じぶん銀行、AnyPay、ZUU……FinTech企業が見据える次なる一手。

#FinTech 7/8

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2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「FinTechが変える暮らしと新たなビジネス」と題して行われたセッションの模様を、全8回に渡ってお届けしていきます。第7回は、パネラー各社が取り組むFinTech事業について語られます。

登壇者情報

  • 光本 勇介 氏 /株式会社バンク 代表取締役兼CEO
  • 大野 紗和子 氏 /AnyPay株式会社 取締役COO
  • 榊原 一弥 氏 /株式会社じぶん銀行 執行役員 決済・商品開発ユニット長
  • 一村 明博 /株式会社ZUU 取締役 ビジネスソリューション事業部統括 兼 FinTech推進支援室長(モデレータ)

国ごとに基準が異なるFinTech分野は、他社連携で勝ち筋を

一村: ありがとうございました。中期の目標やゴールのような話になったので、大野さんのところもどうでしょう。

先ほど少しお話をご紹介したように、例えばローン会社側に手を出していくのか。それともコミュニケーションツールとして考えたときにはSNS的要素も含んでいると思いますので、広告モデルになっていくのか、なんていうところもあるかと思います。

そのへんを会社の方針として決まっているところ、そして個人的な思いみたなものもあると思うので、個人的な思いで結構ですから、少しご披露いただけると。

大野: ありがとうございます。paymoのほうは、すでに「友達と友達がpaymoしたよ」「割り勘したよ」というのが、公開設定しているとタイムラインで見ることができるという機能が実装されています。

そこの背景が、まさしくソーシャルの機能みたいなところでして、もちろんFacebookと同じで非公開にもできるのですが、タイムラインに出ていることで、「誰と誰が知り合いだったんだ」とか。

あるいはFacebookの友達といっても、実際に飲食をするようなそこまで近い関係ではない人もいると思うんですが、paymo上のネットワークは、ただのソーシャルネットワークとは違った“濃い”ものが見えたりして、話のキッカケにもなり面白いと思います。

それがビジネス展開という意味でいいますと、今はどちらかというと、個人向けの広告というよりも、お店への支払いの部分もあわせて、店舗側に対してCRMを含むようなものをできるだけ早くご提供していきたいと思っています。

先ほども申し上げたようにリアルな店舗さんの場合、ECサイトと違って、マーケティングでまだまだ制約があると思いますが、支払いがデジタル化することで、今までにないような支払いをリアルな店舗でもできるというところは、早くpaymoで提供していきたいと思っているところです。

サービスの今後の深掘りというところとは少し違うかもしれませんが、うちの会社はまだ1歳になったばかりの、新しい会社で人数もそんなにいません。

面白いところでは、代表の木村がいろいろなことに興味があり、アイデアマンというのもあって。いろいろな新しいことをやっていくということで、今年、AnyPayととても近いインドの決済プラットフォームに投資をしております。

Instamojo という会社なんですけれども、背景としては、別々のマーケットでやっているけれど、ユーザーのアクイジションであったり、リテンションであったりプロダクトであったり、いろいろなところでシナジーを持って一緒に伸びていきたいというところがひとつ。

決済やFinTechは、国ごとのライセンスであったり、国民性や仕組みの違いなどいろいろあるので、全部自分の会社が出ていこうとするのではなく、マーケットごとの提携などもしながら広めていきたいというところはあります。

実は、ICOコンサルティングという今までと毛色が違う事業もやりはじめました。その背景として、木村の功績を含めICOに興味のある方が増えてきていて、そのテクノロジーやリーガルなど、いろいろなノウハウを持った人のアドバイスが求められているというところがあります。

ブロックチェーンもこれからどうなっていくか分かりませんが、決済やクラウドファンディング、いろいろなFinTechの部分に関わりうるので、我々としても、そうした分野もウォッチしながら、サービスの仕組みを考えていきたいと思っているところです。

一村: そういう方向性みたいなものを、役員のみなさんの中では、日常的に会話をしているものなんですか。それとも社長がグイグイやる感じですか。

大野: 木村からアイディアが多く出てきて、思いもよらなかったなと思うものもあります。彼が投資家としても活動しているので、いろいろな企業に投資するなかでトレンドに追いついていると思うのですが、プロダクトの機能の拡張といった点も含めて、役員に限らず社内全体から声が出てくるという感じです。

テクノロジーの源泉=“ラクをしたい”で、新しい銀行体験を

一村: ありがとうございます。榊原さん、この中では一番大きな資本が入っているので、ある意味、資金は潤沢にありますから制約がないとも言えますし、スピーディな展開が図りにくいとも言えるかと思います。

そんな中で、中期的な目標であったりゴールみたいなものがあれば、少しご披露いただけますでしょうか。

榊原: 資本の制約は置いておいてですね(笑)。じぶん銀行は、今日この場に呼ばれたのもそういうことだと思いますが、銀行のスタイルを変えたいというのが、そもそもの創業時からの思いです。

僕ら子供のころもそうですが、母親が銀行に行くのにわざわざお化粧して、きれいな恰好で「行ってきます」みたいな感覚がありました。

銀行の店舗に行って、座って待っててというスタイルから、家で寝っ転がって、風呂から上がって一杯飲みながら、「いま貯金いくらあったかな」とか「いま為替どうなんだろう」とサクサクっと触って、それこそ「あのお金、払い忘れてたな」とか、寝っ転がった状態でできると。

