シェアスペースに、コミュニティマネージャーは必要か?WeWork、ソーシャルアパートメント、&AND HOSTELの結論。

#SharingEconomy 9/9

--

2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「シェアリングエコノミー―空間を活用した新たな価値観や収益機会の創出」と題して行われたセッション(全9回)の9回目をお届けします。会場から寄せられた「コミュニティづくりの仕掛け」という問いをきっかけに繰り広げられた、各社のコミュニティ論とは。

登壇者情報

  • Chris Hill 氏 /WeWork Japan CEO
  • 小原崇幹 氏 /and factory株式会社 代表取締役CEO
  • 山崎剛 氏 /株式会社グローバルエージェンツ 代表取締役
  • 重松大輔 氏 /株式会社スペースマーケット 代表取締役(モデレータ)

コミュニティマネージャーは必要か?

重松: ほかに質問はありますか?こういう機会もなかなかありませんので、どうぞ。

質問者3: 三井不動産の太田と申します。シェアリングエコノミーというのは、コミュニケーションの段取りはすごく納得するところです。

その反面、我々が日本人だからなのかわかりませんが、人が揃ったからコミュニティが生まれるかというと、なかなかそうはならないところがあるのかなと。

例えば、今日となりに座っている方と挨拶をして、何かをしたかと言われると、まだ何もしていていません。我々もコワーキングスペースを運営する中で、コミュニティをつくるためにコミュニティマネージャーのようなスタッフを入れて、「こういうことで困っている」と聞いたら「あの人とあの人を会わせたらいいかな」とか、そういう仕組みをやっています。

今回登壇された方々のお話でも、コミュニティは大事だというお話がある中で、コミュニティをどうやってつくっていくのか。それぞれ工夫や仕掛けがあるのかと思うのですが、そこを教えていただけたらうれしいです。

重松: 山崎さんのところは、コミュニティマネージャーはいますか?

山崎: うちは特にコミュニティマネージャーのような人はいなくて。こういうものって基本的に選択だと思っているので、どんなにコミュニケーション好きでも四六時中シェアしてコミュニケーションをとりたいという人はあまりいないと思うんです。

そういう気分になったり、シェアしたい、コミュニケーションをしたいと思ったときに、ちゃんと選択肢がある。その仕組みを整えておくことが大事だと思っています。そういう意味では、ホテルやワークスペースというのは、ある程度自分の生活とは別次元での1泊や時間単位の“非日常”として、シェアや交流の体験ができるので非常にやりやすいと思います。

既存のマンションをソーシャル化しても、交流は生まれない

一方、ソーシャルアパートメントというのは、さらに日常の要であるメインの生活スペースで“非日常”もつくっていくので、難しい部分だとは思います。それだけに、我々はその中でもプライベートとソーシャルを完全に分離することを大事にしています。自分の家の中を区切っていくというか、1人でいたいときのための空間をきちんと用意しつつ、コミュニケーションをしたいときはラウンジに行けばいいと。

たとえば、僕らが大事にしていることは、マンションのエントランスから自分の部屋に帰るときに、ラウンジは絶対に通らないで帰れる動線にするとか。要は、ラウンジは美容院と同じで目的型スペースなので、少し外れたところにあるくらいで良いんです。逆に、そちらのほうが喜ばれます。そういう選択肢を住宅の中に用意しておくというのは、長期的にコミュニティを継続していくために非常に重要であると思います。

そうは言いつつ、僕らは普通のマンションをリノベーションしてソーシャルアパートメントに変えたことも何度かあるのですが、これは難しいと感じました。やはり普通のマンションに住んでいる人に、「ラウンジを作りました。これからソーシャルアパートとして運営していくので、どうぞ交流してください」と言っても、なかなか響かない。

だから入り口の段階でそういう発信をして、そういうことに興味のある人に入ってもらうというのは、必要条件として考えなければいけないところだと思います。

「共通の興味」があれば、人は自ずと交じりあう

重松: &AND HOSTEL は何かありますか?

小原: うちはホステルなので、普通にラウンジで交流するということをメインにしていますね。女将みたいな方が1人います。いろいろな国籍の方がいるので、その国籍の方を繋ぎ合わせて通訳をして、異文化で触れ合ったりというのは。そもそもホステルはそういう場所なので、それはみんな楽しんでやっています。

重松: では、WeWorkさん。

Chris: 私どもは、世界に1,000人コミュニティマネージャーがおります。それを踏まえたうえで、今までいろいろな国籍の方を観察していましたが、それが日本人であろうがアメリカ人であろうが、中国人であろうが、皆さんそのトピックに興味があれば自然と人が集まってくるという傾向があります。

例えば、このディスカッションのあと、5分間の休憩の間に皆さんがコーヒーを飲みながら、強く感じたことがあれば、自然とコミュニケーションが発生していくのではないかと思っています。共通の興味というものがあれば自然に人は集まり、自分のやっていることや目標や夢を語る、それが本来人間の持っている本質だと考えています。

私たちの役目は、人間がこうした本質をもっていて、より繋がりたいという気持ちがあるという前提で、スペースをデザインすること。人が繋がりやすいスペースをデザインするというのが私どものミッションになると考えています。

重松: ありがとうございます。それでは、時間がきましたので、本日は以上とさせてていただきます。

シェアリングエコノミーという切り口で、WeWorkさん、and factoryさん、ソーシャルアパートメントさん、スペースマーケット、それぞれのいろんな切り口でお話をお聞きしたわけですが、本当に境界線がどんどん溶け合っていって、働き方も、住まい方も、遊び方も、いろいろ変わってくる時代なんだなと感じました。ぜひ、これが終わったあと皆さん名刺交換などをしていただいて、これをきっかけにビジネスにつなげていただければと思います。

本日はありがとうございました。

(終わり)

--

--