テクノロジーが「暮らし」にもたらすもの。YKK APとリノべるが描く、数年後の未来。

#HomeTech/IoT 2/8

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2017年9月に開催された第1回「LivingTech カンファレンス」。全9セッションの中から、「暮らしの中で顧客接点・価値体験を持ち続けるには?」と題して行われたセッション(全8回)の2回目をお届けします。前回に続き、登壇者紹介の後半パート。YKK APの東氏、リノべるの木村氏の紹介です。

登壇者情

  • 長田 英知 氏 /Airbnb Japan株式会社 執行役員 ホームシェアリング事業統括本部 統括本部長
  • 月森 正憲 氏 /寺田倉庫株式会社 上席執行役員
  • 東 克紀 氏 /YKK AP株式会社 経営企画室 事業開発部 部長
  • 木村 大介 氏 /リノべる株式会社 Connectly事業責任者
  • 福岡 裕高 氏 /アーキタイプ株式会社 取締役/パートナー(当時)/ モデレータ

「未来窓」が叶える未来の暮らし。YKK AP

東克紀氏(以下、東): このセッションでたったひとり、メーカーであるYKK APの東といいます。

先ほどちょっと映っていましたけれど、いま「未来窓」というのをやっていまして、それの動画です。

というものを、新宿のショールームに実際のものを置いて体感できるようになっています。

経歴はずっと商品開発をやっていまして、途中で社内選抜の経営学プロジェクトに参画しました。そこでいろんなことを学んだ後、開発から少し離れて。今は、会社では結構珍しい存在なのですけど、好きなことをやらせてもらっています。

今回のこの「未来窓」もその中の一つです。

「トレンドたまご」(編集部注:テレビ東京 『ワールドビジネスサテライト』の1コーナー)にも毎年出ているんですが、こういう広報活動をやっている理由って、うちも結構ガチガチな会社なので、もう外から攻めないと会社がなかなか動かなくて。

外にどんどん波及して、外から聞こえてくると、冷ややかに見ている人も首を縦に振るというようなところがあるので、露出を増やしながらどんどん進めています。

例えば、経済産業省のエアロゲルという素材。これは地球上で一番断熱性能が高い透明の断熱材です。これを将来的にはガラスに挟んだりして、いま3枚構造、4枚構造になっている高性能ガラスというのはだんだん重くなるものなのですが、それを軽量化する。

大型化しても軽量化するようなこともあわせてやっています。

これが今イメージしている未来窓のストーリーなのですけど、もともと窓ってすごく必要なものなのですよね。家に行けば絶対ついている。ただ、家を買う時の「窓」の優先順位ってすごく低い。窓ってたしかに正面から見ると昔から変わらないんですけど、断面を見るとガラスが3枚になっていたり、材質が樹脂になったり。今ならちゃんとした窓を使えば結露も抑えられるんですよね。

何千万円もする家を買うのに、理想の窓に取り替えようという動きが見られないというところをどうにかしたいということで、生活者に窓への意識を持ってもらおうと、未来窓をスタートさせました。

2016年、品川の体感型ショールームに透明な液晶を使った未来窓(http://module-window.jp/)を3つ置きまして、2017年の7月には新宿に、実際に透明有機ELを使った窓、さきほどビデオにありましたあの窓を具現化しました。今度は2018年に第3弾の商品化フェーズ。このへんになってくると会社を少し巻き込めるようになったので、このまま調子に乗って第4弾のフェーズまで行ってしまおうかなと。

ということで、1年刻みで進んでいます。

東克紀 Katsuki Higashi / YKK AP株式会社 経営企画室 事業開発部 部長。 1993年入社。商品開発部門、セールスエンジニア部門、社内選抜社員による経営学プロジェクト参加などを経て、2014年より現職。新規事業開発のみならず、素材開発、商品企画、社内人材育成などを通して、現代の課題に対し柔軟な解決を目指しながら、これからの建材の可能性を追求している。

大きな企業だと3年はかかるのですが、そんなことをやっていると遅いので、1年刻みでやっています。実はうちの会社であればこのぐらい作れるだろうという見込みはあるのですけど、この辺の知識が全くないものですから、オープンイノベーションというか、外の力を借りながら。

それで生まれたものを、だんだん会社に落とし込んでいくというやり方で模索しながら進めています。企業でこういう新しいことをやるのはすごく大変で、社内は冷ややかですし、それを身にしみながら進めているという状態です。

最終的にはいろいろな技術をパラレルで重ねて、家の壁をすべてガラスにしたい、それでいろいろなことができるかなと思っています。

福岡: このスライドは、僕のほうからお願いして入れてもらったものですね。

僕はインキュベーションに携わっていますが、今回のセッションのために「未来窓」を初めて調べて、「窓が何らかを伝えるメッセージボードになるな」と感じました。「Atomoph」というサービス(編集部注:壁やデスクに置いて世界の風景を楽しむことができるデジタル窓 https://atmoph.com/ja)を知っていましたが、改めて、YKK APさんが本気で立ち上げるのだな、という話をしたんですね。これ、ライバルじゃないか、と(笑)。

「Atomoph」は窓ではなくディスプレイ。映像が動くだけです。ただひとつ言えるのは、競合がいるというのはすごく良いことだと思っていて。ある市場を作るときに2つ3ついい事業が出てくるというのは、そこに何らかのチャンスがあるということだと思っています。

