アップデートされていく空間ビジネスの現在地―Airbnbと寺田倉庫の現状と展望。
#HomeTech/IoT 1/8
2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「暮らしの中で顧客接点・価値体験を持ち続けるには?」と題して行われたセッションの模様を、8回に渡ってお届けしていきます。今回は、登壇者の紹介から。Airbnb Japanの長田氏、寺田倉庫の月森氏のパートからお届けします。
登壇者情報
- 長田 英知 氏 /Airbnb Japan株式会社 執行役員 ホームシェアリング事業統括本部 統括本部長
- 月森 正憲 氏 /寺田倉庫株式会社 上席執行役員
- 東 克紀 氏 /YKK AP株式会社 経営企画室 事業開発部 部長
- 木村 大介 氏 /リノべる株式会社 Connectly事業責任者
- 福岡 裕高 氏 /アーキタイプ株式会社 取締役/パートナー(当時)/ モデレータ
顧客接点・価値体験を持ち続けるための各社の取り組み
福岡裕高氏(以下、福岡): よろしくお願いいたします。
いい言葉ではないですか。「暮らしの中で顧客接点・価値体験を持ち続けるには?」。
ただ、これを仕事でどう活かすかというと、一人ひとりの説明が必要だと思います。今日はセッション重視でという話があったのですけれど、まず登壇者一人ひとりが何をしているのか、短めのプレゼンをしてもらって、その上でこのテーマに迫っていきたいと思っています。
短い時間ですけれど、ひとつでもふたつでも何か持ち帰っていただきたいので、よろしくお願いします。登壇者の方は、長田さん、月森さん、東さん、木村さんです。簡単な自己紹介から入っていただきます。
世界65,000都市に400万物件、累計ゲスト数は2億6千人。Airbnbの現在地
長田英知氏(以下、長田): では、私がトップバッターでいかせてもらいます。
Airbnb Japanの長田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
いろいろな仕事を転々としまして、前職はコンサルをやっておりました。新規事業系のコンサルや、あとは街づくりや都市戦略、そうしたことをやっておりました。その前は埼玉県の市議会議員をやっておりまして、当時の民主党で衆議院選に出馬したりですとか、そんなこともしておりました。
1年ほど前にAirbnb Japanに入りまして、現在、日本における住宅宿泊事業の統括をしています。
Airbnbの簡単な紹介をさせていただければと思います。Airbnbをいわゆる住宅を貸し出す事業として“民泊事業”と認識されている方も多いと思うんですけれども、「旅の包括的な体験を提供するコミュニティ主導型マーケットプレイス」という、すごく長い定義のもと、大きく3つの事業「HOMES」「EXPERIENCES」「PLACES」という領域で展開しております。
「HOMES」は、いわゆるホームシェアを含む宿泊。「EXPERIENCES」が、日本では東京と大阪の方で始まっておりますが、体験のプログラムになります。
「PLACES」は“スポット”という、いわゆる口コミのサービスをやらせていただいております。先ほどLivingAnywhere(編集部注:FutureLivingというテーマで行われた、LIFULL代表 井上氏と、VUILD代表 秋吉氏のセッション)というセッションがあったと思いますが、我々の会社では基本的な理念として「Belong Anywhere」と定めており、“暮らすように旅をする”という形のサービスを展開しております。
現在、創業9年目になりますけれども、世界で65,000都市に400万物件がサイトのほうに掲載されております。現在の累計ゲスト数は2億6,000人を超えています。
日本での取り組みは、日本法人ができたのが2014年ですので、3年ちょっとになりますけれども、日本国内の物件数は55,000件超。Airbnbで昨年1年間で宿泊したインバウンドのゲスト数が、約370万人。Airbnbコミュニティによる経済押し上げ効果、波及効果も含めてですが、9,200億円という試算を出しております。
「暮らすように旅する」というところで、いくつかタイプがあります。
ホストの家にホームステイするようなタイプ。こちらは実際の自宅をルームシェアすることもありますし、現地のお家をまるまる貸し切って自宅のように使えるタイプもあります。
あとは旅館なども最近掲載されております。ただこちらのほうは25室以下の形で、ホームステイに近い体験を提供できるような物件に限った掲載です。
あと、物件のタイプではないのですが、最近ビジネス利用で使っていただく方も多くいらっしゃいまして、世界でも25万社ほど出張ニーズという形で利用していただいています。
以上です、ありがとうございます。よろしくお願いします。
余白創造のプロフェッショナルに。寺田倉庫のまなざし
月森正憲氏(以下、月森): みなさんこんにちは。寺田倉庫の月森と申します。
1975年に生まれて、1998年になかなか馴染みない、倉庫会社である寺田倉庫というところに入りました。
こう見えても、入社してから7年ぐらいですかね、フォークリフトに乗っていたり、1箱20キロぐらいの物を持っていたり、どちらかと言うと現場で働いておりました。そのあと営業職を経て、2011年から新規事業開発部に携わり、2012年にWEBサービス「minikura」というものを立ち上げました。
さらにその翌年、倉庫のシステムをAPI化して、様々な企業と生活に密着したこれまでにない新しいサービスを開発。さらには物流に悩むスタートアップを支援することもやっています。
ぜひホームページに来ていただければと思いますが、寺田倉庫というのは何をやっているか分かりにくい会社でございます。
「余白創造のプロフェッショナルになりたい」というテーマを掲げ、倉庫のスペースを使ってただすっきりするだけではなく、我々のスペースを通じて生活の質の向上、文化創造の貢献に繋がるよう、様々な余白を提案・提供する会社です。
物流会社というと一般的にイメージされるのは、例えば物件開発事業部ですとか、運輸事業部ですとか、そういう機能軸で事業展開をやっていると思われがちなんですけども、我々はテーマを決めて、せっかく機能を持っているので、それを横串していくと。
我々の今のテーマは、ワイン事業、アート事業、メディア事業。IT×倉庫を使った新しい事業を創出するMINIKURA事業。そしてスペース事業の5つの事業を展開しております。
その中で自分が取り組んでいることが2つございます。自社事業で、「minikura」というWEBサービスを2012年からやっております。
もう1つはプラットフォーム事業で、minikuraの思想を基に物流APIを開発し、様々な企業に機能を2013年から提供しております。
自社事業のminikuraを簡単にご紹介させていただくと、コンセプトは「誰でも、いつでも、どこからでも、自分だけの倉庫が持てる」というサービスでございます。
2012年の9月から、今年で丸5年経つ事業になります。特徴としては、今までタブーとされていた、個人の持ち物を箱を空けて一点一点、取り扱い、さらに写真を撮る。「個人の箱の中は絶対触らない」ということがこれまでの倉庫会社のルールだったのですが、そのタブーとされる領域に、「倉庫で預かったお荷物もきちんと管理しようよ」ということでチャレンジいたしました。
箱を空けて一点一点、取り扱うことをすると、我々にも発見がありました。「これ洋服だよね」「これ本だよね」「これバッグだよね」という風にアイテムの判別ができるようになったので、例えば洋服であればクリーニングしてから自宅に届けてあげる。必要なくなればヤフオクで売れる、と、いろいろ幅が広がりました。
もう1つの事業が、プラットフォーム事業で、2013年10月からminikura APIというものをリリースしております。minikuraの仕組みは、ものが管理できる、ものが動かせる仕組みです。それをAPI化して、生活に密着した事業を開始したい企業に提供し、今では大手企業や、スタートアップ支援を含め約30社と新規事業を立ち上げさせていただいています。リノべるさんとも1つの事例としてやっています。
どうぞよろしくお願いします。