LivingTech 2017 総括―建築・不動産・テックの境界が溶け合う、新たなコミュニティを。

#ClosingSession 6/6

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2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「LivingTechの価値と未来」と題して行われた最終セッション(全6回)の6回目をお届けします。LivingTech カンファレンス2017もいよいよ大詰め。発起人、そして登壇者たちは、このコミュニティにどんな可能性を見たのか?

登壇者情報

  • 井上 高志 氏 /株式会社LIFULL 代表取締役社長
  • 内山 博文 氏 /u.company株式会社 代表取締役 , Japan.asset management代表取締役
  • 中村 真広 氏 /株式会社ツクルバ 代表取締役 CCO
  • 上野 純平 氏 /リノベる株式会社 , LivingTechカンファレンス発起人
  • 伊藤 嘉盛 氏 /イタンジ株式会社 代表取締役CEO
  • 重松 大輔 氏 /株式会社スペースマーケット 代表取締役
  • 山下 智弘 氏 /リノベる株式会社 代表取締役
  • 佐藤 純一 氏 /株式会社SuMiKa 取締役(当時)/ モデレータ

テクノロジーは手段。今こそ「目的」を問い直すべし

佐藤: このセッションも実は全然時間がなくて、もうおしまいなんですよ。

この話自体をもっとしたいんですけど、今日のトークセッションはここまでということで。井上さんから順々に、今日の総括的なお話をお願いします。

井上: 手短にいろいろお話させていただくと、ここにせっかくホットなコミュニティができたので、いま申し上げたような「ありたい社会・未来」をみなさんと一緒に作っていく、そういうムーブメントを皆さんとここから作れたらなと思っています。そのためには、飲んで一緒に食って(笑)。このあと楽しみにしています。

1つだけ宣伝です。「Living Anywhere」はオープンイノベーション型のプロジェクトです。「Living Anywhere」で検索していただくと、公式サイトが出てきます。コンタクト欄にメールアドレスがありますので、もし「自分も関わりたい」と興味をお持ちいただいた方はぜひご連絡ください。以上です。今日はありがとうございました。

佐藤: 続いて内山さん。

内山: 僕は今、会社をやめていろいろとコンサルをやったりしているので、先ほどの話も含め、この業界がもっとよくなって、みんなが儲かるようにならなくてはと思っています。

その中でテクノロジーの話をするときに必ずひっかかってくるのが、テクノロジーありきではなくて、誰のために何のために、僕らはビジネスをしているのか、サービスを提供しようとしているのかというところがハッキリしていないと、テクノロジーがテクノロジーだけで終わっちゃうことがすごく多いと思います。

不動産のマーケティングでは、最後に契約でハンコを押すまでがマーケティングだと思っているので、とりあえず入り口のプロモーションして終わりではなく、バリューチェーンをしっかり組んで、誰のための何のためのサービスかをしっかり構築して初めてテクノロジーが生きる時代だと思います。

そこをしっかり考えて設計していけると、もっとテクノロジーを使おうという気にもなると思うし、一言でいうとマーケティングなのですが、もう少しそこを深掘りしていけるような議論ができると、新しいものができるような気がします。

みなさんにお願いですが、登壇者のみなさんもそうですが、来年、横のつながりで何か一つぐらい“コト”が起きているくらいになればと思っています。今日こちらにいらっしゃるみなさんと我々とでまた新しいことができるような、そんな輪になればなと思っているので、オープンイノベーションのきっかけとして、この場を捉えていただけるとありがたいと思っています。以上です。

井上: 一つだけ。ここの本社オフィスは彼、内山さんに総監督になっていただき、フルリノベーションしていただきました。こんな感じにつくりたいなという人は、ぜひこのあと内山さんのほうに。

内山: 大変でした。社長がわがままなので(笑)。

テクノロジー化がもたらす“アナログ”のチャンスを見逃すな

佐藤: 続いて、中村さんお願いします。

中村: 全然関係ない話からなんですが、最近ちょっと実家に帰って、そういえば祖父からもらった一眼レフがあったなと思って、フィルムカメラを引っ張り出してきたんです。40年前のカメラで、アナログでオートフォーカスでもないのですが、使えるかなと思って修理してみたら無事使えたんです。

このご時世、フィルムが1本24枚撮りで700円ぐらいするんですよね。とても贅沢で、それを現像するのも大変だし手間もかかります。その場で写真の確認もできないし、送れないし。不便なことだらけです。ロー・テクロノジーじゃないですか(笑)。当時は最新のテクノロジーだったんでしょうけどね。でも、不便だけどとても贅沢だなと思って、大切な写真はそれで撮ろうと改めて思いました。

今日のセッションの中でも、“新しい贅沢”といった議論になりました。VRなどの技術が進んでいくと、時間・空間の制約を超えるようなビジネスモデルを空間産業として生み出せるかもしれないと。進化していくのは時代の流れとしてあるものの、それが進めば進むほど、逆に時間・空間に制約される体験のプレミア感が高まるよねという話になって。たしかにそれは、両サイドともに進化しなくてはいけないんだなと思ったんですよね。

今回はLivingTechなので、Techに時間を置きながらセッションが進んでいったかもしれないのですが、逆にLivingTechが進めば進むほど、超アナログなプレミアな世界も広がっていくと思います。ですので、我々と同じく建築・不動産の業界の方もいらっしゃると思いますが、むしろ「アナログ側もプレミアにしていきましょう」ということを最後に言いたいなと思いました。以上です。

