問われる、不動産データのオープン化。不動産業界の“開国”はいかにして成し得るか?

#CrowdFunding 7/9

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2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「テクノロジーで生まれる新しい不動産業の在り方」と題して行われたセッション(全9回)の7回目をお届けします。今回は、質疑応答の模様をレポート。不動産業界をオープン化するうえで欠かせない情報の扱い方とは。

登壇者情報

  • 鬼頭武嗣 氏 /株式会社クラウドリアルティ 代表取締役
  • 松園勝喜 氏 /株式会社インベスターズクラウド CTO, 株式会社Robot Home 取締役
  • 東明宏 氏 /株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ プリンシパル
  • 伊藤嘉盛 氏 /イタンジ株式会社 代表取締役CEO(モデレータ)

どうすれば不動産業界は「オープン」になるのか

伊藤: 他にも質問がある方はいらっしゃいますか。私、当てたい人がいまして、ダイヤモンドメディアの武井さん(笑)。実は武井さん、すごくIT業界が長くて、もう何年目ですか?

質問者3: 10年です。

伊藤: 10年ですか。10年やってらっしゃるので、質問とともに、10年間不動産テクノロジーの分野でやってきて、その大変さとか将来展望とかもお話いただけると。

質問者3: 無茶振りでちょっと困ってますけど(笑)、 ダイヤモンドメディアの武井と申します。

そうですね、不動産とIT。うちの会社は不動産に特化して6〜7年ぐらいやらせていただいているんですけれども、やっぱり実感値としては、データベースのリプレイスコストがあまりにも高すぎて新しいサービスが普及しないとか、IT業界で当たり前のことができない理由というのは、不動産会社さんにあるというよりは、業界構造だったり特性だったりという実感値があります。

といったときに、必ずぶつかるのがLIFULL HOME’S、SUUMO、at homeという超大手の老舗企業3社が流通データをほぼ全部持っている。この辺りがパブリックにならないというのが、結構いろんな不動産テックの企業の成長の壁というか。

(会場苦笑)

各企業のデータなので別にオープンにしなければいけない理由はないと思うんですけれども、ただFinTechの業界だと、金融業界はだんだんオープンAPIみたいな形で、自分たちの利益をもっと社会全体で活用しようよという動きが出ていると思うんですよ。どうしたら不動産業界でデータのオープン化が進められるのかを、皆さんと一緒に考えていきたいと思うんですけど、いかがでしょうか。

伊藤: すごく重いトーンでしたね(笑)。

要するに物件情報データベースとかですよね。そこがやっぱりクローズになっていて、なかなかAPIを引っ張って活用できない。一方で既存でやって来られた方は、それが競争優位性の塊だから「これは決して公開しない」というところを、どう折り合いをつけて、やれる世界はくるのか。やるべきなのか。どうやってデータを公開しやすくするか。

各社が協業すれば、オープン化は推進される?

伊藤: 東さん、どうですか。

東: 私は不動産業界出身ではないので、仰るとおりの状況に見えるんですけど、やっぱりこれまでの蓄積があると思うので、なかなか急に「じゃあ全員手を繋ぎましょう」というのは難しいところがあるのかなとは思います。とはいえ、確かにFinTechはそういう動きになりつつあるので、じゃあ金融にできて不動産業界にできないわけはないという話もあるかなと思っていて。この前そのような話をチラッとしたんですけど、金融ってなぜあんなに、スムーズじゃないかもしれないものがスピーディに進んでいるかというと、協調して投資したりしているんですよ。

多分、鬼頭さんもそういう経験があるんですよね。金融業にいらっしゃって、一緒に投資、一緒にお金集めみたいなご経験をされている。

鬼頭: 投資銀行でも、主幹事が1社だけでなく共同主幹事がいて。販売のところだけやるシ団(編集部注:シンジケート団。「シ団」とも呼ばれ、大型の資金調達に対して、シンジゲートローン(協調融資)や新規に発行される有価証券(株式、債券等)を引き受けるために銀行や証券会社などで結成される団体のこと)もありますので。

東: という、多分そこにも歴史があって、突如としてAPIで連携しはじめたというよりは、やっぱり地道に地道に協調でお仕事をして、プロジェクトをしてといった積み重ねがあって、今の風景になっている可能性がある。僕が偉そうに言うのも何なのですが、今日みたいな場もありますので、ジョイントでプロジェクトを進めていくようなことが不動産業界で起こってくると、また違ってくるのかなという気がします。

あとは、そこが言い訳になっているところと何とかなるところの境目が、どの辺りなんだろうなと……僕もまだちょっと解がないんですけど。まあでも、ジョイントで仕事を進めていくというのがまず第一歩かなという気はしますけど、どうですか。

鬼頭: まさに挑戦していきたいと話したところで、今みたいに共同でやっていくということがひとつかなと。あと我々のように金融の領域でやっている立場としては、不動産ってモノそのものが動かなくても、受益権だったり出資持分だったりといろいろな権利として動かすこともできるので、そういう形で動かしながら情報をもっと透明化して民主化していくというのもアリかと思います。我々はそのレイヤーではやっていきたいです。

伊藤: 松園さん、どうですか?

松園: 国も不動産取引価格のAPIを公開していますし、国自体がそういう動きを頑張っているのは間違いないことです。あとは業界の先端をいく企業の方たちが手を組んで一緒にプロジェクトできれば本当はいいかなと思います。

不動産取引価格だけではなくて、賃貸データも。賃貸は家賃ですね。家賃であったり、入居にかかった費用、鍵の交換費用だったり、補修費がいくらかかったんだというのも、プライベートデータとして持つだけではなくて、オープン化すれば市場はもっと活気づくんだけれども、オープン化したことによって、それを持っていた企業というのはどんな還元があるの?となると思うので、そこから考える必要があると。。

伊藤: そうですね。まあ、ネットワークの優位というよりも……

松園: 収益性は大事ですよね。

伊藤: ただ、接続点が増えるとそのネットワークの価値が向上するという理論もあります。オープンにしていろんな会社が組むことによって、そのデータのプラットフォームがさまざまな場面で使われ始めるようになりますよね。

そうすると、例えばGooglePlayだったりAppleのAppStoreみたいな形で、その物件データベースを使って何かやり取りをしたら、例えば売上げの5%とか10%を徴収するという、そういう組み方をやるのはあるかもしれません。

あとベンチャーの間でも、そういう物件データベースの領域にチャレンジしていく企業が数多くあると思うので、そのあたりのベンチャー間の連合みたいな形もあるんじゃないかと思いますね。

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