365日24時間いつでもできるという、そういうスタイルにしたいという思いを追求して今までやってきています。これから先も、この古いスタイルを変えていかないといけないのですが、人間はものぐさなので、ラクになるともっとさらにラクになりたいと。

人間、ラクになりたいという思いがなくなったら、テクノロジーはなくなるわけです。ラクになりたいという、ものぐさ。もっとラクして、もっと簡単にすごしたいという、もっと楽しいことだけしたいという気持ちがテクノロジーを生むと思っていますが、もっとさらに違う銀行体験を提供していきたいと思っています。

テレビに例えると、昔はテレビの近くまで行ってチャンネルを変えていましたが、今はリモコンで何メートル離れているところからでも変えられます。うちの息子を見ていると、そのリモコンすら取るのが面倒くさくて、「パパ、リモコンは?」なんて言うんです。

チャンネルを変えるという動作すら面倒くさいのです。彼にとったら、自分が今見たい「仮面ライダー入れて」とテレビに言ったほうが、言ってテレビがパッと仮面ライダーを映し出してくれたほうがラクなんですね。

人間の「ラクをしたい」「ラクに楽しくしたい」という欲求は、追求したらきりがない。きりなく追求していくのが、我々のビジネスだと思っています。そのために人工知能を使い、ブロックチェーンを使ったり、巷で言われているいろいろなFinTechのテクノロジーを活用しながら、誰も経験したことのないような銀行体験を提供し続けていきたいと思います。

テクノロジーで、金融機関のマーケティング手法が変わる

一村: ありがとうございました。実はここの4社の中でZUUというのは少し毛色が違いまして、ご紹介したように金融機関さんと投資家の方、もしくはサービスと一般の方の距離を縮めるという役割を担っています。

そういう意味ではお3方のサービスにいかにユーザーさんを近づけるかということをやっている会社になります。1つ例をご紹介差し上げたいと思います。

皆さんも1度は耳にしたことがあると思いますけれども、個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」です。去年から今年にかけて年金法の改正があり、対象となる方が大幅に増え、ほぼ20歳以上の全国民が加入できるようになりました。

具体的には公務員の方であったり、主婦の方も個人型確定拠出年金を持てるようになりましたが、以前の金融機関さんでしたら、この分野にアプローチしようとすると、例えばテレビCM、新聞広告、こういった伝統的なマーケティングがほとんどだったと思います。

引用:https://dc-startclub.com/

ここにありますように、りそな銀行さんが持ってらっしゃるサイトになります。今までの金融機関さんはホームページオンリーで、そこに商品を羅列しているのがほとんどでした。

りそな銀行さんは、こういったコンテンツマーケティングをiDeCoの分野でやっています。ここにはiDeCoに関する記事が200本〜300本ありますが、「iDeCo メリット」で検索すると、上位表示される記事がこの中に入っています。

ここにユーザーさんが集まっているという構図を作っているのですが、1つ仕掛けがしてありまして。iDeCoの特性である、「掛け金が所得から引かれて、所得税が戻ってくる」というメリットがありますが、それをシュミレーションしましょうという機能が付いています。

この場に主婦の方がいるかわかりませんが、第3被保険者の主婦の方が、節税金額をシミュレーションしましょう、と。おおよその課税所得、主婦の方ですから103万円を超えないようにするために50万円でもいいですし、入力して年齢を入れます。

引用:https://dc-startclub.com/

そしてこのボタンを押すのですが、シミューレーション結果をメールアドレスに返しますよという導線を作っておりまして、りそな銀行さんはここで数千件のメールアドレスを取っています。

どういう現象が起きるのかといいますと、1度これでアドレスを登録すると、仮にログインした状態になりますから、その方の名前と住所は分からないものの、年齢、課税所得、そして属性、おおよそ公務員なのか主婦なのか、こういうものがわかった状態で、何に興味があるのかというのが分かります。

りそな銀行さんがやっていらっしゃるのは、例えば「確定拠出年金とは」という記事しか読んでいなかった方が、1週間後にサイトに来たら、今度は商品の記事を見ている。となると「だいぶ関心が高まっている」ということになりますので、ではそのメールアドレスにセミナーの案内を送りましょう、といった施策です。

今までですと、金融機関がやっていたことは、“たぶん”広尾にお金持ちがいるだろうからDMを送るといった大雑把なマーケティングしかしていなかったのが、コンテンツ・記事を提供することによって、その方に会っていなくても趣味嗜好が分かる、というようなことをやっています。

それをどうしてここまで熱く語っているのかお話しますと、このサイト制作、記事制作、WEBマーケティングを裏側で全部行っているのが、実は私どもです。

じぶん銀行さんとはビジネスをご一緒していますが、いわゆるサービスであったり商品であったり、そこに理解が必要なものに関して、私どもが間に入るような役割をしているというのが、ZUUの経営展開です。

中長期的にどんな目標があるかといいますと、お金を理由に個人がチャレンジできない世の中をなくしたいと考えております。

いろいろな人生の決断をしなければいけなくなったときに、お金の問題は切っても切り離せません。家族がいるから転職ができない、などというのが最たるものだと思います。そういった場面が来る前に、資産運用をして資産形成をしておけば、お金を心配せずに行動を起こせる。

そんな世の中にしたいというのが、僕らの考えになります。いろいろな金融機関さん、いろいろなサービスとご一緒しているということであります。以上ZUUのご紹介でした。

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