今、ここから始まる、“L”と“T”の交わり

佐藤: では、上野さんよろしくお願いします。

上野: 本当にお越しいただいてありがとうございました。

最後に、LivingTechのロゴマークの意図をお伝えしたいのですけれども、まさに佐藤さんが最初に仰ったように、縦糸と横糸をどんどん交わらせようと。そして、よーく薄目で見ていくと、「L」と「T」がなんとなく見えてきます(笑)。

Lの交わり、Tの交わり、LとTの交わりと、さまざまな交わりをたくさん生み出したいんですね。そのために、セッションの組み方も、ただ登壇者が一方的に話すだけではなくて、絶対に30分以上の休憩時間を入れるようにしました。おいしいコーヒーをお出ししたり、この後のパーティでもおいしい食事が出ます。縦と横で交わって、どんどんいろいろなことができたらと思っています。

今回、1回目にも関わらずたくさんの方にお越しいただき本当に感謝しています。内山さんが仰ったように、来年には事業提携がどんどん生まれているとか、井上さんが20年以上やってこられた“非対称性をなくす”というチャレンジが、今はLIFULL 1社がやっていることかもしれませんが、ここにいる人たちが交わることで同じ意志を持った人が増え、その動きが加速する。そんなことが実現していけばありがたいです。今日はありがとうございました。

そして、LivingTech 2018へ――

佐藤: 実行委員会メンバーの重松さん、伊藤さん、山下さんからも、一言ずついただいていいですか。

重松大輔 Daisuke Shigematsu / 株式会社スペースマーケット 代表取締役

重松大輔氏(以下、重松): 今日はみなさん、お疲れさまでした。

私からも最後に、いいまとめではないんですけど、シェアリングエコノミーでもそうなのですが、これからやっぱり個の多様性。そこが極限まで活かされる、そういう世界になるんだなと。今日の話の中でも、LivingTech、生き方そのものが本当に変わってくるんだなと感じています。

先ほど中村さんが仰っていた「アナログのプレミアム感」という話がすごく腹落ちしていて。いまいろいろなことが極限まで効率化されて、自分で好きにできるようになってきていますが、一方でスペースマーケットの利用者にも多いのが“あえてひと手間かける”みたいな。リアルで会ってイベントやって、あえてひと手間かけて、みんなで一緒に料理を作ったりするような、そういうパーティ利用がすごく伸びているんです。

そこで生まれた時間、極限まで効率化されることによって生まれた時間で、人間本来の豊かな、アナログなことをする。そういう世界にどんどんなっていくのかなと思いました。今日はみなさん、おつかれさまでした。

伊藤嘉盛 Yoshimori Ito / イタンジ株式会社 代表取締役CEO(写真右)

伊藤嘉盛氏(以下、伊藤): 本日はありがとうございました。5年前を考えると、このような会ができるとは全く想像がつかなかったなと思っています。この5年間で日本の不動産テック企業がすごく増えていて、段々とエコシステムになってきているのを感じます。

この会をもとに新しいイノベーションが生まれたとか、日本の不動産業界が5年でできるものが2年でできたとか、そういったムーブメントのきっかけになればと思っていますので、引き続き第2回、3回ということで続けていければいいなと思っています。ありがとうございました。

山下智弘氏(以下、山下): リノべる山下です。今日はどうもありがとうございました。先に井上さんが仰っていた、多様性を受け入れるプラットフォーム、これすごいスケールで、なるほどと思いました。

僕たちはリノべるという会社でリノベーションをやっていまして、解決できることが結構あるなと思っています。今の日本の住宅業界、リノベーションで生活を、Livingを変えることができると思っているのですが、もちろんそれだけではできないこともたくさんあります。

山下智弘 Tomohiro Yamashita / リノベる株式会社 代表取締役

リノベーションされた方が、その家にいろいろな人を呼んでクリスマスパーティや子供の誕生日パーティをする。そうした習慣が根づくことで、家の中をもっと工夫しようとするモチベーションが生まれ、それで例えばインテリアにお金を使うようになる。そんなふうに経済が回っていけば、もっともっと楽しい、自慢できる生活ができるようになると思うのですが、実際はなかなか最初のうちだけで継続しないことが多いんです。

そんなところを、テクノロジーで変えていくことができないか。例えば、クラウドクローゼットのようなサービスがあれば、カーテンを季節に合わせて変えてみるとか、そんなことも気軽にできるのかなと思います。そうした可能性が、このLivingTechのTechの部分にあるのかなと思っています。

この会は弊社の上野が発起人となって動き出して、初めはどうなるのかなと思いながら。キックオフをしたときも、井上さんから喝が入りまして、「こんな集客でどうするんだ」「しっかり集客しろ」と……ということで、みなさんにご協力いただいて。何とか無事に。

井上: 1ヶ月前で集客が50人ですよ(笑)。

山下: ごめんなさい、50人でしたか。まず御礼を言いたいのが、第1回なのに200名以上の方々にご参加いただきまして、本当にありがとうございました。

あとはスタッフのみなさん、今日LivingTechのTシャツを着ている方々です。とてもホスピタリティにあふれていて、僕たち迷うことなく動くことができました。本当にありがとうございました。

本当にこの第1回で終わることのないように、2回、3回とつなげていきたいというのは、僕たち全員が思っていることだと思います。ぜひ今日お越しいただいたみなさまが、お聞きになった内容をシェアしていただいて、いろいろな場所でお話いただき、次回以降の開催につながることで、LivingとTechがつながる新しい世界が実現できると思っています。本当にありがとうございました。

佐藤: では、実行委員会のメンバーもう一度、改めまして今日一日ありがとうございました。

(終わり)

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