業界のキーマンたちが注目する不動産テック企業とは?

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2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「テクノロジーで生まれる新しい不動産業の在り方」と題して行われたセッション(全9回)の4回目をお届けします。今回は、鬼頭 武嗣氏、松園 勝喜氏が注目する不動産テックをご紹介。

登壇者情報

  • 鬼頭武嗣 氏 /株式会社クラウドリアルティ 代表取締役
  • 松園勝喜 氏 /株式会社インベスターズクラウド CTO, 株式会社Robot Home 取締役
  • 東明宏 氏 /株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ プリンシパル
  • 伊藤嘉盛 氏 /イタンジ株式会社 代表取締役CEO(モデレータ)

不動産領域におけるブロックチェーン活用の展望

伊藤: ちょっとトピックを変えて、海外事例に。最近注目している不動産テック企業について、鬼頭さんからいいですか。

鬼頭: やっぱりDAO(編集部注:Decentralized Autonomous Organization — 自律分散型組織)とかありましたけど、ああいったもので不動産ファンドを運用していくところは、アイデアとして今後出てくると思うので、その辺は注目していますね。

伊藤: もう少し。ブロックチェーンは私もそんなに詳しくないんですけど、不動産取引においてどういうふうに、何を解決するんですか。

鬼頭: ファンドという存在自体を非中央集権化して、特定の運用者がいない中で、ユーザー間での合意形成のもと不動産投資運用していく存在をつくっていける。そうなってくると本当に我々みたいな会社は要らなくなってくるので、最後は自己否定に。中央集権的な事業者としてやるのであればですね。

なので、そのためにICO(編集部注:Initial Coin Offering — 新規仮想通貨公開)がある。そういう中央集権的な存在がない中でのファイナンスという意味でICOというものがあると。本当に、狭義の意味でのICOですが。

伊藤: そういう世界は、日本においていつぐらいに実現しそうなイメージを持っていらっしゃるんですか。

鬼頭: 先ほどもお話したとおり、テクノロジーだけではなく社会システム自体を作っていく必要があり、かつ本当に証券としてトークンを発行するとなるとグローバルオファリングになるので、日本だけではなくて海外をどうするかですとか、いろいろなプラクティスを気にしないといけません。本格的に始まるのは、まだ何年か先かなという気はしています。海外の、同じようなFinTech系のプレイヤーと話しても、「もうちょっと時間がかかるよね」と。

伊藤: ドバイ等だと、そうしたブロックチェーンを使った不動産取引を国が進めているという話もあります。本来、国交省が進めてもいいくらいの投資規模だと思うんですけど、民間としてどのような役割を果たし、価値を出していこうと?

鬼頭: 民間としては実際の、特にユーザーに接する立場ですので、本当にエンドユーザーの声を聞きながら、そのニーズをきちんと拾い上げていくことに尽きるんじゃないかなと思います。

不動産投資の意思決定を左右する、付加価値サービスを

伊藤: ありがとうございます。松園さんはどうですか。注目している海外企業は?

松園: 冒頭にも言ったんですけど、Zillow、Redfin、Estately、Truliaですね。不動産の情報の非対称性を無くして、投資判断に対する付加価値サービスを提供しているところです。付加価値情報として面白いのが、周辺の犯罪率だったり、あとはウォーキングスコアですね。歩いて20分の範囲に公園がいくつあるからスコアがどうなのかとか、病院が何軒あるとか。付加価値情報として、不動産に間接的に関わる情報も提示してくれているところが面白いと見ています。

今それを日本でやるとどうなのかとなると、やることが当たり前になっているのでやるんですけれども、彼らの場合は、犯罪情報などがオープンデータになっていて、イージーに開発できる環境にあります。結局とどのつまり、オープンデータ化を進めなければいけないというのがジレンマです。

伊藤: ちょっと話がずれてしまうんですけど、今、御社の中でデータの活用は実際どこまで進んでるんですか。具体的に業務でこういうデータを使っているとか、オートメーション化しているとか。

松園: 我々の場合は、土地価格の推定エンジンを使ってアパートの収支の事業計画を自動で出しています。家賃がいくらだとか、この土地だったら仕入価格がこれくらいになる、ということの推定エンジンを持っていまして、そこで使っています。

伊藤: それを購入者に対して開示していくんですか。

松園: 結果データを開示しています。実証実験中のものもあるんですが、もっとデータの性能を上げるために……例えばなんですけど、雑音ですね。雑音であったりPM2.5であったり。環境センサをアパートの宅配ボックスに搭載して周辺情報を収集して、それを土地の推定のパラメータのひとつとして活用するという技術を検証しているところです。

不動産×IoT―変わりゆく不動産企業のあり方

伊藤: 他にもスマートロックなどいろいろなデバイスが導入されていると思いますけれども、業務に関わってくるプロジェクトとしては、具体的にどういうニーズがありそうだな、実現したいなと考えていますか。

松園: スマートロックですか。

伊藤: スマートロックだけでなく、他にもいろいろIoTがあると思うんですけど、

松園: IoTはですね、弊社の子会社のRobot Home社で作っているIoTの機器「Apartment kit」というのがセットになっています。よくあるのは、それぞれセキュリティセンサーだけで売っていたり、ライトだけで売っていたりするんですけど、我々の場合はセットでセキュリティセンサーとスマートライト、あとは学習リモコン、そしてスマートロック。あとはそれらを繋ぐハブとなる自社開発のタブレットなんですけど、それをセットで売っているというところが強みです。

あと、入居者と管理会社が直接チャットでやり取りすることができ、管理会社は入居者に対して情報の提案ができる。例えば、エリアごとにセグメントが分かるので、そのエリアに対してごみ出しの日とかを伝えられるんですね。

東: ちなみに聞きたいんですけど、そのエンジンのR&Dとか、IoTデバイスとかはいきなりはお金を生まないじゃないですか。

松園: 生まないですね。

東: 短期ではお金を生まないところに、どういう体制でどれぐらいのリソースを配分しているのか。ベンチャー側的には気になるところなんですけど(笑)。

エンジニアは何人くらい?

松園: Robot Home社ではIoTの開発メンバーとして13人ほどしかいないですね。

東: 全体では?

松園: グループ全体としては60数名がITですね。あとは、外部協力会社さんが20名ほど常駐でいるので、トータル80名ぐらいで一気に開発する。

伊藤: すごいですね。相当。ベンチャーではなかなかできない。

東: そういう会社が敵だってことを認識して……敵じゃないか(笑)。

伊藤: そもそもコンペティターかどうか……(笑)。

東: 協業する可能性はありますね。

伊藤: 80名はすごいですね。

松園: 協力会社も含めてですから。

伊藤: 羨ましいですね。だんだん、不動産会社の在り方はそうなっていくんでしょうね。今までは仕入部隊と営業がいて、それでほぼビジネス開発が100%だったのが、だんだんエンジニア開発チーム比率が2割、3割になっていくと。

松園: ちょっとずつリプレイスが進んでいってますね。

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