不動産テックは、業界の勢力図を一変させるのか?

#CrowdFunding 2/9

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2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「テクノロジーで生まれる新しい不動産業の在り方」と題して行われたセッション(全9回)の2回目をお届けします。今回は、インベスターズクラウド松園氏の問題提起から、「不動産とテクノロジーとの融合の先」についての議論の模様をレポート。

登壇者情報

  • 鬼頭武嗣 氏 /株式会社クラウドリアルティ 代表取締役
  • 松園勝喜 氏 /株式会社インベスターズクラウド CTO, 株式会社Robot Home 取締役
  • 東明宏 氏 /株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ プリンシパル
  • 伊藤嘉盛 氏 /イタンジ株式会社 代表取締役CEO(モデレータ)

テクノロジーによって、プレイヤーが入れ替わるのは必然

伊藤: 松園さんにお聞きします。同じ質問なんですけど、いかがですか。一番最初の大きな変革が期待できるような領域はありますか。

松園: 「不動産業界もこれからテクノロジーと融合しておそらくこうなるだろう」というのは、教育とテクノロジーの融合や、農業とテクノロジーの融合によって起きたことと同じで、その産業に参入していたプレーヤーが入れ替わる、リプレイスされる。これはもう目に見えていて。不動産業界でもそういうことは必然と発生するし、新しいプレイヤーも参画してくるでしょう。

エンドユーザーももっとイージーに。例えばファンディングですね。不動産投資もなかなか難しかったものが、テクノロジーを入れることによって誰もが簡単にファンディングで不動産投資をできるような機会を与えてくれたわけです。そういうことは目に見えて分かっています。

ちょっと違った視点でいくと、僕が今取り組んでいる実証実験として、IoTのセンシングデータというのは世の中にどんどんどんどん膨らんでいきます。エッジデバイスが世界中に何10万個といった規模になってくるんですが、そのときに、センシングしたデータを届けるための最適なインフラとはどういうものなのか。実は答えはあるんですけど、わずか1バイトとかのデータを、しかも即時性を必要としないエッジデバイスのデータを扱うのに、今の100メガの光回線を使ったりするのは、費用対効果が合わないんですよね。

それを超長距離に飛ばすことができて、消費電力も少ないのが、LPWA(編集部注:Low Power Wide Area。なるべく消費電力を抑えて遠距離通信を実現する通信方式)です。

LPWAの規格のなかにLoRa、Sigfox(編集部注:LPWAの中で、無線局免許が必要なものと不要なものが存在する。不要なものの代表格としてLoRaやSigfoxがあり、個人や企業レベルで運用を行うことが可能)等がありますが、そういったものを利用して、不動産業が持つ地理的優位性を活かして基地局を配置したり。

そうすると、今までビッグデータといったら一部のキャリアさんしか持てなかったものかもしれないんですけど、不動産業界自体が実はビッグデータの柱になりインフラを支えることが期待できてるんじゃないかなと思います。

伊藤: ビッグデータって結構言われているんですけれども、不動産業界だと、「ビックデータを活用したところで、どこで儲けるんだ問題」があると思っていて。

松園: ありますね。

伊藤: そこについてはどうですか。インフラを作るといった構想はあるとして、どこでマネタイズするのかということですよね。

松園: まず、データを売る側と買う側を探さないといけないと思います。

不動産のデータというのは、データエクスチェンジという大きなマーケットのなかの1つにしかすぎないんですよね。自動販売機の購入データだってビッグデータですし、いろんなジャンルがあって、それを収集する側……つまりデータを売る側ですね。あと買う側を一緒に探して、一緒に取り決めを作るアソシエーションを作らないと、マネタイズという発想がまずできないところだと思うんですよ。どういった形で売るのがいいのか、共通のインターフェースを考えないといけないと思います。