先ほどのスライドの線グラフで言うと、第4弾まではあと数年後ということなんですけれども、「窓」「壁」というものがどのような情報を伝達する媒体になりうるのかという視点で考えるのは、良いチャンスにつながると考えて1枚差し込みました。

中古×リノベーションがもたらす、自分らしい暮らし。リノベる

木村大介氏(以下、木村): リノべるの木村と申します。

まず自己紹介なのですが、役職はあまりちゃんとしたものがなくて……。今やっている仕事を考えるとこんな感じかなというところで、次世代住宅開発責任者としています。

木村大介 Daisuke Kimura / リノべる株式会社 Connectly事業責任者。 信州大学大学院工学系研究科機能機械学専攻卒。半導体、アドテク業界を経て2015年にリノベるへ。新規事業「Connectly」の責任者を務める。2016年、同事業がSoftbank Innovation Programに採択され、同年10月Connectly Appをリリース。12月にConnectly App対応住宅の1号案件を販売。

個人としては、大学卒業後、半導体の大手の会社に入り、そこからアドテク業界を経て、2015年からリノべるに入社しています。バックグラウンドとしては不動産・建築などではなく、どちらかと言うとテックです。

リノべるに入ってからは新規事業として、次世代住宅のサービスである「Connectly」という商品の開発を、事業責任者としてやっております。それが2016年度のソフトバンクさんのアクセラレーションプログラムに採択されまして、そこから仮説検証を経てアプリをリリースし、それに完全対応した住宅を販売し始めているというような状態です。

私が何をしているかという詳しいお話をする前に、リノべるという会社の説明をしたほうが良いかと思います。リノべるという会社を一言で説明すると、上に書いてある通り、中古の物件+リノベーションで、かしこく素敵な暮らしを実現しましょうということを提案している会社です。

では、“かしこく素敵な暮らし”とはどんな暮らしかと言うと、左のほうに具体的に書いています。中古マンションなので、基本的に立地のいいところに建っているものが多いんですよ。物件は今ある立地のなかで一番いいところに建っていくので、古ければ古いほど、基本的にはいいところに建っている率が高い。それから、建物の値段は新築時より下がっているので、新築よりリーズナブルな値段で買えますよね、というのが“かしこさ”です。

さらにリノベーションで内装をごっそり変えてしまうので、自分の生活にぴったり合った家を作れる、ということで“素敵な暮らし”と言っています。

最後に、中古物件の資産価値の安定性も“かしこさ”の一つです。先ほど申し上げた通り、中古物件は建物の値段が下がり切ってしまっているので、ほぼ土地の値段で買うことができます。新築だと、購入後にどんどん建物の価値が下がっていくんですけど、中古マンションだとそれが起こりづらい。ということで、資産価値が安定しているというのがメリットとしてあります。

しかし、この家の買い方を個人でやろうとした場合、このような問題が発生します。

このイラストは僕が作ったもので、すごくセンスがないんですが(笑)。まず物件を選ばなければいけないのですが、どんなものが中古としていい物件なのか、リノベーションできるのか、分からないと思うんですよ。

さらに「じゃあ買います」と決めたら住宅ローンを組むと思うんですけど、リノベーションの費用も住宅ローンに入れたい(編集部注:物件購入費用とリノベーション工事費用を別々でローン組みすると、工事部分の金利がリフォームローンとなるため高くなる)じゃないですか。

でもいくらかかるのかも分からないし、リノベーションをやる場合に、住宅ローンの手続きをどうすればいいのかも分からないでしょう。それでやっと内装デザインに入り、施工して、ようやく引き渡されて住み始めることができる。これ、專門知識のない人はほぼ不可能に近いぐらいに難しいと思うんです。

それが、リノべるという会社を通してもらうと、専任のアドバイザーであるコーディネーターが担当としてつくので、必要なものを全部マッチングしてくれます。そうした家の買い方のプラットフォームをやっている会社です。その中で、私がやっているのはこちらです。

築古の中古+リノベーションという買い方で、その人にぴったりの家を買うことはできます。ですが、生活って住み始めてから変わっていくんですよ。

でも、これまでの住宅というのはその変化に対応できなかったんですね。この業界に来てすごくびっくりしたのが、引き渡したあとのお客様のことを、業界の人は「OB」と言うんです。「OB!?」って思ったんですけど。

それぐらい、もう売ったあとはなかなかお手伝いできないというのが課題だったんですけど、そこをどうにかしたいなと思って。その課題を解決するために生まれたのが私の担当する「CONNECTLY」という事業で、住み始めたあとも生活に合わせて家を変えていけるようなことを提案するものです。

シチュエーションや生活リズムに合わせて、照明の明るさや色、自動で調光されるタイミングが変わったりとか。あと、寺田倉庫さんと組んで「クローゼットが足りなくなったら外部の空間を使いましょう」といったサービスを展開したりとか、そういったものを開発して提供しております。

もう一個あって、住み始めたあとの改善なんですけど、住まい探しから住まいづくりまで、属人的ではなく、ある程度テックで巻き取ってしまおうと。そしてサービス品質の均一化やコスト削減をして、もっと価値あるところにコストを使っていこうということをやろうとしているのが、最近の動きで加わった部分です。

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LivingTech(リビングテック)は、“暮らし”に関わるビジネスを営む事業者と、“暮らし”の課題をテクノロジーで解決する事業者、その経営者・経営幹部のためのコミュニティ。約200名が集うカンファレンスで繰り広げられたトークセッションの模様を記事としてお届けします。

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