“モノづくりの民主化”は、我々の暮らしをどう変えるのか?

#FutureLiving 5/9

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2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「FutureLiving」と題して行われたセッション(全9回)の5回目をお届けします。モノづくりのハードルが下がり、あらゆる人が“自分で作れる”ようになったとき、社会はどう変わるのか。VUILD秋吉氏が自らの活動を紐解きます。

登壇者情報

- 秋吉浩気 氏 /VUILD(ヴィルド)株式会社 代表取締役 CEO アーキテクト

- 井上高志 氏 /株式会社LIFULL 代表取締役社長(モデレータ)

“建てる”ためのコストを、どこまで減らすことができるか

井上: Living Anywhere Weekということでオフグリッド生活を8月にやってみたと言いましたけれども、秋吉さんも来てくれたんです。

この人、変わってるな〜と思って(笑)。知り合いの猟師さんに鹿を一頭とっていただいて、15人くらいでさばいて、お食事としていただくという経験をしたのですけれども、秋吉さんはいらない骨をもらってずっと関節を動かしながら見てるんです。じっくり研究してるんですよね。

変わってるな〜、変人だな〜と思って見ていたのですけれども(笑)、こういうことですよね。つまり、動物とか植物の構造っていうのは非常に合理的にできてる。

秋吉: そうですね。そういうことを、今のデジタルにどう入れ込むか。

何でこういうことをやっているかというと、Living Anywhereについてディスカッションをしていると、地方に行けば行くほど、土地の代金って限りなく0に近づいていっていると感じます。

そうなってくると、リビングコストをより下げようとする上で、家を建てるお金という問題があります。DIYできるところとそうでないところと分かれてきて、最終的にプロが残らないといけないのは、先ほどお見せしたような木工事というか、躯体をどうやってつくるかというところになります。

しかし躯体をつくる上でも、これから職人――肉体を動かせるプロフェッショナルが減っていくという問題がある。そこで、例えば女性や老人でも作れるような仕組みをつくろうとしているわけです。そこでコストダウンをすると。

井上: これでいうと、建設費2,500万円に対して躯体が20%、つまり500万くらいですか?

秋吉: 3,800万のうちのですね。

井上: 全体が3,800万でその20%ということですね。

秋吉: 一般的には、ですね。

実は海外ではこうした機械を使ったオープンソースの家づくりがやられていて。それこそスマートメーターだとか、iPhoneで電気を操作したりだとか、「Fab lab」と呼ばれる領域の海外の人たちが開発をしています。

このへんも、僕らは家というハードウェアをつくっているんですけど、先ほどパナソニックさんの話がありましたけれども、OSとしての電気系統みたいなものは、実は大手さんが絡める領域なのかなと思っています。

僕らはハードウェアはつくるけど、ソフトウェアとしてのハードウェアと言うんでしょうか。何と言うんですかね。そういうものとして家づくりに参入していけるんじゃないかなというのは、冒頭でのお話をきいて思っていました。

5人の大学生が、4日で3階建てを建てられるシステム

これは、福岡の学生と、2日間で切り出して2日間で組み立てるというワークショップの様子です。5人くらいの大学3年生に機械の使い方とCADの使い方を教えて、実際に切って、自分でデータを編集して組み立ててみようというもので。

2日加工・2日組み立てみたいなものをやって、これ全部、福岡大学の大学生たちに自分たちでやってもらったんですけど、最終的に3階建ての構造物が計4日でできてしまう。

これもトレーラーハウスに機械を詰め込んで、ここは福岡の廃校なんですけれども、そのグラウンドに建てるということをやりました。

8月に開催したLiving Anywhere Weekでは廃校を使って12日間やったんですけれども、地方に行くと、グリッド化されているけれどかなりもったいない場所があるんですよね。

グラウンドにこういうものが建っているように、今後はいろんな人たちがLiving Anywhereの枠組みに入ってくれて。移動可能なキャンピングカーだけでは足りないところが出てくるので、そういう部分を僕らがプロとして提供していくにはどうすれば良いのかなと考えていて、次のLiving Anywhereではやりたいと思っています。

ということで、私の発表は終わりたいと思います。

建築に、プロトタイピングを

井上: あれ、ここまででしたっけ?

秋吉: 一応、この後もありますね、でもこれはどう説明すれば良いのかな?

Photo Credit、集合写真家 武市 真拓
Photo Credit、集合写真家 武市 真拓

これはLiving Anywhere Weekの時に作ったものです。机と椅子が一体になったリムーバブルデスクのようなもので、一人一人動かして。例えば体育館とか廊下とか、いろんなところに持ち出して仕事をしてもらったんですけれども。究極的には、グラウンドに持って行って(笑)。

井上: Meeting Anywhereですよね(笑)。エクストリームな会議。

秋吉: LIFULLのCCO川嵜さんが川に持って行ってましたけど、そんな感覚で、家よりももう少し小さい単位で、家具やデスクみたいなものも移動可能にして、好きなときに。

移動しながら考えるといいんですよね。車輪がついている椅子でぐるぐる回りながらやるだけでも制約から解放された感じになって。

井上: こういう会議のほうがクリエイティビティ上がりそうですよね。

秋吉: そうですね。あと、やっぱりずっと同じ場所にいるのがちょっと。今は集中したいなというときにラップトップだけ持っていくのもいいですが、結局、机を探さないといけないので。このまま歩いて持っていけるという感じのものです(笑)。

井上: これたった一枚の板ですか? ショップボットという機械でガーっと切り出して、組み木で組み立てたんですよね。

秋吉: そうですね。これも会期中に富良野でやったんですけれども、北海道の白樺でできた材料を調達して、データをうちのメンバーで作って、会期中に切り出してみんなに使ってもらいました。

それくらいのスピード感で、こんなものがあったらいいなというのを作ってしまうんですね。そのためのシステムというか技術提供を、僕らはしているというところです。

もう一つは、LIFULLさんが海の家でやったやつで。

井上: あー!今年LIFULLで鎌倉・由比ヶ浜に海の家をつくったんですけれども、そこにつくったものです。

これ実際に作ったんですね。よくサマーベットって1日1,500円とかで借りたりするじゃないですか、あのダサいやつ(笑)。あれより、もっとかっこいい感じにしようよと。

これもショップボットで作ったんですよね。そういう、コンセプトモデルです。やってみたと。

秋吉: 例えば、家って最初は家族で住んでいると思うんですけど、子供が巣立ったから、切り離せるこの部分だけ売ろうとか。そのくらいの感覚で住まえないかという、コンセプトレベルそのものを試しにやってみたという感じです。

今後家づくりをやっていくときは、そういうコンセプトのまま、Living Anywhereの流れに乗りながら作っていくという形で考えているところですね。

井上: そういう意味ではアジャイル的というか、プロトタイピングが、手軽にと言っては失礼かもしれないですけど、すぐその場でやってみるということができちゃうわけですね。それは大きいですよね。

秋吉: はい。やっぱりその、今まで産業の構造として、建築デザイナーというのは、工務店さんや作り手に対して、ものすごい距離があったんですよ。

でもデータだと直線系とか曲線系とか関係なく、こういうデザインでやりたいんだというのを機械にピッと送るだけで、図面やコミュニケーション不要で終わる。それだけでわりと革命なんですよね。そういう感覚で、一般の人が入ってこれるようになると、プロフェッショナルのあり方が変わってきます。それが一番大きいのかなと思います。

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