例えば、オープンデータという形で不動産の取引価格情報が一部APIで取れるようになったんですけれども、アンケートによる結果データが本当かどうかって分からないんですよ。オープンデータ化されたことで情報の非対称性がなくなって市場全体があがるから、結局そこでマネタイズになるんだと、そういう可能性が秘められているんだと考えてもいいのですけど……。多分、投資家さんからしたら「それって?」となるはず。だから今、そこを一緒に考えてくれる人を探しています(笑)。

不動産業界は、目先のリスクを恐れるな

伊藤: どうですか、東さん。投資家からみて、不動産業界にITで切り込んだ時に、なかなか不動産会社の財布が小さいですとか、いろいろな問題があると思います。それで大きいところにいこうとすると、シンプルに不動産屋になってしまう。このようなテクノロジーとリアルのトレードオフみたいなことをどう考えていますか。

東: うーーーん。データはすぐに集まらないし、すぐに儲からないよねという話を、どう乗り越えたらいいかという話ですよね。

データがすごく大事で非対称性が高くて、ここを民主化することにすごく意義があることは誰も多分否定しないと思うんですね。

そこを我慢してやりきるプレイヤーがこれまでいなかったんじゃないかなというのが1個あると思うんです。なので、そこを僕らみたいな投資家がしっかり支えて、やりきる起業家がいて、そこにビジネスモデルを乗っけるみたいなところをやり切るということがひとつ、日本の場合は大事なのかなという気がしています。

究極、アメリカでは実現できていることなので。「なぜ日本でできないんですっけ?」みたいなところをまだ越えられていないので、そこをどうやって越えていくかということを一緒に考えたいと思っています。

答えになっていないですか(笑)。

伊藤: ファーストペンギンとして大量の札束がある火事場に飛び込んで、大やけどするリスクもあるけど、うまくいけば大金持ちになれるって感じですかね?

東: うーーーん。そうですね。

今、おかげ様でベンチャー、未上場のファイナンスについては非常にやりやすいポイントだと思うので、大きな絵を描いて、その辺のデータをどう攻略していくんだと。その上にはこんなモノが乗せられるんだという大きな絵を描ければ、投資がついていくんじゃないかなって思ってるんですけどね。

伊藤: そういう点でいくと、インベスターズクラウドさん、すごくうまくやっていらっしゃると思います。既存事業でキャッシュフローがあるなかで、そのキャッシュフローを新しくテクロノジーで……

松園: テクロノジーで調整することで、次の何かの一手を先に打とうとしているんですけれども……それが難しいですね(笑)。

東: でも、やっぱり既存事業があって、新しいIoTだとかクラウドファンディングの仕組みだとかを乗せていくというプレイヤーは、今の日本だとやはり強い。そういうプレーヤーが、御社も含めてですけど、今のところ市場を牽引していっていると思います。私たちが支援している伊藤さんのところも含めてですけど、ベンチャーがどう頑張るかというのも……(笑)。いろいろ知恵を出して頑張りたいですね。

基本的にはインベスターズクラウドさんとか、ここをお借りしてますLIFULLさんとか、やっぱりある程度大きくなったプレイヤーがいま頑張って牽引しているところがあるので、負けていられないなと思うんですけど、どうですか。

鬼頭: うちも今、絶賛赤字を掘りまくっているところです(笑)。

Jカーブを下に下に向かっているところなんですけど、大きなビジョンを描いてやっていくとなると、それなりのお金が必要で。例えば感じるのは、海外、特にアメリカのシリコンバレーと比べると、なかなか最初の部分で資金調達しづらいというのは、起業家サイドとしてはあります。特にシード期には、ビジョンだけでは海外のスタートアップと張り合うために必要な資金は取りきれないというか。

まあそれはグローバルにスケールさせていくっていうビジョンが描き切れていない我々起業家にも責任が一部あるのかなと思いますけど。

東: 資金を調達できないのは事業者と投資家のどっちの責任なんだとか、そういう突つき合いが(笑)。

伊藤: 分かりました。ありがとうございます。

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