図書館探訪 2019

Tsutomu Kawamura
Jan 21 · 10 min read

建築好きやインテリア好きに「ギャラ間(ま)」の愛称で親しまれる場が東京・乃木坂にあります。TOTOが「ギャラリー・間」として1985年にオープンしたギャラリーで、30年以上に渡り建築に関するユニークな展示を行っています。そして、併設のミュージアムショップが知る人ぞ知る「Bookshop TOTO」。名前が示す通り、展示に関連するもののほか、建築やインテリアの新刊書店としても全国的に貴重な存在です。

今回の訪問先「マガジン・ライブラリー」は、その書店内に置かれた図書室。いったいどんな場所でしょうか? 機会をいただいたのでレポートして来たいと思います!

新国立美術館の近く

乃木坂駅を降りてすぐの青いビルが今回の目的地です。TOTOの文字が遠くからも見えます。六本木ミッドタウンからも数分の立地です。六本木の再開発以前からあるので、歴史的な順序としては「ギャラ間の近く」に新国立ができたというべきかもしれません。(実際、再開発以降、来訪者はだいぶ増えたと聞きます)

垂れ幕の展覧会は、残念ながら昨年末まで。いつもながら太っ腹な「入場無料」。近づくと、Bookshop TOTOの文字が看板が。

TOTOは言わずと知れた水回りの会社。建物の1階部分はグループ会社のショールームになっていました。あ、自宅のシャワー回りの相談をして来ればよかった…

1階部分は、海外製品を扱うTOTOのグループ会社「セラトレーディング」のショールーム

Bookshop TOTO = ミュージアムショップ

普段なら上階の展示を見てからですが、今日は2階のBookshop TOTOに直行します。エレベーターを降りて左手に行くと、おしゃれな文具店という雰囲気のミュージアムショップが現れました。

都内でも珍しい、建築・インテリアだけに特化した新刊書店です。ギャラ間の展示と連動してはいますが、展示がなくても年間通して営業しています。分類が工夫されていて、つい、立ち読みして一日過ごしてしまいそう…。ぐっとこらえて奥のライブラリーに足を運びます。

※通常時、月祭お休み。展示のない期間は、土日月祭お休み。

ところ狭しと置かれる、書籍と雑誌。関連雑貨など。

マガジン・ライブラリーへ

書店を抜けて、奥のライブラリーに到着しました。出迎えてくださったのはこちら、TOTO文化推進部の加藤さんと吉本さん、Bookshop TOTOの勝野さんのお三方でした。

貴重なお時間、ありがとうございました m(_ _)m

加藤さんと吉本さんはTOTO出版の「中の人」でもあります。それもそのはず、この場所にはTOTO出版のアンテナショップという側面も。一方の、勝野さんはおそらく店頭でお世話になる可能性が高いです。ミュージアムショップという側面と、ライブラリーがあるためか、書店員でもありながら「司書さん」の印象のある稀有な方でした。

入口から正面に進み、カウンターを右手に進むと「マガジン・ライブラリー」。 ※Bookshop TOTO サイトに掲載されたフロア図に加筆

ライブラリーコーナーは、図で示すところのオレンジ色の範囲なので、書店の3分の1くらいを占めていますが、少し奥まっているので、見落とさないで!

中に入ると、ぎっしりと並ぶ、壁一面の建築雑誌に圧倒されます。AXIS, GA, 建築文化に新建築、商店建築もあるし…というか、私が知っているレベルだと全部そろってるような…。さすがに、一般向け(リフォーム系とか)や施工者向けの雑誌はないものの、その時代の建築を語るに十分ではないかと感じます。

特筆すべきは、国内に限らず海外雑誌も取り揃えているところでしょう。国内で読める場所が限られるため、入荷時期になるとそれを狙って読みに来る学生さんもいるのだとか。

ABITARE、ARCHITECTURAL DESIGN、ARCHITECTURAL RECORD、ARCHITECT、A.I.CREE、BLUE PRINT、CASABELLA、DOMUS、EL CROQUIS、INTERIOR DESIGN、AA PROJECT REVIEW、THE ARCHITECTURAL REVIEW、AXIS、a+u、a+u臨時増刊、ELLE DECO、CASA BRUTUS、建築雑誌、建築知識、建築文化、CONFORT、GA ARCHITECT、GA JAPAN、GA DOCUMENT、GA HOUSES、JA、住宅建築、商店建築、新建築、新建築 住宅特集、日経アーキテクチュア、美術手帖(BT)、モダンリビング、TOTO通信 ※2019年1月現在の所蔵誌

