スタートアップが“水”まで作ってしまう時代に、大企業はどう動くべきか?

#FutureLiving 6/9

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2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「FutureLiving」と題して行われたセッション(全9回)の6回目をお届けします。インフラの常識を変えうるスタートアップの紹介を経て、会場とのクロストークへ。パナソニック、ソフトバンクといった大手企業の動きが話題にのぼります。

登壇者情報

- 秋吉浩気 氏 /VUILD(ヴィルド)株式会社 代表取締役 CEO アーキテクト

- 井上高志 氏 /株式会社LIFULL 代表取締役社長(モデレータ)

自然の循環システムを、個人宅へ

井上: 何かちょっと突っ込んで聞いてみたいとか、ご質問でもいいですし、ちょっとテーマとしてこんなこと閃いたとか、そんなご意見・ご質問ございますでしょうか。いらっしゃいましたら、ぜひどうぞご自由に発言してください。

では、ここでWOTAの映像(編集部注:2017年に名称変更され現名称へ。映像は旧名である「HOTARU」の時のもの)を。秋吉さんのほうから、VUILDとして地産地消でいろいろなものをDIYで作っているというお話がありましたが、こちらは水ですね。先ほどお話したシャワーです。

これまで自然界の循環システムで超巨大だったものを、コンパクトなパッケージにしたと。日本の水の濾過技術は、世界的に見ても非常に進んでいると評価されています。そうした大きな会社の浸透膜や濾過技術などを上手く採用しながら、BtoCのモデルでこれから実際に作っていくと。これからはシャワー以外にも展開していこうということで、非常に期待が寄せられています。

この会社もまだスタートアップで、これからプロダクトを世の中に出していくという段階です。

パナソニックのIoT戦略

では、冒頭にいただいた3つの質問を深堀りしていきたいと思います。

一つ目にいただいていたのは、パナソニック。日本を代表するエレクトロニクスメーカーであり、グローバルカンパニーでもあります。その会社がIoTとかLivingTechとか、どんなふうにやっていけばよいのかということで。

最近注目されているのは、音声アシスタントでいうと、Google HomeやAmazon Echo、同様にLINEが参入したりですとか、次々に名乗りを上げる会社が出てきています。始まる前からすでにレッドオーシャンの様相を呈していますが、あのへんの動きはパナソニックさんとしてはどうなんですか?

これから満を持して投入するぞといった動きがあるのか、もしくはGoogle Homeでよいのではと思われるのか?

質問者1: 先日IFA2017(編集部注:国際コンシューマ・エレクトロニクス展。ベルリンで開催された)の発表(編集部注:IFA2017の会場において、Google Assistant対応のスマートスピーカー「SC-GA10」を発表)でもありましたけれど、スマートスピーカーはパナソニックとしても勝負を……

井上: 本腰でいくぞと?

質問者1: とはいえ、Amazon、Googleの方々とも一緒にやっていく選択肢を残しながらも、我々としてどうエコシステムを作っていくのかというのはまさに模索中です。

今まさに、言えないところもあるので(笑)……まさに考えているところです。

井上: 言える範囲で構わないんですけれども、パナソニックが参入してそこを取りにいく目的としては、結局“何”をとりにいこうとしているんですか。

家の中心部をとりにいく、心臓部を握るという戦略もあれば、データが大事ということもあれば、住んでいる人の利便性や快適性を上げる、これがうちの会社の使命なんですという文脈なのか、どういう切り口なんですか?

質問者1: 私たちはもちろん、家電というものを通じたより良い暮らしの実現、というところを最上位にやっています。

とはいえ、それをビジネスにした時に、いわゆるIoTという言葉でいうとログをどのようにとって、それをどう活かしていくかというのがポイントの一つになっていくかなと思っています。

そういったところを、ハードウェアメーカーという立場ではなく、不動産業界の方やサービス業の方と一緒にやっていくにはどういうことをしたらいいのかなと考えているところです。

井上: このなかで、スマートホームとかIoT系、スマートロックでもいいですが、いろんなことをお考えの皆さまも多いと思いますが、すでに自社で取り組んでいる、もしくは検討しているという会社はありますか?

(編集部注:数名の手が挙がる)

ありがとうございます。

何かご意見ございますか? パナソニックさんに、こうして欲しいとか。僕からすると、今までの垂直統合モデルはおそらく通用しないと思うので。IoTで家の中心をとったから、全部うちの規格の家電に買い換えてね、なんて通用しないじゃないですか(笑)。

ですので、オープン型で相互に接続できるとか、データを双方向で保有するとか。コンソーシアムを組みながら相互に使っていく、そういう方向だろうと思っています。

何かご意見ありますか? どうぞ。

住宅産業はオープン化し得るか?

質問者3: ソフトバンクの和田です。よろしくお願いします。

今、個人的に家をつくろうと思っているのですが、家をつくろうと思うと、構造躯体と中身の建具と呼ばれるものを全部ワンセットで建てるという話になってしまいます。

しかし先ほど仰っていたように、構造躯体は構造計算しなければいけないけれども、中身のところはもうちょっといじれても良いのではないかというお話が、まさおっしゃる通りで。

もう少し自分でカスタマイズしたいなと思ったときにすぐカスタマイズできる環境を提供すること自体がコスト削減に繋がりますし、より希望に沿ったものを提供できる。そういったライフスタイルも、ソフトバンクグループとしては提供していきたいと思っています。

やりたいなとは思いつつも、仰っていたように住宅メーカさんなど「自分たちのもので」という囲い込みがまだどうしても存在するので。お声がけはさせていただいてはいますが……通信業界から来ているやつが何言ってるんだという話にはなるんですけれども(笑)、できるだけいろんな会社さんとフラットにやらせていただきたいなと考えているところです。

井上: なるほどなるほど。ありがとうございます。秋吉さんから何かありますか?

秋吉: 一緒にやりましょう(笑)。

井上: なんとなく、VUILDの仕組みは街中にキンコーズみたいな感じで。

秋吉: そうですね。パナソニックで言うところの“まちの電気屋”さんみたいな。松下幸之助が描いていたような場所として、もう一回、分散型で顔の見える場所をつくっていきましょうと。ただそのプロセスは現代的なデジタルなやり方で、オープンなプロセスであるということが重要だと思っていて、そこは意外と繋がるのではないかと思っています。

井上: たしかソフトバンクさんはWeWorkさんに巨額の出資をして、日本円で6,000億とか7,000億くらいつっこんでいますよね。

WeWorkさんはWeLiveもやっているので、ソフトバンクさんはWeLiveでガッツリやったらいいんじゃないかなという気もしています。そうすると既存の大企業は破壊的にやられちゃうという構造もありそうじゃないですか。

質問者3: そこは潰し合いじゃなくてフラットにということで。

井上: ここではそう言っておかなきゃダメですよね(笑)。

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