が発見されると、フィルムを貼る前にその場で修復してしまうとか。

極めつけは、フィルム専用に調整された裁ちばさみ。切れ味を維持するために「研ぎが大事」って言ってましたが、本当ですか?

梱包と出荷へ

ここまでの工程を経たものは、再び「折りコン」に載せられて、建物の1階に集結し、梱包作業を待つ間、ここで一時待機します。この待機場所へのコンテナの出入りは完全に自動化されていて、シュンシュンッというロボットの素早い動きが見れます。工場好きには見どころの一つですね。

見るのに夢中で、分かりやすい写真がなくてすみません…

段ボールの整形も、もちろん全自動。タイミング悪く、この機械は動いていなかったのですが、森岡さん見せられなくてちょっと残念そう。

小麦由来という緩衝材。あたたかそうです(違う)。

と、ここまでで、すべての工程を、見せていただくことができました。

本と機械に囲まれて大満足の時間でした。しばしば、機械に張り付いて動かなくなってて本当にすみませんすみません。最後に、消失点が見えそうな1階ベルトコンベアの様子を見つつ、工場を後にします。

最後に

今回、私ひとりで楽しんでしまったことを深く反省し、次回、また同じような機会があったら、リブライズユーザにも参加を呼びかけようと思います。逆に、本に関する場所で行ってみたいところがあったら、ぜひリブライズも誘ってください。あるいは個人で行きにくいところも、企画を持ち込んでもらったらなんとかできるところもあるかもしれません。

TRCのみなさん、お忙しい中、ご対応ありがとうございました。

アテンドしてくださった、瀬戸さん(左)、細川さん(右)

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Tsutomu Kawamura
Librize

A programmer. A product designer at Librize. I opened OpenSource Cafe in Shimokitazawa (Tokyo) in 2011. Now building the second place in Shiratori (Chiba).