2000年代以降のバックナンバーが基本そろっているほか、それ以前の創刊号から所蔵しているものも。閉架書庫に移しているケースがあり、その場で見つからなくても聞いてみるのが良さそうです。なお、貸出やコピーには対応しませんが、最新号と一部のバックナンバーは書店でも取り扱っているとのことでした。

閲覧席が設えられていて、その場で広げて読むことができます。常連さんになると、ここを展覧会の待ち合わせにも使うそうですが、なかなか贅沢な待ち合わせ場所です。

ライブラリー内の閲覧席。3席ほど。コピー・写真撮影は不可とのこと。

出版 + ギャラ間 + ライブラリー

加藤さん、吉本さんに、開設までの経緯を伺いました。もともとは1987年にTOTOの”人と水と建築”に関わる図書館「ライブラリー・アクア」として始まったのだそうです。その当時は、別の階で運営されていたものが、2001年からBookshop TOTO (2階)に併設される形になります。その時点で、書籍の多くは公共図書館などに寄贈し、「雑誌」に対象を絞った今の形になります。現在は、シンプルに「マガジン・ライブラリー」の呼称に落ち着いたようで、「洋書については雑誌以外もあるんですけどね」とのことでした。

当時の面影を残す「Library AQUA」の蔵書印

ギャラリーとしてオープンしたのが三十数年前、その数年後にはTOTO出版も始まりますが、通底するのは「建築文化を発信する」という視点です。この点、当たり前のようにさらっと言われていましたが、それほど綿々と続いている活動なのでしょう。その姿勢は、ギャラリーへの入場は一貫して無料というあたりにも表れています。「ライブラリー・アクア」(から後にマガジン・ライブラリー)が生まれたのも、自然な流れだったのだと想像します。

お話を聞いていると、ギャラ間と、出版とライブラリー、ひとつずつではなく、全体で成立しているのが良くわかります。ギャラリーや美術館としては珍しく、必ず展覧会にあわせてISBN付きの書籍が出版される点、以前よりかっこいいなーと思っておりました。

※補足: 国内では美術展のパンフレットは書店流通させないことが多く、ISBN付きは貴重です。少し前になりますが、個人的には2012年の「犬のための建築展」が楽しかった…。手元にその時の書籍も残しています。

アナログだけど、本気のリファレンス

次に、勝野さんに見せていただいたのは、蔵書目録です。こ、これは一覧式帳簿? 予想を超えたものが出てきましたが、確かに雑誌のバックナンバー管理であれば、理にかなっています。使い込まれたこの帳簿に、また今月も一冊一冊記録されていくのでしょう。

秘蔵の蔵書目録。懐かしい電話帳みたい…。年月が偲ばれます。もし、今後データベース化するときは、ぜひリブライズを! 😎

蔵書については、さまざまな問い合わせがあります。「〇〇の何号はあるか」という簡単なものから、時には「〇〇建築の写真を探している」というような漠然とした場合も。そんなときは「話題になった建築だから、当時の雑誌で必ず特集があるはず」と、勝野さんは推理を進めていくそうです。これは、もうかなりエクストリームな部類の「リファレンス」ですね。

無理しない範囲で続けていく

最後に、民間でありながら、これだけライブラリーが続いてきた秘訣を伺いました。その答えは、まさかの「特にない…?」というものでした…が、しいて言えばというところで、いくつか聞き出しました。ひとつには、TOTO通信(会社誌)も展示していて、「社内外向けの役割がはっきりしている」点。CSR活動の一環として行っていても何もかもはできません。「貸出はしない」という決定を含めて「無理しない範囲で」「ルールを決めて」と話されていた点が印象に残りました。

また、ライブラリーを訪れた人に「喜んでもらうことを考えて」続けているとも。その積み重ねがこそが、「秘訣」なのだと思います。本当に「特にない」わけではなくて、お三方にとってはもう当たり前すぎるのでしょうね…。やはり年季が違いました。

さりげなく飾られていたのは、トイレの折り紙かしら?

さて、今回の訪問の際は、展示の合間で絶賛工事中でしたが、今月1月24日から新しい展覧会「RCRアーキテクツ展 夢のジオグラフィー」が始まります。建築展 + 書店 + ライブラリーは満足度の高い週末の過ごし方になりそうです。東京方面にお越しの際、ぜひ足を運んでみては?

次の展覧会「RCRアーキテクツ展 夢のジオグラフィー」は1月24日から

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Tsutomu Kawamura

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リブライズの工場担当。下北沢オープンソースCafeのマスター。本当はプログラマーらしいです。

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