ホステルのテクノロジー化、ワークスペースから生まれるオープンイノベーション…“シェア”がつくる空間の未来像。

#SharingEconomy 7/9

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2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「シェアリングエコノミー―空間を活用した新たな価値観や収益機会の創出」と題して行われたセッション(全9回)の7回目をお届けします。and factory、WeWork、スペースマーケットそれぞれが捉える、空間活用の新たな可能性とは。

登壇者情報

  • Chris Hill 氏 /WeWork Japan CEO
  • 小原崇幹 氏 /and factory株式会社 代表取締役CEO
  • 山崎剛 氏 /株式会社グローバルエージェンツ 代表取締役
  • 重松大輔 氏 /株式会社スペースマーケット 代表取締役(モデレータ)

テストマーケティングの場としての、テクノロジーホステル

小原: 我々としては、 &AND HOSTEL を中心にいろいろな可能性があると思っています。山崎さんも言っているように、場所やビジネスの再定義というのは、いま本当にどんな企業にも必要なことだと感じています。

今日いらっしゃっている皆さんも、登壇している我々やほかの会社もそうですが、不動産業界やテクノロジー業界から何かしらの新しいチャレンジをしようと思っていらっしゃるはずです。新しいビジネスの種がいろいろあるのではないか、こういうことができるのではないか、ということは本当に多くあると思います。

その中で我々が感じているのは、我々は &AND HOSTEL というものを運用していますが、元々はアプリケーションの会社から始まっていますし、テクノロジー寄りの側面というのは強いんですよ。その視点で見ると、IoTという存在はすごく生活に密着した、リビングテックで言うとテクノロジー側にすごく寄っているものだと思うのですが、その中でシームレスに生活の中に入っていって、体験であったり与えられる価値というものを、めちゃくちゃ変えることができるんじゃないかと。生活を変えるレベルのものが、そこから起きるのではないかと思っています。

そういうテストマーケティングの場所として、 &AND HOSTEL をどんどん使っていこうと思っています。まずメーカーの方々にデータを返したりですとか、マーケティングのパーソナルフェーズとして機能するような場としてつくったりもしています。

洗濯機が“医療機器”になる時代

例えば、洗濯機や掃除機は今は家電と言われていますが、海外のあるメーカーさんの話だと「ヘルスケア機器」になってくると言われるんですね。

洗濯機で、Tシャツなどパーソナルなものを洗濯しますよね。その中に入っている皮脂とか油とか、そういう成分の分析も毎日して、風邪の兆候や病気の兆候がわかる。掃除機で毎日部屋の掃除をすると、それでハウスダストや部屋の状況を管理して異常を検知したりすると。そういうものは、実はもう開発が進められているんですね。

そうなってくると生活自体が変わりますし、LivingTechという文脈の中でも、生活や住むということの定義自体も変わってきます。それに対して、ビジネスチャンスというのはめちゃくちゃありますし、それを真剣に考えていく時期だと思うんですね。

我々としても今、 &AND HOSTEL を通して、実は国立大学のいくつかと研究を進めています。実際に &AND HOSTEL に泊まっている方たちにプロダクトを試してもらって、それから大学と一緒にプロダクトを産出しよう、そういった工夫をしています。つまり、 &AND HOSTEL は、マネタイズとしての機会でもあるんです。

ホステルとしての運営はもちろんしているのですが、そこから新しい価値などをつくっていける場所として今後成長させていき、and factory全体として「テクノロジー」、目指すべき未来として今は「Smartphone Idea Company」と標榜しているのですけれど、パーソナルなデバイスによって我々の生活の価値はめちゃくちゃあがると思うので、いろいろチャレンジしていきたいと思っています。

重松: ありがとうございます。それでは、Mr.Chris、お願いします。

ワークスペースは、オープンイノベーションを生み出さなければならない

Chris: 現在、ワークスペース、そしてワークスタイル、働き方の革命が大きく起こっていると考えています。ワークスペースというのは、クリエイティブであり、かつインスパイアされる場所である必要があります。それが何を意味するのかというと「ワークスペースはオープンイノベーションを生み出さなければならない」ということです。

オープンイノベーションとは何か。グローバルな多国籍の大企業と、中規模・小規模そして起業家の皆さまが同じスペースで一緒に仕事をすることによって、例えば小さな会社もしくは起業家の方々がそこで大きな大企業のリソースを使えたり、また大企業がこういう小さな会社からアイデアをいただいたり、そうした交流が行われます。

また、「新しい製品を試す」といったフォーカスグループなどの活動も、そうした交流から生まれると思います。このオープンイノベーションこそ、ワークスペースの未来であると考えます。

「夢が先・お金はあと」の時代に、ワークスペースはどうあるべきか

ワークスペースというのは、スペースマーケットさんが仰ったように、仕事だけでなくより全体的な、ホリスティックな生活の体験というものを提供することが必要です。

ただ単にリビング、生活の糧ではなく、ライフそのものをつくり出すものでなくてはなりません。これからは、各個人が自分の夢や情熱を追いかけていくことにより、金銭的なものはあとからついてくる、というものになってくるでしょう。

例えば、私どもはどんなコラボレーションを提供しているのか。東京の方が私どものアプリを使ってグラフィックデザイナーを探した場合、東京だけではなく、カルフォルニア、ロンドン、ベルギー、シンガポール、インド、チャイナ、そういう国々のグラフィックデザイナーから返事がきます。そのような形で、先ほど話にもありましたが、こういうコラボレーションの垣根をグローバルのレベルでなくしていこうという思いでやっています。

“シェア”が当たり前になれば、生き方が変わる

重松: インターネットが生まれて20年、iPhoneが生まれて10年。次の10年は何が来るのか。個人がどんどんチャレンジできる、選択肢がどんどん増えてくる、そんな時代になっていき、そこを支えるのがテクノロジーだと思っています。

個人の選択肢がすごく増えて、やる気のある人は、地方にいても無名でも親の肩書がなくても、やる気があれば何でもチャレンジできるような、そういう世の中になってくると思っていて。

我々が、まずはパーティーのあり方を変えたり、ミーティングや働き方を変えたり。これからシェアが一般化していけば、リビングというか生き方、住まい方、そういうものも変わってくると思います。

自分が好きなときに、好きなように、好きな人と、いろいろなことにチャレンジできる。チャレンジがあふれている国が、本当の豊かな国だと私は信じていますので、そうした選択肢を可能な限り増やしていく、そういうプラットフォームを志向していくところです。

直近、いろいろなスペースのプロデュースをいろいろな会社さんと手がけていて、これから面白いスペースをやっていきます。あと、ワークスペース。会社のスペースの活用とか、そういうあり方も今変わりつつありますし、そもそも家自体もシェアを前提にした家づくりとか、そのスペース運用で家賃をまかなったり、そういう商品展開もできますし、それを前提とした内装をつくったり。今、いろいろなやりたいことがいっぱいありすぎて優先順位をつけるのに困っています。本当に楽しい時代が広がっているかなと思いますね。

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